ここ数年、強い信念を持ってショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」に取り組んでいる指揮者トゥガン・ソヒエフ。今日のNHK交響楽団の定期公演は、指揮者のこの曲に対する思いにオーケストラがしっかりと応えた感動的な演奏となりました。
第1楽章は必要以上に感情に流されない演奏。平和な情景を強調することなく、また「戦争の主題」にあっても恐怖を強調することなく、まるで事実を冷静に並べているように、1音1音がくっきりと演奏され、それがかえって戦争の非人間的な側面を浮き彫りにします。
第2楽章も楽しかった日々を回想するような軽さはなく、まるで感情が枯れてしまったようにきっちりと演奏され、弾けるような中間部もどこか上の空。思い出がフッと消えていくように寂しげなバス・クラリネットの後に現れる、無理をして笑顔をつくっているようなクラリネットの苦しそうなソロが印象に残りました。
そして第3楽章。ここで思いが一気に溢れます。今までかっちり整えた演奏をしていたこのコンビがじっくりと歌い、ある時は懐かしさに胸を締め付けられ、またある時は絞り出すかのように涙を流します。聴いていて苦しくなるような演奏でした。クライマックスはそれまでの2楽章とは異なり、痛みを感じるもので、人間的なものを感じました。その後に現れる慈愛に満ちたフルートソロがとても感動的でした。
終楽章は嵐の音楽。圧倒的なクライマックスが近づいても勝利の明るさはなく、まるで戦いは終わらない、そんなことを感じさせるかのような演奏。ラストは何か力で押し付けるようで、消えることのない負の力を感じます。果たして、この世界において本当の意味の「勝利」は本当に来るのだろうか、そんなことを問いかけるような演奏でした。
各ソロは健闘し、金管楽器の音の厚みも十分でした。そして、弱奏部分でお客さんの集中力が途切れていた環境の中でも、最後まで緊張感が途切れず、没後50年の作曲家のメモリアルイヤーにふさわしい質の高い音楽を聴くことができました。このオケと名演奏を数多く聴かせてくれた井上道義さんは引退してしまいましたが、このオケのショスタコーヴィチはまだまだ聴いてみたい、そう思えるような素晴らしい演奏だったと思います。
録音はコンドラシン版が好みです


