ノラ-あるいは人形の家-

私が、この感想を書くのに何日かかったことか…舞台を2回、そして台本を何度読み返したことか…読み返すたびに印象が変わり、"ノラ"という人物が分からなくなる。そして夏川さんの演技でも"ノラ"の印象は変化していく。そんなプロローグ︎︎𓂃⟡.·


舞台での"夏川ノラ"は、明るくいようと無理な笑顔で振る舞っていた。どこか気持ちがなかった。空元気。声のトーンや表情から読み取れることができ、とても分かりやすく"ノラ"を表現していると感じた。ノラは若い女性ともあり、夫に甘えることも上手で可愛らしさもあった。ぷく顔は可愛かった… 


その一方で、シリアスなシーンにも、のめり込むことができた。焦りや怒り…悲しみなどの表現も"夏川ノラ"は上手だった。客席にいた私と目が合ったシーンが1度あった。彼女は、これから先に起こるであろう夫とのシーンを前に絶望を感じていた。もう過去には戻れないと…。今にも泣きそうな暗い表情に惹き込まれた。"ノラ"は"夏川椎菜"は、こんな表現をするのかと…


ラストのトルヴァルとの会話シーン… 。

"夏川ノラ"は、一定の声のトーンで、顔色一つ変えず真面目に真剣な目で語っていた。それだけの決意で、意志をもって彼に伝えていたのだと思う。そして、彼に怒りをぶつける"夏川ノラ"からは、心の叫びを感じた。それは今までの小さなストレスが積み重なったもの。自由になりたい、解放されたい"ノラ"の心からの願いと悲痛の叫び。


今、舞台上にいた"夏川ノラ"の演技を思い出しても泣けるくらい… 彼女の"ノラ"は素晴らしかった。

あそこまで役に入りきってるとは思わなかった。

これが私の"ノラ"として生きた"夏川椎菜"さんに

対しての想いと感想(*>△<)でした。


台本の"ノラ"

ここからは、台本を読んでの"ノラ"について… 。

まずは、"ノラ"が"トルヴァル"と20歳大学に入る前に結婚をして娘を出産していること。実の母は、幼い時に他界し乳母に"ノラ"は育てられた。父は人形のように"ノラ"に接していた。そこから分かることは"ノラ"は"母"からの本当の愛を知らない。実の娘である"エミー"との遊び方や育て方…どう愛情を注げば、母親になれるのか分からなかったと思う。困ったとき、"ヘレーネ"の名前を呼んでいた。


父は、人形のように"ノラ"を可愛がっていた。家という閉ざされた世界、内の世界、箱入り娘のように育ててきた。きっと"トルヴァル"と出会うまで"男性"と親密な関係になったことは20歳まで、なかったのではないのか?そこでまた"ノラ"は、人を愛すること、人を好きになる気持ち…などの理解が乏しく幼さが残ったまま結婚してしまったと感じた。それと同時に、父からの束縛から解放されたい、この"人形の家"から外の世界に行きたいと言う"ノラ"の希望と願いもあったと思った。


しかし、奇しくも"トルヴァル"もまた…父と似た存在だった。それでも、"ノラ"は彼に尽くした。

でも心のどこかで、彼に対してのマイナスな気持ちはあったと思う。友人との会話で『わたしの事、あいかわらずバカで単純で、何もできないって思ってるでしょ?』や「クソキモジジイ!モラハラ野郎」は彼には言えない心の気持ちだったと思う。


それに、"トルヴァル"と"ヘレーネ"とのコミュニケーションが少ないことも最後の結末に繋がっていると感じた。いつの時代も互いを理解し合うには、相手の気持ちを知ること、理解すること、話し合うこと、認め合うことが重要だと思う。そして、例えマイナスな部分であっても許せる気持ちなど…支えあっていくことが重要なのではないのかと思った。


"ヘレーネ"と仲良さそうに見えるが、彼女のことを

"ノラ"は理解していたのか?クリスマスプレゼントに渡したハンドクリームを受け取った彼女の表情は嬉しくなさそうだった。彼女の子が施設に預けられていることは知っていても、月1で会いに行っていることは知らなかった?少しの会話で相手のことが分かる内容も、この家では話されていなかったと感じた。そして… 娘との会話は、もっと少ない… 。


"トルヴァル"は、たしかにモラハラ夫だった。

プライドも高いし… でも、頭取になるほど努力したことは事実だと思う。必死に働き、家族のため"ノラ"のために生きてきた。ここまで積み上げてきた人生を壊されるのは誰でも嫌だと思う。それが愛する"ノラ"が起こした罪だったとしても。怒って暴言を吐いてしまう気持ちも理解できる、けれど…ここまで大きな出来事になる前に話し合っていれば

もっと違う結末もあったと思った。

日頃の会話って重要(´-`).。oO


でも、台本を読んでいると"ノラ"と"ランク"の会話は楽しそう。仮装パーティーのコスプレを"ランク"に見せようとするセリフで「これを見てください。ほらセクシーなやつ。着てみせましょうか?」

「似合わない?」など… この一連のやり取りからは二人の関係性を疑ってしまう。ただ、"ノラ"は"ランク"に対して"恋心"を抱いていなかったと思うと…

なんで、そんな、思わせぶりなことを言うの?好きになっちゃうじゃん!と"ランク"が少し可哀想に思えた。ちょっと変態だったけど… ランク( ´-ω- )


【誰よりも好きな人と、誰よりも一緒にいたい人

それは必ずしも、同じ人ではないんです。】


そう考えると、この言葉の意味は深いと思う。


"ノラ"は最後に「わたしが空っぽだったのは、アンタとパパ、二人の責任」と言っていた。これだけ聞くと、"ノラ"は人のせいにするんだと思った。

たしかに今でも、"ノラ"に私は、この感情を抱く。

でも、可哀想・孤独・自分勝手とかマイナスな言葉だけで彼女を決めつけたくない気持ちもある。

ここまで"ノラ"という人間形成をつくってしまった環境こそに問題と責任があると思った。それは、

"パパ"や"トルヴァル"周りの大人たちも含まれてはいるが、やはり"愛情不足"が大きな要因。


"ノラ"は本当に"トルヴァル"を愛していたのか?

《あたなは、いつだって"優しかったよ"》と優しいという単語を2回ほど口にしていたが、"優しい"だけが彼の好きなところだったのか… 優しい=好きにつながる理由も少し理解できなかった。まだ人を好きになるのには早すぎたのかもしれない(´・ω・`)


そして"母親"になるのも…。母親としての自覚は、彼女にはなかったと思う。育児をしている様子は

見られないし、それは自分自身が"母親"に遊んでもらった経験がないからなのは分かるが…。ヘレーネに家のことを任せて"ノラ"は何をしていたのか?

とても気になる部分だった。正しい妻に育たなかったと彼女は言ったが、自分自身で母親として育っていくのが"母親"の仕事で役目だと思った。誰しも子どもが生まれるまでは母親の経験はない。生まれた瞬間から母親になり子どもと一緒に成長していくものだと思う。その気持ちが"ノラ"には足りなかったし責任の重さを理解していないと感じた。


負の連鎖… 愛情欠如… 現代の言葉で"愛着障害"

"ノラ"だけが悪いとは思わない。だから、私は…

"ノラ"を抱きしめてあげたくなった。

孤独になった"ノラ"に本当の愛を知ってほしい。

お互いが支え合って生きることの意味を、そして

いつかまた出会いたい。


最後

ここまで読んだ人がいたら… スゴイデス(○・▽・○)

最後に、また夏川さんの話に戻ります(笑)

全体的にセリフの言い回しが上手だったと改めて思いました。気持ちが入っていないようなセリフ、

「働くのってサイコー」「余裕ができるっていいよね」の声のテンションとテンポが良かった。

ラストの「八年の間ずっと、ううん、もっと長いよね?」の「ううん」の少し息まじりな部分も見ていて惹かれた。声優さんとしての経験が活かされていると感じた。「誰にも!わたしをここへ縛りつける〈権利〉なんてない!」「わたしは〈自由〉だ!」

のシーン… 魂の叫びと心の叫びを感じた。今にも泣きそうな彼女の表情と彼に思いを訴えかけている場面、その迫力に圧倒された。


最後まで、"ノラ"として生きてくれて"ありがとう"!

夏川椎菜さんは本当に凄い役者さん(*´ ˘ `*)♡エヘヘ


本編がはじまる前、"トルヴァル"は"ノラ"がいなくなり、"空っぽ"になっていた。でも、"ノラ"は大量の紙袋を持って彼の前に現れた。これは夢か現実か?

みんなが幸せな人生になることを私は願っている…





2回舞台を観劇しました(*>△<)