TODAY'S
 
2021年度 清風中(プレミアム最終選抜試験)

 

 

大問1:東直子『いとの森の家』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いとの森の家 - 東直子 - Google ブックス

出題部分は、ここから読めます

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ついに「プレミアム最終選抜試験」! 男の子ならば、「最終選抜」と言われて、燃えないわけにはいかないッ!! 物語一本勝負ッ!

 出典は、さまざまな学校で出題されてきたおなじみのもので、「死刑囚の遺骨に手を合わす」という、非常にデリケートなテーマです。作者の実体験を土台にしているところに、救いがあるように思いますが、問題の重さを鑑みて、ノンフィクションの方がいいと考える人もいるでしょう。ノンフィクションだと生々しすぎるので、フィクションの方がいいと考える人も、もちろんいるでしょう。保護者の方が、この本を手に取って、自分の価値観を再確認してみるのは、良いことだと思います。

 書き手もいろいろと配慮していることが伝わるため、かえって、まるで詰将棋のようにして、正しさへと追い詰められていくような息苦しさがあります。実体験と比べて小説が力弱いのは、時間の力を借りられないことだと思います。ある価値観を受容していくには、数か月、数年、あるいは、子どもが大人になるほどの時間が必要です。

 個人的には、学校で扱うならともかく、一部抜粋で読まざるを得ない受験国語で、この本を扱うのは、どうなのかなと思います。主人公ともう一人の女の子が、対立した価値観を持っているのですが、願わくば、それが逆であれば、よかったなと思います。また、国語は「~もある」という形で視野を広げていくのですが、あくまでも二項対立的に、自分の足場から一歩外へと出て行くものであり、その何歩も外にあるものをポンと見せるものではありません。ここで扱うテーマに至る前に、踏んでいくべきステップがもっとあるように思います。

 現代は、多様さを許容すべきだと強調される一方で、細分化された各部に対しては、相変わらず強い同調圧力が働いています。正しい小説を読んだからと言って、ハッとしました、考え方が変わりましたなんて感想を、無理に言わなくていいのです。この小説を読んで、死刑囚への考え方が変わったなら、それは嘘だというくらいのスタンスでいい。ピンと来なくて普通だと間口を広げたうえで、心に刺さったなら、それもまた良しとするくらいがいいと思います。作者も、この物語を、メッセージを伝えるものとは考えておらず、心に違和感を残すものとして、意図しているはずです。

 たとえば、この本を通して授業する先生が、死刑廃止論者だったとしても、この本をそういうものとして利用すべきではありません。戦争文学は、戦争反対のために利用してもいいかもしれませんが、両者はいまのところ別物です。

 

問一 書き取り。書ける。

問二 語句。選べる。

問三 選べる。

問四 探せる。

※主人公は否定を経由して肯定へと向かったが、読者はそんなに聞き分けが良くなくていい。

※重いテーマだからこそ、それくらい「なびかない」つもりで読んだ方がいい。

※何にでも両面あると知ったあと、新たに知った側面をもとに、考えを変える必要はない。

※両面があるというところで、判断を保留していい。

※そして、人生をかけて、さまざまな経験を積み重ねる中で、重層的に価値観を形成していけばいい。

問五 選べる。

問六 選べる。

問七 死刑囚の辞世の句についての、話し合い形式の問題。重い……。

問八 こちらも、死刑囚の辞世の句について。道徳の授業で扱った方が……。

問九 八十字にちょうど良い記述ではある。

問十 選べる。

  

 

大問二 

 

要約