「中央公論」6月号で、伊藤惇夫さんが現在の「新党ブーム」について、過去の新党ブームについても振り返りながら解説している記事があった。
 「臨床政治学」という連載で、今回の題は「新党の「厚化粧」」。
 伊藤氏は、テレビに出てきて、時々面白いことを言う人だと思っているので、どんなことが書いてあるのか読んでみた。

 連載・「臨床政治学」、今回の題名・「新党の「厚化粧」」の内容の大ざっぱな流れ。
1 最近いくつか新党ができていて、「新党ブーム」が起きていると言える。
2 今から20年近く前に「第1次新党ブーム」があり、そこで誕生した新党には三つのパターンがある。
3 一つ目は「創業型」。その典型は「日本新党」。このパターンは、高い知名度や人気を備えた、ある種の「カリスマ」の存在が必要である。「日本新党」であれば、それは細川元首相。現在の新党でこのパターンに近いのは、渡辺喜美さんが党首の「みんなの党」である。「日本創新党」もゼロからのスタートなのでこのパターンに分類するべきかもしれない。だが、この党には「カリスマ」と呼べるほどの存在が見えない
4 二つ目は「分裂型」。大きな政党から離党、離脱、分裂して新党を立ち上げるというパターン。
 93年に小沢一郎さんたちが自民党を離党して結成した「新生党」や、ほぼ同時期に竹村氏などが結成した「新党さきがけ」などがある。このパターンは、しばらく経つとどこかと合併するケースが大半である。
 「たちあがれ日本」はこのパターンに分類されるかもしれない。
5 三つ目は、「合併型」。このパターンの政党には、保守合同によって誕生した「自民党」、小沢氏主導で結成された「新進党」、現在の政権与党「民主党」がある。
 このパターンの問題点は、「数の結集」が優先されて「寄り合い所帯」であるため、政策面でのすり合わせが「棚上げ」または「先送り」にされる傾向が強いことである。
6 過去の例を検証してみると新党の成功・失敗のカギを握る要因はいくつかある。
 それは、一定の規模・資金力・党首の人気や知名度・政策と理念などである。
 現代において特に問題なのは、政策・理念である。

 過去の新党に関する分析については、よくまとまっている文だと思ったが、将来についての予測がほとんど書いてなかったのが少し残念。「みんなの党」が20年近く前の「日本新党」近い存在なのではないか。という指摘が、唯一の現在の新党に関して評価を下している点である。
 ただし、過去の分析から類推できることもありそうなので有益な記事であることは間違いないと思う。
 が、「政策・理念が大事」という結論で終わっているところは、少し優等生的・建前論的で共感できなかった。私は、「メンバーの前歴・出身母体・選挙のスタイルなど」の方が大事なのではないかと思っている。
 

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