私は、いわゆる「上司本」とか「リーダーシップ本」などといわれている分野の本がわりあい好きで、それなりに読んでいるので、それについて書きます。
 第1回目は次の本。

 『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』
 マーカス・バッキンガム
 
 本書は、リーダーの役割とマネジャーの役割を厳密に区別していて、そこが、いわゆる「上司本」あるいは、リーダーシップに関する本の中では珍しいと思う。
 筆者は、ギャラップ・オーガニゼーションで世界トップレベルの職場やリーダーの調査にたずさわったあと独立し、コンサルタントや講演著作・研修・Eラーニングの提供を仕事にしている。実践者ではなく観察者・解説者の立場を貫いている人で、主観的な自慢話などが出てこないのが本書の特徴。「調査と科学に基づく考察」を貫いている。
 マネジャーの仕事について、「出発点は部下一人ひとりの才能である。課題は、部下の才能を業績に結びつけるいちばんの方法を見つけだすこと。これが優れたマネジャーの仕事だ」と書いている。
 リーダーについては、「リーダーの出発点は、自分が描く未来のイメージだ」「すぐれたリーダーは、よりよい未来に向けて人々を一致団結させる」と書いている。
 リーダー、マネジャーのいずれかのスタイルが良い、悪いというのではなく、それぞれが必要な役割を持っている。というのがこの本の立場。
 私は、特にマネジャーの役割についての説明に感銘を受けたので、その部分を引用する。

 凡庸なマネジャーは、ほとんどのことは学習できると信じ、マネジメントで大切なのは、部下一人ひとりの弱みを見出し、それをなくすことだと思っている。
 すぐれたマネジャーはその逆で、人で最大の影響力を持つ特質は生まれつきのものだと信じている。だからマネジメントで大切なのは、生まれつきの特質をできるかぎいうまく配置して、成果をひきだすことだ。
(引用終わり)

 そして、すぐれたマネジャーの行動について次のように書いている。

 すぐれたマネジャーは、部下の自信過剰を心配したりはしない。いちばん心配するのは、それぞれの部下が生まれつきの才能を生かして成果をあげられないことだ。だからすぐれたマネジャーは、部下一人ひとりが強みを見出し、実際に使い、磨きをかけられる課題を与えること、あるいはミシェル・ミラーのように、部下の強みを最大限に生かせるように職場環境を整えることに多くの時間を割く。部下が成功を収めたとき、すぐれたマネジャーは勤勉さを褒めず、うまく強みを活かしたからこそ成功したと褒める。
(引用終わり)

<こんな人に向いている>
 自分がリーダーなのか、マネジャーなのかを考えてみたい人。
 リーダー論、マネジャー論に興味がある人。
 リーダーとマネジャーをきちんと区別することが必要だと思う人。