妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
お久しぶりの、朔夜の2人です♡
冷蔵庫を開けて、パックに入ったままの惣菜をお皿に移す。
盛り付けは少し拘って。
彩りがよくなるように、少し野菜を足したりなんかして。
って。
...なんか、めっちゃ虚しいんですけど。
ほとんど料理をしないかずさんが、今日は珍しく夕食を準備してくれた。
どれも美味しそうな、けっこうお高いデパ地下の惣菜ばかり。
あ、コレ前に俺が好きだって言ってたやつだ。
覚えててくれたんだ。
そんな小さな事に嬉しくなって、結構機嫌よく準備をしてたんだけど。
ふと、我に返ると。
なんか、無性に虚しくなってしまった。
だって、今日は俺の誕生日だから。
誕生日なのに、何で自分で準備してんだろ。
かずさんは急な用事が入ったらしくて、どうしても予定の時間に帰ってこれなくなってしまったらしくて、夕方にその連絡が入った。
『申し訳ないけど、準備しといてくんない?
買い物はしてあるから。』
まぁ、準備までは頑張ってくれたんだって思ってこうやってダイニングに料理を並べてはいるんだけど。
「かずさん、何時になんのかな...。」
思わず零れた独り言。
二人で祝おうって言われて、嬉しくて残業せずにまっすぐ帰ってきた。
なのに、結局また俺はかずさんを待ってる。
思えば、昔からこうだった。
学生の時も、この部屋でいつもかずさんを待ってた。
待ちくたびれるくらいに待って、少し酔っ払ったかずさんを出迎える。
あれからもう何年も経つのに、かずさんは記憶の中のあの頃とちっとも変わらない。
少しはかずさんに近づけたような気がしても、ふとした瞬間にやっぱりまだまだ自分の未熟さを思い知る。
「はぁ...。」
今日は自分でもよくわからない感情がグルグルと渦巻いてる。
淋しいというか、虚しいというか。
きっと、今日が俺の誕生日で
一緒に過ごしてくれるって約束した人が
未だにこの腕の中にいないせいなのか。
まぁ、あんまり深く考えてもしょうがない。
きっとどうしても外せない用事なんだろう。
そう、自分で自分を納得させるものの
テーブルに並んだ料理を見れば
やっぱりため息が零れてしまう。
「腹、減った...。」
時計を見れば、もういつもの夕食の時間は過ぎている。
ちょっとだけ、摘んでしまっても
バチは当たんないよね?
味見だよ?
かずさん、意外と好き嫌いあるし。
そんな言い訳をしつつ、ちょっとだけのつもりで箸を付けた料理は、やっぱり美味くて。
「あー...これ、ワインに合いそう。」
そう思って冷蔵庫を開ければ、しっかりと冷えたシャンパンが入ってる。
...コレはさすがにマズイだろう。
値段なんてよくわからないけど、きっと高いんだろうそのシャンパンは、いくら何でもかずさんを待たずに開けるのは勇気がいる。
だから、その隣に置かれたいつものビールを取り出した。
「一本だけね。お先にいただきまーす。」
一応そう断って、プルタブを立てた。
苦味が口に広がって、炭酸が喉を熱くする。
「はぁ~...うまっ。」
ビールのこの美味さを知ったのは、いつだったっけ。
社会人になってからだったような気がする。
あの頃とあんまり変わってないように思えるのに、ちゃんと大人になってる。
...まぁ、物理的にも大人になってるんですけどね。
今日、誕生日だし。
またひとつかずさんに近づいたわけで。
でも、この年の差は絶対に縮まる事はないんだけど。
それでも、だからこそ。
普通に、自然に隣に立てるようになりたいんだけど。
それがなかなか難しい。
雅紀さんなんて、完全に俺の事弟みたいに思ってる。
店に行くと相変わらず食わせようとするし。
結局、そんなどうでもいい事をグダグダと考えてたら三本目のビールが空になっていた。
「...連絡、してみようかな。」
スマホを取り出して、画面を眺める。
タップしようとしたまさにその瞬間。
ドアの奥の玄関が、一瞬騒がしくなる。
それが、待ちわびていた俺にかずさんの帰宅を報せた。