ネットで見ると、勝間氏の文章については、「どうも文章がよくない」「文章が下手だ」という悪口が出ている。私は、特に下手ともいいとも思わないが、時々妙に納得させられたり、引き込まれたりする部分がある。
 それはどうしてだろうか?と考えてみた。
 私が納得させられたり、引き込まれたりする部分を見てみる。
 例えば、次のような部分だ。

 ここで認識する必要があるのは、「人間はみんなずるく、利己的である」ということです。
 自分の時間は大事ですから、自分の時間を奪いそうなものは、なんとか人にやってもらおうと押しつけます。そうすると、時間の配分を折衝する際には、駆け引きが生じます。上司と部下の間もそうですし、チーム内の分担もそうです。
 やらなければいけないことの総量が決まっている場合、「誰が仕事の割り振りのコントロール権を持つのか」、「誰が先に、成果が上がりやすくて、時間が短くてすむ仕事をとっていくのか」という駆け引きが無意識にされているのです。(無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法84ページ)

 最初に太字で「本音ふうの大前提」が出てくる。多少くわしく定義すると「本当は当たり前の真実なのだけど、わざわざ口に出して言う人はそれほど多くない大前提」とでも言えばよいのか?とにかくそういうことを最初に掲げて、それに対してどうすればよいか?という進め方をする。
 この進め方というか流れの作り方が、非常にわかりやすいのだと思う。
 「それは、当然そうだけど、そういう前提があることは忘れることもある。それをきちんと意識してから、物事を考えた方がわかりやすい」というところから始まっている。橋本治さんなんかはそうかもしれないが、こういう書き方をする人はわりと少ないように思われる。
 勝間氏は、他の人が言ったことでも、こうした性格の言葉を評価する。例えば、橋本治氏の著作の題名である「上司は思いつきでものを言う」を至言であると言っている。
 この文章では、「人間はみんなずるく、利己的である」というとこから「出世の重要性」ということに話が及び、その理由として「立場の強い人ほど、駆け引きにおいて、より重要なポジションをつかむことができるからです」となる。非常に論理的でわかりやすい文章である。
 こうした流れをつくるとっかかりというか、文章の一番最初の方で、「本当は当たり前の真実なのだけど、口に出して言う人は少ない大前提」を出していいることで、その後の流れがうまくいき、わかりやすい文章になるのだと思う。


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