最近「日本を貧困化させる経済学の大間違い」という本が時々本屋に平積みされている。
 題名にインパクトがあり、思わず手に取ってみたくなる。経済学は好きな方なので買って読んでると、なかなか、示唆的なことも書かれている。ただし、題名は少し大げさな感じがした。
 気になった部分を引用する。
 
 「使ってもカネは減らない、動くだけ(「日本を貧困化させる経済学の大間違い」41ページ)」

 あたりまえのことであるが忘れがちなことである。
 そして事実この事実を忘れている人がいる。それは、竹中平蔵さん

「個別の経済主体から見れば、使ったカネは確かになくなります。しかし社会全体では、使ってもカネは減らず、また増えず、動くだけです。個別と全体では経済現象が異なって見えます。カネのこの特性は当然のように思えますが、意外と認識されていません。例えば、先に紹介した竹中平蔵氏の次の文章では、

「団塊の世代は、あと10年もすれば、取り崩しの年齢に入ります。この世代は他の世代よりも6割ほど人口が多いため、この世代が貯蓄を増やし続けている間は大した問題は起こりません。しかし、取り崩しをするようになったら、一挙に問題が噴出します」(竹中平蔵著「竹中教授のみんなの経済学」幻冬舎、2000年P111)

と述べ、貯蓄が取り崩されてなくなることを心配しているようですが、取り崩されても国内で使われる限り、使われたカネは現役世代と企業の貯蓄に移転するので、全体の貯蓄量は維持されます。実際に、2009年度の個人金融資産の現預金保有残高は798兆円で、10年前より53兆円増えています。
 個別の経験を社会全体にも拡張して考える人が、意外と多いのです(「日本を貧困化させる経済学の大間違い」41~42ページ)」

 これに関連してこの本には、「国債を出して民間からお金を吸い上げると、それは政府の財政支出となって再び民間に出ていく。そして、そのマネーは民間の貯蓄となる。だから、国債残高が増えると民間の金融資産も増える」という理屈も書いてある。

 「民間が国債を買うと、民間金融資産がその分だけ増える(「日本を貧困化させる経済学の大間違い」43ページ)」

 これらは、言われてみれば当たり前のことだけど忘れられることが多い事実で、重要な指摘だと思った。 

日本を貧困化させる経済学の大間違い