「ありがとう。楽しかった」~その猫のいた時間~
よく生きた。
よくなついていた猫が死んだ。
家の外にいる地域猫だけど、ごはんをあげていたのでうちの子だ。
あたりまえのようにずっといた。
ちょっと考えていつからいたのかわからないぞ、となった。
で、いつから居ついたのか、思い出せないのもなんなので、ゆっくりと振り返ってみた。
例えば2010年。
喫茶柊の夜だけマスターになった頃にはいただろうか。
あまりにあたりまえにいた猫のことを振り返るのは難しいものだった。
というのも、私は、記念日などのマーキングをするクセがほとんどない。
今に向きあうことを最優先にしていたものだから、なかなかあたりまえの存在の過去を振り返るのは難しい。
30代中ごろまで、私のうちの周りには、とにかく猫がたくさんいた。
物心ついた頃には周囲にはたくさん猫がいて、それが30年以上続いていた。
そういう町に私は住んでいた。今はそういう町ではないが同じ場所に住んでいる。
嫌いな人や現代語の移り変わりに気付けない人たちにとっては野良猫。
好きな人や現代語の変化に敏感な人たちにとっては地域猫。
伝染病が流行ったり、近所が迷惑がり始めて、人同士の価値観の相違がより弱いモノを代理として文句の種になったりもしていった。
人々はどんどんキリキリと神経質になっていくようにも感じた。
そんな折、不幸な猫をなるべく増やさないように、と有志でお金を出し合って、獣医さんたちの協力もあって去勢・避妊手術を地域猫に施していった時期がある。
それから暦が一周したくらいの現在、私のうちの周りには本当に地域猫が少なくなった。
死んだ猫は、この時期に去勢をしている子の中にいたから、少なくても12年はうちの周りにいたことになる。
5年どころか12年はいたのか、と驚く。
となると、祖母が寝たきりになる前からいて、それから母がなくなったり父が手術したりと、なにかと落ち着かない時期すべてを横断していて、なるほど、12年は経っている。
で、居ついた頃に手術ができた、ということは大人の猫になっていたわけで、死んだ猫は13~15歳だったんだろうな、と思えた。
まあ、見た目もそんな年齢を感じさせていたな。
最近、家猫は15年生きても珍しくなくなったようだが、地域猫は外で暮らしているから、やっぱりそこまで寿命は長くない。
しかも、こいつは1年前の夏、かなり弱っていた。
毛も薄くなり顔も目やにやよだれでベタベタになって、当時、口に出さなかったが「長くないな」と思っていた。
そんな頃に母が逝った。
なるべく消化のいいものをあげていると持ち直してきたので、ちょっと贔屓して栄養価の高いものなどを与えていくと、顔はきれいになり、毛もフサフサしてきて太ってきた。
その後は、なつきすぎるほどになついて、エサ以外の時間も店の勝手口の近くにいてうるさいくらいだったが、元気になったのは素直にうれしかった。
最近では誰にでもなでられるようになり、うちのお店のお客さんにも存在がよく知れていた。
猫の幸せを測ることは私には到底できないが、彼の生涯の中で、一番よい時期が晩年だったんだろうと思えた。
猫の死を看取るのははじめてではないが、慣れるものではない。
それでも実感としてわかってくるのは、人以外のすべての生物は、と言っていいと思うが、自分の生をあきらめることがない。
自分以外の死を認識することはあるかもしれないが、自身は、老いても病でも、致命的な傷を負っても最後の瞬間まで生きようとする。
それを何度か、この目で見たし、抱く腕や胸で感じたことがある。
最後の瞬間まで、生きようとしているとわかる。
看取る私がわかるのは、生物から生が抜けて物になる感覚。
私は死に際して大泣きすることがあまりない。
母の死に際してもそうだった。
むしろ縁がほどほど遠くなった人の死ほど泣けるものである。
できなかったことも多いが、できることはしてきた、という確信なのか、事実を受け止めようとするから泣けなくしているのかははっきりとしない。
ただ、あたりまえの中にいないことがわかると自然と涙が出るのだ。
寂しくって泣く。号泣することもある。そういう泣き方なんで他人に気付かれにくい。
愛しい者の死は、私にとっての永遠になるんだけど、だから、ずっと寂しい。
私は昔からここが変なんだけど、この寂しさを紛らわそうとか、解消しようとか思わない。
寂しいという感情を大事にしてしまう。
とても大事なモノのように、この寂しさたちをたくさん抱いて生きている。
私にとって、湧いた感情はすべて大事なのだ。
なんでなのかわからないけど、湧いた感情は大事にしている。
特に寂しさたちを宝物のようにしている。
よくわからないよね。私にもこれはよくわからないんだから。
よく生きた。
いなくなったのは寂しいけど私は生きていくよ。
ありがとう。楽しかった。
よくなついていた猫が死んだ。
家の外にいる地域猫だけど、ごはんをあげていたのでうちの子だ。
あたりまえのようにずっといた。
ちょっと考えていつからいたのかわからないぞ、となった。
で、いつから居ついたのか、思い出せないのもなんなので、ゆっくりと振り返ってみた。
例えば2010年。
喫茶柊の夜だけマスターになった頃にはいただろうか。
あまりにあたりまえにいた猫のことを振り返るのは難しいものだった。
というのも、私は、記念日などのマーキングをするクセがほとんどない。
今に向きあうことを最優先にしていたものだから、なかなかあたりまえの存在の過去を振り返るのは難しい。
30代中ごろまで、私のうちの周りには、とにかく猫がたくさんいた。
物心ついた頃には周囲にはたくさん猫がいて、それが30年以上続いていた。
そういう町に私は住んでいた。今はそういう町ではないが同じ場所に住んでいる。
嫌いな人や現代語の移り変わりに気付けない人たちにとっては野良猫。
好きな人や現代語の変化に敏感な人たちにとっては地域猫。
伝染病が流行ったり、近所が迷惑がり始めて、人同士の価値観の相違がより弱いモノを代理として文句の種になったりもしていった。
人々はどんどんキリキリと神経質になっていくようにも感じた。
そんな折、不幸な猫をなるべく増やさないように、と有志でお金を出し合って、獣医さんたちの協力もあって去勢・避妊手術を地域猫に施していった時期がある。
それから暦が一周したくらいの現在、私のうちの周りには本当に地域猫が少なくなった。
死んだ猫は、この時期に去勢をしている子の中にいたから、少なくても12年はうちの周りにいたことになる。
5年どころか12年はいたのか、と驚く。
となると、祖母が寝たきりになる前からいて、それから母がなくなったり父が手術したりと、なにかと落ち着かない時期すべてを横断していて、なるほど、12年は経っている。
で、居ついた頃に手術ができた、ということは大人の猫になっていたわけで、死んだ猫は13~15歳だったんだろうな、と思えた。
まあ、見た目もそんな年齢を感じさせていたな。
最近、家猫は15年生きても珍しくなくなったようだが、地域猫は外で暮らしているから、やっぱりそこまで寿命は長くない。
しかも、こいつは1年前の夏、かなり弱っていた。
毛も薄くなり顔も目やにやよだれでベタベタになって、当時、口に出さなかったが「長くないな」と思っていた。
そんな頃に母が逝った。
なるべく消化のいいものをあげていると持ち直してきたので、ちょっと贔屓して栄養価の高いものなどを与えていくと、顔はきれいになり、毛もフサフサしてきて太ってきた。
その後は、なつきすぎるほどになついて、エサ以外の時間も店の勝手口の近くにいてうるさいくらいだったが、元気になったのは素直にうれしかった。
最近では誰にでもなでられるようになり、うちのお店のお客さんにも存在がよく知れていた。
猫の幸せを測ることは私には到底できないが、彼の生涯の中で、一番よい時期が晩年だったんだろうと思えた。
猫の死を看取るのははじめてではないが、慣れるものではない。
それでも実感としてわかってくるのは、人以外のすべての生物は、と言っていいと思うが、自分の生をあきらめることがない。
自分以外の死を認識することはあるかもしれないが、自身は、老いても病でも、致命的な傷を負っても最後の瞬間まで生きようとする。
それを何度か、この目で見たし、抱く腕や胸で感じたことがある。
最後の瞬間まで、生きようとしているとわかる。
看取る私がわかるのは、生物から生が抜けて物になる感覚。
私は死に際して大泣きすることがあまりない。
母の死に際してもそうだった。
むしろ縁がほどほど遠くなった人の死ほど泣けるものである。
できなかったことも多いが、できることはしてきた、という確信なのか、事実を受け止めようとするから泣けなくしているのかははっきりとしない。
ただ、あたりまえの中にいないことがわかると自然と涙が出るのだ。
寂しくって泣く。号泣することもある。そういう泣き方なんで他人に気付かれにくい。
愛しい者の死は、私にとっての永遠になるんだけど、だから、ずっと寂しい。
私は昔からここが変なんだけど、この寂しさを紛らわそうとか、解消しようとか思わない。
寂しいという感情を大事にしてしまう。
とても大事なモノのように、この寂しさたちをたくさん抱いて生きている。
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特に寂しさたちを宝物のようにしている。
よくわからないよね。私にもこれはよくわからないんだから。
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