pink/マガジンハウス

岡崎京子 『pink』


を読んだ。


ワニを飼ってる、昼間はOL、夜はホテトル嬢のユミちゃん。

TOKYOって速度のはやい街で、消費して消費されて、まともに狂って生きてるわけよ。


岡崎京子の代表作のひとつよね。


他の作品と違って、過激な描写はあまりないし、

主人公のユミちゃんに悲壮感がないから、読んでいて苦しくないわ。



ユミちゃんは、ヨクボーに正直なレディだから、

欲しいものがあって、うんたらかんたら言ってる暇があるなら、自分で稼ぐ!ってタイプなのね。


でも、ユミちゃんのパパンはお金持ちなのよね。

お金目当てで再婚したいじわるな継母がいるくらいだから、

エネルギーがなくって、他力本願な性質なら、

OLやらずに、セックスワークやらずに、パパンの経済力を頼りに、気ままに暮らせばいいってもんよ。

そっれが、身体ひとつでやっていこう、ってもんだから、恐れ入るわよ。



ユミちゃんと付き合ってる人、周りにいる人、関わりのある人ってのは、

ユミちゃんのことをまるっきりただのアホだと思ってんのよね。

まあ勿論、そんな風にみせておいて、しっかりと人のこと見てんのよね。

夜のお仕事で相手してから、セックスワークについて説教たれるオッサンにも、

はあー、みたいな何にも考えてなさそうな顔してるんだけど、

勿論、ちゃんと物を考えてんのよね。


人の話を聞く気がない、ただ単に決めつけで差し出がましいことを言いたがる人にも当てられて、

ついつい厳しく人を見ちゃうときも、

「自分の心が貧しいからって 他人を巻き込んじゃないけない」

って分別もあるし、悪いほうに傾きすぎないバランス感覚もちゃんとしてるのよね。



現状に文句たれてる同僚に対して、

「欲しいものがあるなら売春すればいいのに みんな我慢強いんだな」

って、モノローグには、度肝抜かれる。


ザッツライト!その通り!

でも、そういう風に、ふっと思いついたまま、ストレートに生きられないのが人間ってもんでして。


ユミちゃんは、自然の摂理というか、責任とか、立場、ってのを

わきまえてるのよね。



我慢せずに楽なまま、幸せになりたい、ってのは到底無理な話で、

どっかで我慢しなきゃいけないし、頑張らなきゃいけないし、ストレス抱えなきゃいけない。

売春したらお金は手に入るかもしれないけれど、

そのための我慢ができない、ってのがそう珍しくない感覚で、

でも、すんなりと毎日を生きることができなくて、不満を吐き出すもんよね。

そこを、ユミちゃんはヒョイと飛び越えちゃうんだな。

前へ!前へ!働きゃなきゃお金は手に入らないのは当たり前、甘っちょろいこと言ってんな、って風にね。

ぜんぜん押しつけがましくない自分の流儀で生きてるの。



むしゃむしゃと生きた肉を食らうワニちゃん飼って、スリルを満たしてね。


ユミちゃんはワニを飼ってて、

パパンは継母を飼ってて、継母は若いツバメのハルヲくんを飼ってるのよね。

飼い慣らされながら、御主人様やってんのね、みんな。

自分の欲望の主人は、自分だけだけれどね。





まっとうに生きようとすると、狂ってしまう?
























愛しています。 どうか、何も答えないで。