よるのばけもの / 難しいことはいい。生き延びなさい。大人になったらちょっとは自由になれる
住野よる / よるのばけもの住野よるさん3作目の小説!冒頭の一文目「夜になると、僕は化け物になる。」から始まって、しかもこの表紙。帯外しちゃったけど、帯にもそれが書かれてて!完っ全に「ばけもの」を何かの比喩だと思ってた。「二面性で、夜になると人格が変わる」とか「夜だけ化け物のように恐ろしい精神」とか・・・。というか、比喩じゃなきゃ困ると思ってた(笑)個人的にバケモノとか妖精とかが出てくるストーリーってあまり気が進まないから…だけど序盤から主人公がばけものになる様子が書かれてる!例えば「目から黒い粒が一滴の涙の姿で零れ落ちた。一粒一粒、止まらない涙のようにそれは徐々に勢いを増し、やがて滝のように両目から溢れる。うぞうぞと蠢(うごめ)く黒い粒は顔を覆い隠し、首から胸、腕、腰、そして指の一本一本にまで流れ全身を覆っていく」(※6ページ引用)あとは~「裂けた口と八つの目、そして六つの足、加えて四本の尻尾」(※10ページ引用)とか。まさかの本当に姿形がばけものになってしまうとは、、、!うーん。。「この設定についていけるのか・・・」という不安を抱えながら仕方なく読み進める(笑)が!気がつくとこの世界から抜け出せなくなっていて最後の一文で号泣。この本にすごく勇気をもらった(;;)舞台は中学校。テーマは「いじめ」で、「本当の自分」とか「空気を読めないと嫌われる」とかってワードが何度か出てくる。読んでいるとモヤモヤモヤモヤ。自分が被害者にならないためには加害者にまわるしかない、狭い教室の小さな社会で、主人公もモヤモヤしながら「ちゃんと」周りに合わせて過ごしていく。教室では彼女のものを踏みつけるのが「常識」で、彼女の消しゴムを拾うのは「裏切り」になる。無視されても、ノートに落書きをされても、傘を盗まれても、ずっと、ずーっとニコニコしている彼女。その笑顔が逆効果でいじめは加速・・もやもやクラスメイトの大切な本を外に投げ捨てた彼女だから、クラスメイトの頬を突然ビンタした彼女だから、「いじめられて当然」の彼女。でも彼女の行動には意味があって。それが終盤で明らかにっ!彼女の「笑顔の秘密」が分かったときも、涙が止まらなかった、小説は昼と夜が交互に描写されているんだけも、とにかく昼のターンが息苦しくて・・・はやく夜(ばけもの)になってくれ、と思いながらページをめくっていた(TωT )夜はばけものの姿になるんだけど、私の「この設定についていけるか・・・」という不安はどこかへ吹き飛んでいて(笑)違和感なく、良い意味でファンタジーチックでもなく、すんなりと、ばけものになる主人公の世界にのめりこんでいた。主人公が中学生なりに「本当の自分」とは何か、何が「正しい」のか、悩んで迷って葛藤して揺れ動いて、最後の最後に行動に移す・・・!いじめが題材の小説は今までいくつか読んできたけど、住野よるさん、さすがですね。。!他のとはひと味、ふた味違う!いじめや中学生の集団的心理が「現実」的でかなりリアルに描写されているけど、そこにバケモノという「非現実」をめちゃくちゃナチュラルに組み込んできて、脳内でもばっちり映像化された。小説に出てくるいくつかの謎が解明されていない!とか、主人公の行く末は一体どうなるの?とか、ネット上ではちょっとした後味の悪さ?のようなものが飛び交っていたけど、私はこういうの好き。住野さんが「どうだった?」って問いかけてきているみたいで、ついでに「ちょっと考えてみてよ」って宿題を出されているみたいで。多分、読んでいる人によって結末は様々だと思う。もちろん私は、いや多分みなさんも、主人公の行動がきっかけでいじめがなくなることを祈ってますよね。最後に工藤が主人公を睨み付けて机を離してしまったけれど、「何が正しいのか」考えて考えて導き出した主人公が自分で選んだ道なんだから、それが正しかったとしても正しくなかったとしても、悩んだことに、考えたことに、自分の答えを行動にしたことにきっと意味があって。主人公が中学・高校・大学を卒業して社会に出たときに。いつかまた悩んだときに、迷ったときに、またバケモノになったときに。大きな壁に直面したときに。あのとき彼女に向けた「おはよう」がきっと将来、壁を乗り越える力の糧(ヒント)になる。もしかしたら今度は工藤が、元田が、矢野がバケモノになるかもしれない。誰にでも「ばけもの」になる要素があって、それは私自身も同じで。そんなときに「本当の自分」を一生懸命探して、迷って、間違えて、きっと最後の一文に繋がれば、それだけで上出来なんじゃないかと、私は思います。ということで!たらたらと書いてしまったけど、これは中高生にぜひ読んでほしい作品ですね・・・!どうしてもいじめがテーマなので暗いイメージだけど、主人公が日々葛藤しながら過ごす痛みが嫌というほど伝わってきて、でもそれってほとんどの人が1度は経験することだと思うので、共感できるんじゃないかなぁと!「涙なしでは読めません!」とまではいかないけど、深く考えさせられ、スッと涙が流れてしまう内容でした。