村山目線
久しぶりの8人公演のレッスンは、とても楽しかった。
歌って、踊って、笑って、汗かいて
みんなで試行錯誤しながら、公演に新鮮さと懐かしさを求めて、創り上げていく。
あぁ、最高だ
休憩中も、スタッフさんと話し合いながら、お客さんが劇場に入った景色を想像する。
話が尽きて、レッスン室に戻ろうとしたと同時に、なぁちゃんが出てきた。
誰に見せるわけでもないのに、下手くそに笑っていた。
無意識に明るく声をかける。
「お、なぁちゃん!」
私を見つけたなぁちゃんは、子犬みたいな笑顔に変わった。
なぁちゃんの周りの空気が柔らかくなるのを感じた。
「ゆうちゃん」
少し甘えた声で名前を呼ばれると、胸がくすぐったい。
「なぁちゃんどこ行くの?」
「自販機ですよ」
「私も行きたい。ちょっと待ってて!」
そう言って急いでお財布を取りに戻る。
レッスン室に入ると後輩達が健気に練習していて、嬉しくなる。
「偉いね」
思わず声をかける。
「あ!ゆいりーさーん!」
私に声をかけられて嬉しそうに私の名前を呼ぶ後輩達が愛おしくなる。
「ちゃんと水分補給しなね」
「大丈夫ですよ。奈々さんが奢ってくれるんです!」
そう言って嬉しそうに笑う後輩に、良かったね、なんて声をかけながら、なぁちゃんの作り笑いの意味を知る。
仕方のないことだし、後輩のせいじゃない。強いて言うなら、辛いって教えてくれないなぁちゃんが悪い、、、
いや、違うか
気づかなかった私が悪い。
急いでなぁちゃんの所へ戻る。
自販機までの道のりで、なぁちゃんは私を頼ってくれるかな
教えてくれるかな
聞いてもいいのかな
そんな事を考えていると、なぁちゃんの歩く速度が突然ゆっくりになった。
心配になって振り返ると、なぁちゃんは少し俯きながら嬉しそうに笑ってて、安心する。
私も歩く速度を合わせて、少しなぁちゃに近づいた。
お財布を反対の手に持ちかえて、繋いでくれても良いんだよ?って、誘ってみる。
自分からは照れ臭いからね
そしたらなぁちゃんの手が触れて、躊躇ってるのが伝わるから、良いよって意味を込めて優しく握り返す。
チラッとなぁちゃんを見ると、尻尾をぶんぶん振ってる犬みたいに、嬉しいって感情が流れてきて、私の体温が上がる。
遠慮がちに繋がれていたのが、さっきよりも強く握られた。
教えてくれなくても、聞かなくてもいいやと思う。
その代わり、誰かに話したくなったらいつでも聞くから。
いつでも頼ってね。願うようになぁちゃんの手をギュッとする。
そしたらなぁちゃんがからかうみたいに私の顔を覗き込んでくるから、私は顔を逸らすけど、
嫌だからじゃないよ。
「ゆうちゃん、可愛いです。」
「ん、ありがと/////」
ほらまたそうやって、からかって。
いつもなら否定してしまうその言葉も、なぁちゃんに言われると真っ直ぐに伝わってくるから、間に受けてもいいんだよね。
なぁちゃんに可愛いって言われると、どうしようもなく嬉しくて。
たとえお世辞でも、浮かれてしまう。
今、顔見られませんように
なぁちゃんの温もりを独り占めしたくて、なぁちゃんにもっと近づく。
なぁちゃんにとってはなんでもない距離かもしれないけど、私にとっては心臓が破れそうになる程愛おしい距離。
自販機に着くとなぁちゃんが飲み物をたくさん買っていて、
優しいなぁって、嬉しくなる。
だけど素直になれなくて
「そんなに喉渇いてたの?」
なんて、可愛くないこと言っちゃって
律儀に理由を説明してくれる優しいなぁちゃんに、甘えたくなる。
自分も飲み物を買って、戻ろうと思ったけど、やっぱりもう少し2人でいたいから、引き留めるために意味のわからない事を言ってしまう。
「なにで負けたか当ててあげる。チョキでしょ?」
そしたらなぁちゃんが目を見開いて
「なんでわかったんですか?!」
って、
うそ!「ほんとに当たっちゃった!」
嬉しくて、楽しくて
笑いが止まらない。
もっと2人でいたいから、焦り気味に買ったばかりのコーンポタージュを開けて引き留める。
一口飲むと、案の定熱くて、
「アハハwゆっくり飲まないと火傷しますよ。」
って、なぁちゃんが優しい声で言う。
それが嬉しくて、もう一口飲んだら、思ったより勢いよく飲んじゃって、
あっつ!
自分バカだなぁとか思いながら、なぁちゃんが楽しそうに笑ってるのを見たら、熱さなんてどうでもよくなっちゃうもんだから、かなわないなぁと思う。
なぁちゃんの自然な笑顔を見て、私は、少しでもなぁちゃんの力になれてるのかな、なんて、
自惚れても良いですか?
それからレッスン室に戻るまでの他愛のない会話も、私にとってはすごく大切で、なぁちゃんの側にいるだけで落ち着くんだ。
レッスン室に戻ると、後輩達に冷やかされて、
恥ずかしいけど嫌ではなくて、
なぁちゃんの手が触れた時、ドキドキしすぎて堪えきれなくて、思わずはね返して隣から逃げたけど、
ちゃんとなぁちゃんが着いてきてるのは気づいてる。
いつでもなぁちゃんは私を見捨てないでいてくれるから、、、
私、思った以上になぁちゃんに依存してる。
なぁちゃん、笑ってくれてありがとう
これほどまでに誰かの笑顔を見たいと思ったのは初めてだよ
沢山の感情を、教えてくれてありがとう
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「君にはかなわない」の、ゆいりー編
噛み合ってるのに、微妙にすれ違っていて、だけどしっかり繋がっている
お互いしっかり想いあってるのに、相手のことになると自信がない2人だから、お互い片想いみたいになっちゃってて
そんなもどかしさと、それでもしっかり繋がっている🍎🌱の尊さ