妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
その約2時間ちょっとは、あっという間だった。
引き込まれて、まるで台風のような怒涛の展開とそれぞれの登場人物に感情移入して、食い入るように見入って。
隣に座っていたはずの松本さんの存在も忘れてしまうくらい、目の前のスクリーンから目を離せなかった。
エンドロールですらも、その映画の一部のような気がして、場内が明るくなるまで席を立つ事も出来ない。
オレの語彙力じゃ上手く表現出来ないけど、胸をぎゅっと掴まれて、揺さぶられるような感覚。
「ふぅ...。」
やっとみたいに出た一呼吸。
それを待っててくれたみたいに、松本さんが
「立てる?」
優しく声を掛けてくれる。
「...ヤバい...すっげぇ良かった。」
そんな薄っぺらな感想しか出てこなくなるくらい、見応えのある映画だった。
「ちょっと、休憩しよっか?」
立ち上がった松本さんが手を差し出してくれて、オレを引き上げてくれる。
そのまま手を引いて、カフェに連れて行ってくれた。
「いやぁ...すごかった、これは映画館で見て正解だったね。」
「本当、それっすね。原作読んでたからこそ、余計にのめり込んじゃいました。」
オレの感想に、うんうんって頷いてくれる松本さん。
登場人物に思いっきり感情移入しているオレと、冷静に俯瞰で見つつも役者さんの表情のひとつひとつを読み解くみたいな感想を言葉にする松本さんに、頷いて、納得して、そして新たな解釈をして。
「もっかい原作読みたくなった!」
そう言ったオレに、やっぱり柔らかく笑ってくれる。
映画そのものも満足だったけど、この終わった後の余韻も一緒に楽しめるのは、きっと松本さんとだからなんだろうな。
「結構遅くなっちゃったな...。どうしようか?ご飯食べて帰る?」
「...いいんですか?」
「何か食べたいもの、ある?」
そう言われて、思わず
「ハンバーグ!」
そう答えてしまった。
だって、好きなんだもん。
駐車場まで松本さんと並んで歩く。
オレは電車だったけど、松本さんは車で来たんだって。
駐車場までの間も映画の話とか、学校の話とかたくさん喋った。
オレばっかり話してるのが、ほんの少し恥ずかしくなるくらい。
「松本さんは、お休みの日って何して遊ぶんですか?」
「んー...何だろう。ていうか、遊ぶっていう概念が既にないかもしれないな。」
「じゃあ、趣味は?!」
真っ直ぐ前を見つめる松本さんの横顔を見ながら歩いてると、向こうから歩いてくる人がじっと松本さんを見ているのに気付いた。
その人とすれ違う瞬間。
「あれ?松本?」
そう声を掛けられた。
「え?うわ!櫻井さん!何してるんですか?!」
櫻井さんって呼ばれたその人は、どうやら松本さんの知り合いみたいだった。