5/1〜4の四日間、とあるイベントが開かれたことを貴方はご存知だろうか。

 RTA in biim 〜ついっち頃すRTA大会〜

 所謂biim兄貴と呼ばれる人物をリスペクトしたRTA界隈によるRTA大会である。

 今回、その走者として参加したその雑記をここに記そうと思う。



序章、敷居と動機(激寒自分語り)

 元々、人前で何かをやることは好きだった。喋ることも好きだった。
 RTA in JAPANという日本の巨大光のRTA大会は私の心に火を点けたわけである。
 
 「自分も好きなゲームを上手くなって人前でプレイしながら色んなことを語りたい」

 過熱した欲望は、遂に危険な領域へと突入する……。
 
 だが前述の大会はあまりにも敷居が高かった。走者の大半が口を開けば
 「発見者は私です」「WR保持者です」

 などという輝かしすぎて灰になりそうな化け物もとい天上人ばかり。レベルは当然最高峰で、初心者以下の私には出番などなかった。

 しかもCelesteというゲームは、走り始めてから知ったことだがSpeedrun .comの中でもトップクラスに人口が多く、レコード争いも国内レベルの天井も異常なまでに高い。更にはRiJエントリー常連には国内のCeleste星人と呼ばれるやべー人達がいるという大惨事。私がエントリーしたところで、もっと上手い人に走って欲しかった、出直せ、などの正論が飛んでくること必定だった。

 結局、欲望は燻るだけで終わる……

  ――はずだった。



第一章、RTA in biimってなんだよ(笑)

 

 1月末の某日、偶然にもランキングを周回していたところ、怪しげな動画を発見する。


 


 な に こ れ
 
 正直99割の人がそう思っただろう。私もその一人である。
 「ガチ喧嘩売りに行ってるやん草」「まぁ親からして割とあちこちに喧嘩売りに行ってるもんなぁ」
 とクソ失礼なことを思いながら告知動画を見た。

 元々はただの視聴者の端くれに過ぎないクソ雑魚ゴミムシで、RTA(というかスピードラン)を始めたのも同月の頭の私は、本来バッター裏の観客席で飛んでくるはずもないファールボールに待機しておかなきゃいけない人物だったわけだ。
 が、告知動画を見た私は認識を変える。
 >>初心者、ガチ勢、動画未投稿やなんなら走ったことない人でもいいよ(要約)
 
 え、マジ?

 どう考えても人集めの建前1000000000000000%な文言だが、本気にしたアホがいる。

 私です。


第二章、挑んでから考えろ

 やらない後悔よりやった後悔とは誰が言ったものだろうか。とにかく脳内がバグってアドレナリンと自己承認欲求と純度マックスのアルコールが理性をぶっ壊していた時期だった私は、クッソ軽い気持ちで応募するか迷っていた。
 というのも、発端はその前にあったAGDQ2021(海外最大規模のRTA大会。表の大会とも言う)にて、Celeste ALL-C side with Dance PADという狂気のカテゴリーの日本語解説席に座ったことが原因である。こっちもこっちでなんか色々考えた気がするけど今回は割愛。ひとまず『走者様とカテゴリーとゲームの認知度で盛り上がっただけなのに解説席に座った自分がなんかやった気になって勝手に達成感を感じていた』という非常に情けないソレだけ把握していただきたい。
 
 †日を改めて†

 まぁそんなことで自分が盛り上げる力があると勘違いした私は
 「やってから考えりゃいいや。面接とかやってくれるらしいし、運営兄貴達が首切ってくれるでしょ(楽観)」
 とか考えてエントリーした訳である。

 
第三章、運営陣営の懐はホモのケツ穴くらいデカイ

 エントリー当日
 ばぐなめ「〜〜ということでエントリーさせていただきました。よろしくおねがいします。Any%とALL-C走れます」
 AKYB兄貴「面接やります。まずは――」←平日夕方だったと思うけど死ぬ程対応が早かった。

 (簡単なやり取りがディスコ上で展開する)

 このとき、距離感が掴めないコミュ難の私はとにかく失礼がないように死ぬ程丁寧な文章と迅速な返信を心掛けた記憶がある。

 AKYB兄貴「主催的にはオッケーなんですが、他の人との兼ね合いもあるのでひとまず保留で」
 ばぐなめ「アッハイ(ウッソだろお前wwwwwwwwwwww)」
 
 そもそも募集要項外の自由枠、かつ界隈人でもリスペクト動画を投稿したわけでも有名人でもない実績0、表でも裏でもない隙間住民。門前払いでジュセンパを叩きつけられて終わると思っていたのがまさかの保留である。
 そして数日後……
 
 AKYB兄貴「運営陣で話し合った結果が出ました」
 ばぐなめ「はい(いけるか……?)」
 AKYB兄貴「👌」
 
 流 れ 出 す 市 長 の テ ー マ
 
 AKYB兄貴「Any%走って」(要約)
 ばぐなめ「かしこまり!」(胃痛)

 こうして運営陣営の超絶御厚意で出場が決まったわけである。


 第四章、致命的なミス

 決定から一ヶ月。記録を少しでも速くするため練習に明け暮れる中でふととあることが頭をよぎった。
 
 (RTAとスピードランだから計測区間ちがくね?)

 正直焦った。申請時タイムが50分をギリギリ切ったくらい。予定タイムは50分で設定されており、運営側にIGTでの記録だということを伝え忘れていた為にくっそギリギリの設定になったのだ。
 RTAと通常のCelesteのタイム計測はかなり違う。実時間よりも数分はズレが出るのだ。つまり、タイムを巻かなければ当たり前にぶった切られることになる。初めてのイベント参加でサライをやるのは嫌だ。行列の出来る法律相談所はこのイベントには存在しない。情けない走りで〆を迎える。そんな走りでCelesteの魅力や爽快感が伝わるわけがない。
 タイムの大幅更新を余儀なくされたわけである。


第五章、縮まらなくなってきた記録

 それからは案外簡単にチャプター個別の記録を縮め、これならこのあとも余裕だな〜とか考えていた。当然甘い考えである。
 壁に当たったのは45分を切って、40分を目指そうとしてから。
 どうしても今までのやり方では縮まない。45分切りまでトントン拍子で縮まってきただけに、短縮幅が狭まってくると、あとは精度や反復の積み重ねになってきて、集中力も落ちてくる。何よりも面白いと感じられなくなってくる。
 事故や緊張を踏まえると、余分に5分は欲しい。更にはRTAであること考えると更に5分欲しい。40分前後は必須だった。
 
 まずオオシロとかいうチャプター3で出てくるクソデブにキレた。
 チャプター3は全体のステージから見てもかなり長い方で、一本道な分だけ短縮は地力が出る。極めつけにキースキップという大技まであり、ここの成功の如何で平気で1分はブレる。フレーム技なだけあって成功率も低く、上手く行かない度にコントローラーを破壊した。
 反復と周期の把握、安定かつそれなりに速度のルートを採用、研究し、何とかベストタイムを5分46秒に縮め、平均は6分前後と悪くないものになった頃にはプレイ時間がチャプター3全体(ABC全部)で20時間を超えて、デス数はA面だけでも4000に到達していた。

 二番目はチャプター7の頂にキレた。一時期ツイッターの名前も変えた。
 Any%区間で最も長い上にこれがラストという地獄。チャプター単発で練習しても、事故事故事故事故事故事故事故事故事故の嵐でタイムが2分3分と平気でズレた。
 なめてやがる。これを作ったのは誰だ。許せねぇ。どうしてもっと短く簡単に作ってくれなかったんだ。通常プレイと詰めていくプレイのあまりにも完璧なバランス調整で涙が出てくる。
 上手い人に手を借りた。国内2位のセレステ星住民のアザラシさんや国内3位のおじゃる丸が好きなお菓子っぽい人に知恵を借り、国内7位のカスタムマップ激推しハードプレイヤーさんが呟いたルートを採用した。他にも放送に来てくれた多くの人に教えを受け、提案と協議、そして反復練習をした結果、なんとか11分台は安定した。総プレイ時間は全体で34時間弱、デス数は6000回弱だった。

 三番目にチャプター6にキレた。というか絶望した。
 他のチャプターの様に大幅なルート改革で短縮が見込めず、タイムを巻くには精度を上げ安定させるしかない。横着大好きな私にとって、最大の障壁だったと言っても過言ではないだろう。
 後にチャプター7が控えているというプレッシャー。
 見えているタイマーによる目標タイムと現タイムの差異。
 何もかもが重く伸し掛かるこのチャプターで下手なミスが出来ないのに可能な限り速く走らなければならない状況は確実に胃に穴を開けていたと思う。コントローラーを2回位投げ、1回そっと置いて山口百恵氏よろしくステージを去りかけた。
 先人の星人兄貴達もここに関しては安定しかないと口を揃えて仰った以上、もうとにかく練習しかなかった。
 チャプター別プレイ時間が20時間弱になった。デス数は1800回弱になった。

 最後にチャプター4の風と雪玉にキレた。
 ガチのクソ。短縮幅も大きくないのに事故だけは多くて幾らでも後ろ倒しにしてくる。短縮するにはより高度なルートを取るしかなく、全く安定しない方法をどうすればいいのか布団の中でも仕事中の商品陳列の間も終始考えていた。答えは未だに出ていない。辛い。
 総時間は15時間を超え、デス数は2300になりそう。

 それでも、ほんの少しずつ、ちょっとずつ牛歩で縮まっていくタイムを見ると心が奮起して、もっとやろう、上手くなろう、見応えのある走りをしようと言う気になって、エントリーは自分的に良かったんだと思った。実際文句ばっか言っていても、走っている間はとても楽しいし、飽き性な自分が、Celesteというゲームを一分一秒長くプレイ出来ている事実が嬉しかった。
 そしてタイムが縮まってきたとき、とある悩みにブチ当たる。


第六章、見せる、ということ

 ふと我に返って思った。
 「これは見ていて面白いか?」
 はっきり言って、RTA界隈ならまだしもbiim界隈にはCelesteというゲームの認知度は皆無に等しいと思っている。殆どの人間が初見前提でプレイするとして、ただただ走るだけの行為が面白く感じるだろうか。
 RiJを思い出す。初見のゲームを面白いと感じたとき、自分はどこを見ていただろうか。
 スーパープレイ?いや、正直スーパープレイ単体を見せられてもなんの事かわからない。どれだけ凄いことをやったか、当事者じゃなきゃ理解できるはずも無い。
 絵面の派手さ?近い気もするが、多分それだけじゃない。
 解説と実況スタイルだからこその生の反応?これだ。
 そう、自分は走っている人やそれを見て解説している人が面白く、かつ分かりやすく説明し、噛み砕いてストーリーやスーパープレイの精緻さを語ってくれたから面白いと感じたのだ。
 
 繰り返すが、私自身に界隈からの認知度はなく、アイドル性もない以上、ゼロから人を楽しませなければならない。Ribのモットーは、まず見ている人を楽しませることが先に立っているように感じ、それに惹かれたからこそ自分も応募した。なら独りよがりの走りを見せて、終わり!閉廷!でいいはずがない。

 喋りを何とかする必要が出来た。
 解説役の人を呼ぶか考えた。
 しかし大会名が大会名。TLでは苦い表情の人もいて、迂闊に頼んでは、頼んだ人にまで苦い顔をされかねない。しかも、放送を見に行っているとはいえ個人的な音声の繋がりはない。更には頼んだ人の方が上手かったりしたら、どうしてその人が走ってくれなかったの?となったりして私のお腹が破裂する。
 やるしかない、自分で。
 走者兼解説、ここに爆誕。

 とにかく必要な説明のカンペを作成するため、ゲーム紹介の情報を整理し、端的かつ簡潔な文章を考えた。ランの進行から踏まえて、流動的な実況を考えるなら猶予は頭一分から二分程度。ソレ以降はチャプター単位で走りに合わせて喋ることに決めた。ほぼアドリブ?なんとかしろ。
 
 更にタイミングのいいことに、MSSF(Midspring Speedfling)にてCelesteの披露があり、その内一つのカテゴリーで日本語解説の席が空いていることに気づいた。
 解説の練習にもってこいだ。カテゴリーはカスタムマップのAny%。やったことがないモノだった。
 期限は2日。実際にDLしてプレイして四時間でクリア。そのマップに関する情報を掻き集めて本番へといざ鎌倉。
 なんとかバトンを繋いで解説のキャリアを積み、AGDQからの反省と合わせて当日喋る流れを大まかな決めた。

 これだけでは終わらなかった。更に見栄えを求め、何かネタになるものは無いかと探した。
 その結果がチャプター6の最序盤、三連メガトンコインである。しかしらこれを見せるには時間が三分程度かかる。本走では確実にスキップする場面。なんとか見せられないか考えた。動画を用意して流してもらうか?いや、それでは小窓しか使えない上インパクトが薄い。本走の走りとイベントがとっ散らかって本題が分からなくなれば大会の趣旨に反する。『面白く、楽しい』が目標でも『ふざければいい』ではない。走りは真っ当かつ全力であるべきだと判断した。
 ならどこで見せるか。答えは一つ。
 
 巻いて、その空いた時間に感想を喋りながら見せればいい。

 余計タイムを出さなければいけなくなった。結局、大会が始まった裏で、自分の前までに通しを数度、喋りながらの通しを更に追加、RTAでのタイム計測、タイマー位置などをギリギリまで調整していた(先にやっとけ)

 こうして書き出すと、エントリーから約三ヶ月、ノウハウのない初心者なりに案外動いていたんだなぁと思った。


第七章、本番

 やることはやり尽くして迎えた本番。スケジュールはなんと最終日のトップバッターという超好位置。逆に言うと、大会の〆を決める重要ポジションだった。
 が、前日の自分は遠足に行く前くらいの勢いで熱が爆発しており、寝ようとした時間から一時間は布団の上で脳内ランとそれに合わせた実況をしていた。
 カンペはある。雑談用の項目も書いた。話題に困ればこれを切り出せば何分かは持つ。喋りながらの通しも上手く行っていた。今なら行ける。
 ノンケとホモのハイブリッドなので当日朝9時前に目が覚めてしまってウマ娘二期の8話と10話と12話と13話を見ていた。やる気が絶好調に上がった。

 11時50分、開始20分前なので先に敵地で枠を取り待機。枠URLを運営さんに送り、オッケーを貰ったところで開会式を見ながら自分の番を待った。
 12時8分くらい。走者紹介動画を飛ばして直接画面を映すと連絡が来た。正直ボイスロイドのノンケ向け実況なので飛ばしてくれないかなと考えていたのでこの配慮(偶然?)はとても助かった。場の空気を変えずに済んだ。
 12時10分、時刻通りに手番がスタート。挨拶もそこそこに3カウントではい、よーいスタート。収録本番、カメラが向いてカチンコが打ち合ったときみたく、一気に自分の中の空気が変わった気がした。
 
 ランは正直殆ど覚えていない。ただ、目立った大きなミスはなかったように思う。本番中は視線をコメントビューアーと画面とカンペで往復していて、喋ることを整理しながら、話題が途中で不自然に切れたり変わったりしないように組み立てていたことだけを覚えている。とはいえ、終わったあとビューアーのログを見たら全くコメントを追えていなくて、力不足を大いに感じた。
 タイムは39分39秒。右上にタイマーを設置していたのでリアルタイムはそちらでかつ本来そちらを重視しなければならないはずなのだが、ベストタイム+7秒(-7と言ってしまったのだが、それだと更新してますね……というコメントのツッコミに思わず手を叩いて納得してしまった)という記録だったせいで全部吹き飛んだ。運営さんも終了後のツイートがゲーム内タイムになっていて本当に申し訳なかったと思っている。ごめんなさい。
 が、なんだかんだどうやらコメントの速度は他の日よりも速かったようで、トップバッターとしての役割は果たせたらしい。満足のいく……ランだった……。

 こうして、初のイベント参加は成功体験として終わった。


終章、完走した感想

 あちこちに何度も書いたが、本当に運営の皆様、視聴者兄貴達、走者兄貴達に感謝しかない。正直言ってしまうと、実は私は本番まで殆どDiscord等で絡まずにいた。運営の方や走者の方から見ても、こんなに愛想のないやつがおるんかと思われただろう。それくらい、最低限のやり取りしかしていなかったのだ。
 これには、邪魔をしたくないとか、界隈外だから入りづらかったというのもあるが、何よりも自分がそう言ったことへの関わり方を知らないのが大きな要因だっただろう。つまりコミュ障と言うやつである。
 が、それにも関わらず、本番までしっかり介護していただき、走者への案内をどう分かりやすくするかなど必死で工面してくださった運営サイドの方々の懐は深かった。幾度とない感謝の原因はここにあったことを知らせたい。
 外から見れば、適当な集団が適当に作り上げた厄介者のお祭りに見えたかもしれないが、内情としては、これほど走者と密になって試行錯誤した大会は無いのではと思う。大会の面白さもそこから出ていたものだろう。
 問題点は山積みなのだろうけれど、次回大会があれば、また何かしらの形で関わりたいと思っている。次は、もうちょっと友好的に歩を進めたい所だ。解説枠っていうのは、どうかな?喋りたい度なら割と高いのだけれど。
 


余談、チャプター5

 Celesteのスピードラン経験者がもしあのランを見たら、不思議に思った点があると思う。表題の件だ。
 普通、CelesteのAny%でタイム狙いなら5Aではなく5Bを採用し、短縮を図る。が、今回は5Aを走り通した。
 これには、実力不足というのも勿論そうなのだが、普段見られないルートを走りたい、というのもあった。5Bを駆け抜ける所など、Any%やTrue Endingを見れば腐るほど見られると思ったのだ。
 初見の人にはほとんど意味がない、と思うかもしれないが、狙いは少し後にある。
 初見の人が5Aルートを見て興味を示し、CelesteのRTAやスピードランを見るようになったとするなら、その時、殆どの場合5Bを見ることになるはず。そうすれば当然疑問が湧くはずだ。何故ルートが違うのかと。
 まぁRTAだし個人で取るルートは違うでしょって話になったらアッハイで終わっちゃうのだが、その疑問を取っ掛かりにしてCelesteに触れてくれたら、Celesteの魅力を知る人が一人でも多く増えるかも知れない。単純に、ただそう言う違いからの興味の促進に期待していた、というのもあった。
 まぁ、今後は5B採用ルートになると思うのだけれど(は?)
 
 これからもAny%だけでなくCeleste自体はやり続けていきたいと思っている。何処かで見かけたなら声を掛けてくれるととても嬉しい。


 それでは、長文の読了、ありがとうございました。