『めぐり逢わせのお弁当』(インド、2013年)
を観た。
インドの大都市ムンバイでは自宅からオフィスに弁当を宅配する弁当宅配業ダッバーワーラーが一般化している。
夫との関係が冷え切っているイラは、
関係修復のためにも毎日丹念に弁当をこしらえていた。
ある日、ダッバーワーラーの手違いで、
引退間近の会計士サージャンに弁当が届いたことで二人の不思議な交流が生まれていく。
この作品を観てまずは、弁当宅配業ダッバーワーラーのエキゾチシズムに興味をそそられる。
自宅から手ぶらで出勤しながらも手作りのお弁当が
追って自宅から送られてくるという仕組みがビジネスとして
成立しているというのが非常に目新しい。
日本の感覚だと自分が家からお弁当を持参するもんなぁ。
お弁当箱が4連の縦長スタッキング様式というのも日本の一般的なスタイルとは異なるし、
手で召し上がる姿も異国の風を感じる。
ひょんなことから縁が生まれてお弁当の提供と文通を行うことになる二人だけど、
4連のお弁当のどの容器に手紙が入っているか毎度違って、
ああ今回は入っていないんじゃないかと器をめくる姿はなんだか良い。
抑制の効いた作品ではあるけど、随所のディティールが良いな。
母娘の無理心中というニュースから弟の自死に触れるヒロイン、
夫との関係が修復困難だと感じさせるエピソード、
ついに会う約束をした場所でサージャンが気付いた事実もぐっとくる。
髭剃りをして感じた事実と約束の場所で見た若く美しいイラとの対比、
この辺りは純文学作品のような趣を感じた。
意外や意外に、
観る前に想像したストーリーとはまったく別の方向へ進んでいったね。
同じくインドの既婚女性が主人公の『マダム・イン・ニューヨーク』は
夫以外の男性と近づいても、お互いを尊重する友愛で関係の幕を引くけれど
この作品は別の進路を辿るのが斬新に感じた。
分かりやすいストーリーの運びながらも
人間は「間違えた電車でも 正しい場所へ着く」という格言が
物語を通貫して余韻を残すラストが見事。
活気ある異文化の風景に刺激を受ける。
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