能町みね子 『オカマだけどOLやってます。』

を読んだ。
同名ブログの書籍化作品。

能町みね子さんが今みたいにメディアに登場する前で、
会社勤めをされていたときのエッセイ。

非常に軽やかなタッチでジェンダーとセックスの越境体験について綴ってある。

能町さんの出身大学についての明言はこの書籍ではないけれど、
東京大学出身だよね。
そんじょそこらの大学ではない。
OLっていう言葉が持つ響きと、日本のアカデミズム最高峰である東京大学出身という学歴のバランスが絶妙。
ぜんぜんエリート風吹かせていないし、自分の出自に対する気負いがまるでないところを尊敬する。
まったく学歴を強みだと自負していなさそうなところも、本当に頭の良い人だからこそなのだとも思う。

ところで、OLという言葉は今も使う言葉なのか分からないけれど、個人的には使ったことがない単語。
女性の会社員という意味以外のイメージがあるので、個人的には使わない。
言葉のニュアンスも世代や人によって個人差があるけれど、わたしは誰に対しても使わない単語。

閑話休題。

トランスジェンダーや性同一性障害という言葉が持つ深刻さや真剣さとはまた違うところで、
自分の境遇を楽しんでいるような軽やかさを感じる語り口で、エンタメ性抜群。

バレるんじゃないか・・・とヒヤリとしながら味わうスリルも少し心地よさそうなのは気のせいか。

運転免許証に男女の記載がないことに、このエッセイで初めて気付いた!
保険の手続きがないアルバイトの契約であれば性別がバレない!って
それはそうだろうけれど、東京大学卒業の女性がアルバイトで事務として働きたいなんて、
よっぽどの訳ありだと勘ぐられそう・・・。
そこは大都会・東京の感覚で、根掘り葉掘り聞いたりしないのかしらん。
人情あふれるお節介文化の大阪だったら、質問攻めにあいそう・・・。




しっかし、能町さんはモテるね。
身体のリフォームを始める前から、いろんな男性に言い寄られている。

面白いと思ったのは、能町さんはFtMだけれど、LGBには関心を持っているところ。
セクマイのクラブイベントに行ってみたくだりは、まんまわたしが初めてそういうイベントに行ったときの感想に似ている。
ただ、時代は変わって、今はレズビアンも美人でオシャレな子が増えてる。
マイノリティは結託していると思われがちだけれど、それぞれ違う事情で生きているよね。

あ、そういえばわたしも同性愛者だったわ。
本当はセクシュアルマイノリティなんて当たり前に世の中に溶け込んでいるのに、
あえて声高々に公言しないから、珍しいと思いがちだけれど、どこにだっている。
わたしも彼女も会社員で、ごく当たり前に仕事をしている。
シリアスで憂鬱に毎日暮らしているわけでもないし、何かと戦わなければいけない理由もない。


マイノリティでも気楽に楽しく暮らしたっていいよね。
そういうことを再認識する一冊。