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Review

エンターテイメント評論(本、映像、音楽、お笑い…)



ハンコックの初リーダー作にして最高傑作。収録曲は全てハンコックのオリジナル。このとき若干22歳。


自伝の中で、ブルーノートからのレコーディングのオファーにあたって社長のアルフレッド・ライオンから「曲の権利を私たちの出版社に預けるだろう?」と言われるも、白紙になること覚悟で、自分の出版社に登録した(兄貴分ドナルド・バードのアドバイス)と答え、それでもレコードを出せた息詰まるエピソードが語られている。(後にそのことが莫大な富を産んだ…)



メンバーはtp…ハバード。まだ若くて瑞々しい演奏で、情緒も深く、素晴らしい。ts…デクスター・ゴードン。名の通ったサックスプレーヤーだが、ちゃんと聴いたことがあるのはこのアルバムだけ。ここでの演奏は本当に情熱的で素晴らしい。ハンコックとの相性も抜群だと思うが、他の共演は見たことがない…b…ブッチ・ウォーレン。このアルバム以外だと「Page one」で聴いたことがある。4ビートばかりでない変則的な曲も多い中、器用にこなしている。ds…ビリー・ヒギンズ…オールマイティなドラマーでけっこう前に出た演奏をしてバンドを引っ張っている。この後ハンコックとの共演を見たことがあるのはハバードだけで、まさにこのメンバーが一夜限りのVSOPという気がする。それほどにまとまりのある素晴らしい演奏。


「WARTERMELON MAN」ハンコックの看板曲。後年ファンクっぽいアレンジで演奏されることが多いが、このオリジナルのゆったりした感じが好き。


「THREE BAGS FULL」…ハンコックがシカゴからニューヨークへ出てきたときに3つのカバンに荷物をパンパンに詰め込んできたエピソードがモチーフ(たぶん)。変則的なイントロからなだれ込んでくるテーマがカッコいい。この曲やってみたかったな…


「EMPTY POCKETS」…怪しげなテーマからハンコックのおしゃれなブリッジを挟んだブルース。これはクインテットでやったが、音使いが正しかったか自信がない。


「THE MAZE」…このアルバムのハイライト。8小節の繰り返しのシンプルな形式ではあるが、演奏者のボルテージがどんどん上がっていく疾走感が凄い。特にデクスター・ゴードンとハンコックの終盤の掛け合いは何度聴いてもグッとくる(ここはバッキングも真似して練習した想い出が…)。各ソロの間に挟まれるハンコックのフレーズもおしゃれ。


「DRIFTIN'」…この曲もコピーした。テーマ・それぞれの奏者のソロと伴奏に哀愁が漂う。いい曲だな〜


ハンコックの演奏はソロだけでなく前奏、伴奏、間奏どれも完成度が高く、気合いの入り具合が伺える。何度聴いても色褪せない、素晴らしいアルバム。