私が高校生の頃でした。

映画「下妻物語」の上映もあり、ロリータファッションがちょっと世間に注目された時期。

ある日、ふと新聞を見たら「ロリータファッションにハマる女性の心理とは」的な記事が載っていて
私はちょっとモヤモヤした。
私がモヤモヤしたと同時にバンギャでロリータな友達から電話が来た。

「ねぇ…なちあの記事見た?」

見たよ、あれはちょっと違うだろ!と友達と言い合った。

「ロリータをする女性は精神的な発達がどうのこうの、ロココ時代の世界に憧れがどうの、幼児期に退行したい心理がどうのこうのだの、なんなん!あれ!」

友達はロリータをこよなく愛する子であった。
いつもお姫様みたいな格好をしていた。
わたしはロリータファッションは金がかかるから当時はゆるいゴスやパンクファッションだったのだがロリータ服はわたしも大好きだった。
(ロリータファッションはブラウス、ワンピース、靴下、靴、小物から、一式揃えなければならないものが多くて大変なのだ!)

友達は言った。

「ロリータ服が可愛いからきてるだけなのに。」

そうだそうだとわたしもテンションが上がった。
可愛いから、それだけの理由で着てるに決まってる。そこには難しい理屈などは何もない。
深層心理とかロリータ着てない人にあれやこれや書かれたくないとも言っていた。

2人で新聞記事に向かって白熱した会話をしていたのだけど、友達が言った。

「ロリータ服はわたしにとって鎧なの。
弱い自分をレースとフリルいっぱいの可愛いお洋服で守っているの。
嫌なこと言われても辛いことがあっても
ロリータ服を着れば強くなれる。
ロリータ服はこれでもかっていうくらい、女の子丸出しのお洋服だよ?
ロリータ服はお姫様みたいな服だよ?
女の子の夢なんだよお姫様は!
だから!最強なんだよ!ロリータ服は!
女の子の憧れ全部詰まってるんだから!!」

どこぞの新聞記事より友達の言葉の方がよっぽと説得力があった。
白熱した会話はいつのまにか終わり、

「そういえばさぁこの前原宿行ってさあ、ロリータ服の子がトンカツ屋入って行ってさあ…
一応さあ…ロリータでトンカツ?!ってビックリしてさぁ…トンカツだよ!豚揚げてるんだよ?!
せめてポークステーキでしょ。
いやもうトンカツ食べていいけどさぁ…ちょっとロリータ着てる時はさぁ…ロリータの精神を少しはもっとさぁ…なんつぅか…もっと持っていて欲しいよねえ…」

トンカツめちゃくちゃ食べたかったんだろうね、
あの場所、食べ物屋少ないからね、トンカツ位しか選択肢なかったのかもね、トンカツわたしも好きだもん、うん分かる私も、と

お互いに最後はトンカツ語りになって終了した。