私の恋人は気分屋である。アルバイト先は短期間で変わっているし、洋服の趣味も食の好みも好きな音楽やアニメ、ドラマだって変わる。兎に角コロコロ変わる。
恋人の名前は宮坂暁斗。数年前までは私の高校の先輩だった。同じ部活で、憧れて、恋に落ちて、彼が卒業する日に玉砕覚悟で告白したら、付き合えることになった。なんて、王道少女漫画の世界かと勘違いするような流れで交際を始めた。高校卒業後、彼は大学生になって一人暮らしを始め、アルバイトで生計を立てている。会える時間は減って寂しいとか、大学やアルバイトなんて出会いがありそうで不安だとかそういう感情が湧かないわけがない。それに加えて、気分屋なのだ。不安は二倍増し。会う度にそれとなく探りをいれてしまう。でも不思議なことに、女の影というものは一切なかった。いつしか、彼に対する疑いの念は抱くことはなくった。
「アキちゃんって浮気だけはしないよね」
ふと、彼にそんな一言を零してしまった。混乱した様子で、目をぱちくりとする彼の顔には「どうして、そうなった?」と書いてあった。
「だって、アキちゃん気分屋でしょ?」
「いや違うけど?」
即答で彼は否定した。あれ?違う?そんなはずは無い。彼はどう見たって気分屋なはずだ。
「アルバイト先すぐ変わるのに?」
「アルバイトはただ、色々経験積みたかっただけだよ。あとは給料とかシフトの問題」 
成程、確かに気分でアルバイトを変えていた訳では無いようだ。いや、でもアキちゃんは好きな物がコロコロと変わるじゃないか、やっぱりアキちゃんは気分屋だ。ただ、一応言い分を聞いてみようか。
「好きな物がコロコロと変わるのは?」
「え」
アキちゃんは顔を真っ赤に染めた後にアイスコーヒーをごくごくと勢いよく飲んだ。そして言いづらそうな、聞いてくれるなという顔をする。だが、それで引き下がる私ではない。こんなにアキちゃんが隠したがる理由がとても気になるのだから。
「アキちゃん、教えて」
真剣な目でじっと見つめれば、アキちゃんは観念して口を開く。曰く、最近の若い子の流行りに着いていきたくて、流行りのものに次から次へと興味を持っていただけらしい。若い子って、アキちゃんもまだ20歳言っていないんだから若い子の部類に入るはずなんだけど。
「以外、アキちゃんって流行りのものとか興味無いのかと思ってた」
「いや、実際は興味無いんだけど……。でも、流行りに乗れない男が彼氏とか嫌だろ」
「誰が?」
「誰がって、お前以外誰がいるわけ」
「え、私?別に流行りとか私はどうでもいいよ。私は自分が好きな物が好きだし、アキちゃんもアキちゃんが好きな物に夢中になってればいいと思う。アキちゃんらしいアキちゃんが好き!」
「……俺も、アユのそういう正直なとこ好きだ」
結論、顔をタコみたいにして、声はすっごくちっちゃくて、私より年上だけど照れ屋で不器用なアキちゃんは私の自慢の彼氏である。

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こんばんは、小神なちです。今回は「気分屋」をテーマに小説を書きました。こういったすれ違いを書くのがとても楽しくてすきです。神視点で書くのはまだ上手く書けないので、暫くは主人公視点で書くことにしました。
お久しぶりです。少し間を空けての投稿となってしまいまして申し訳ありません。恐らくこれからも土曜日投稿が続くと思います。ご了承ください。
ここまで読んでくださった方々、前回までの投稿を読んでくださった方々並びにいいねをくださった方々に深く感謝申し上げます。