新幹線の走行に必要不可欠な架線や線路などの設備の状況を、実際に走りながら診断する新幹線車両として有名な『ドクターイエロー』。東海道・山陽新幹線内では923形と呼ばれる、700系ベースの車両が現役で走り続けており、今でも姿を拝めれば幸運であると言われています。

923形はJR東海とJR西日本がそれぞれ1編成ずつ、保有しています。主に臨時列車のスジを使い、東京駅と博多駅の間を各駅に停まりながら検測するパターンと、『のぞみ』のように主要駅以外の駅を通過しながら検測するパターンで月に数回程度、走っています。東海道新幹線から700系が引退し、最高時速285km/hで走るようになった現在でも唯一、700系顔として現役でこの区間を走行していますが、700系とほぼ同性能で、700系が引退した後の処遇はどうなるのだろうかと、脳裏を過ぎったこともありました。とりあえず現在はまだ走り続けていますが、今後更なる最高速度を引き上げる列車の増加で東海道新幹線のダイヤに対応できなくなった場合、引退という形に追い込まれてしまうことも否めない状況です。

この923形が引退した後、これに変わる車両は登場するのでしょうか。ところが、代替車両は必ずしも登場すると限りません。最近は検測機械が小型化され、わざわざ専用の車両を作らなくても、営業運転をする車両の一部へ搭載できるようになっているのです。例えば九州新幹線には、『ドクターイエロー』に値する専用の検測車両がありません。また、923形は、九州新幹線の走行に対応していません。ですが、定期的に線路や架線に異常がないかどうか、検測をしなければなりません。そのため、営業運転に使われる車両の一部に小型の検測機械を載せ、走りながら検測を行っているのです。

東海道新幹線や山陽新幹線に関しても、N700AやN700Sの一部編成に検測機器を載せ、営業運転をしながらでも検測を行える仕組みを作ることが予定されているようです。となれば、923形を置き換える代替車両が登場する可能性はどちらかと言えば低く、『ドクターイエロー』という検測車両の歴史は923形の引退で、幕を下ろす可能性が高そうです。

将来的に、『ドクターイエロー』はなくなるのか・・・