Voiceの6月号で「さようなら民主党」という特集が組まれている。
 記事の形式は、論文・インタビュー・アンケート・対談と一通りそろっている。

 論文は筆者が中西輝政さん
 題名は「「新しい保守」を打ち出さなければ未来はない」
 内容は、民主党(旧民主党)結成のときの流れ・民主党の資金の出所・民主党の失政と政治の対立軸・自民党凋落の原因など。
 印象に残った部分を引用する。

 民主党(旧民主党)のルーツについて
 「つまり、鳩山氏らが自民党出身であることから、「自民党を出た改革派による党」と思われがちだが、実際は旧社会党と、それに連なる人たちが大多数の党なのだ。この事をわれわれは、肝に銘じなければならない(115ページ)」

 これは、元民主党職員で政治評論家の伊藤惇夫さんも言っていることで、事実だと思う。

 民主党の基本的性格について。
「つまり民主党は、根っこのところでは左派系の大手労組が背後にいる、かつての社会党と本質をまったく同じくする政党でもあるのだ(115ページ)」
「少なくとも民主党という政党は、いまも党内では「事務方主導」であって、けっして政治家主導にはなりえないのである。このことは、マニュフェストの基になる「民主党政策集インデックス」をみれば明らかで、こちらはきわめて左翼色の濃い内容である(116ページ)」

 政策集インデックスというものがあるということをはじめて知った。
 見る機会があれば見てみたいと思う。

 小沢一郎さんについて
「結局、小沢氏は、人知れず復活・蘇生していた左派勢力の手のひらで踊っているピエロにすぎないというべきかもしれない(116ページ)」

 ここは、中西氏一流の表現だと思う。私が、一番印象に残った部分で、中西氏は、右派・左派という枠組みを非常に重視している人なのだと思った。

 新党について
「大事なことは、それぞれの新党が何を主張するかよりも、むしろ何を隠すか。まさにここをみていけばおのずと、その党が本物かは明らかになるだろう」

 これも、大切な指摘だと思った。
 ただし、それぞれの新党がどんなことを隠しているどんな政党なのか、というところまで踏み込んで書いてあるわけではなかった。

 自民党凋落の原因
「結論からいえば、自民党はマスコミ、論壇、学会、教育界といった、日本の知的インフラをあまりに軽視しすぎた。その背後にあったのは、「政治は集票マシンで票を集め、選挙で勝って権力を維持すればそれでよい」というシニシズム(冷笑主義)であった。これは田中角栄や小沢一郎の思想でもある」

 ここが、中西氏の中心的な主張だと思う。
 「日本は理念によって政治が動く国ではない」という意見もよく耳にするが、それこそが敗北したシニシズムだと言いたいのだろう。

 日本の保守の課題
「…いま日本の保守に求められるのは、マスコミを中心とした知的インフラの奪回である。とはいえいまさら、この強固な日本左派の「鉄の三角地帯」を突き崩すのは困難だが、ここにこそ問題があると、まず認識しなければ何も始まらない」

 「鉄の三角地帯」とは「マスコミ・学界・教育界」のこと。
 明快な問題提起である。

 結論
「日本の保守はもっと成熟せねばならない。何よりも、かつてなく多くの人びとを納得させる、新しい説得力を身につけねばならない。古い戦後保守とは違う、「新しい日本の保守」というスタイルが、いままさに打ち出されるべきときなのである

 問題提起としてはわかりやすいが、「「新しい日本の保守」というスタイル」というものがどんなものであるべきだと中西氏が考えているのかが書いてない。また、何をもって新しいと考えるかというところも書いていない。「ソビエト連邦の崩壊以降」を新しいと考えるのか、それとも「9.11テロ発生以降」を新しいと考えるのか、それともそれ以外のことを考えているのだろうか。
 中西氏が、こういったことについて書いた論文があれば是非とも読んでみたいと思う。が、中西氏自身まだ、少なくとも今は、それについてはわからないから書けないという状態なのかもしれない。


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