お嫌いな方はスルーで。
カウンターに乗せたほっぺたがひんやりして気持ちいい。
その気持ち良さに思わず目を閉じれば、真っ暗な視界がぐるぐると回る。
脳みそが痺れた感覚と、視界がぐるぐると回る感覚。
あー、ヤバい。
酔っ払ってんなぁ。
なんて、結構冷静に自分を客観視するけど、その感覚が楽しくて頭を上げられずにいた。
「かず、大丈夫?」
声と共に、頭を撫でられた。
「んー・・・大丈夫。」
最後まで待ってるんだもん。
明日休みだから、一緒に帰るんだもん。
「あとちょっとで終わるから。」
わかったよって返事したんだけど
それはちゃんと言葉にしたのか、頭の中だけで言葉にしたのか
それすらもわからないまま、いつの間にか眠ってしまっていた。
ゆらゆらと揺れる感覚が心地よくて
触れる温もりがあったかくて気持ちよくて
それを離したくなくて、ぎゅっと手を結んだ。
「かず?起きた?」
「・・・じゅんくん?」
「もうちょいだから、動かないでね。」
気付けば潤くんに抱っこされてた。
そして、そのままソファに降ろされる。
「かず、大丈夫?水飲む?」
「ここ・・・潤くん家?」
見慣れた部屋、いつものソファの感覚がここが潤くんの部屋であることを教えてくれる。
「かず寝ちゃったから、家に連れて帰っちゃった。このまま泊まりな?」
オレの分のパジャマを手渡した潤くんは、風呂場に向かう。
その背中に手を伸ばして、シャツをぎゅっと掴んだ。
翔ちゃんの言葉を思い出す。
ちゃんとぶつからなきゃ、オレの思いは伝わらない。
察してくれないって拗ねてたって、『今』は変わらない。
「じゅんくんは・・・」
「ん?どした?」
まだ半分くらい痺れた頭で、考えるよりも先に言葉が零れる。
「じゅんくんは、何でオレを・・・
抱かないの?」
それは、オレがずっと抱いてた思い。
あの日から、何度一緒に朝を迎えても
最後の一線を超えていない
オレたちの関係に淋しさを感じていた
オレの素直な気持ちだった。