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本の感想です♪What you are is what you read♪









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『悪人』by吉田修一

海外旅行の往復航空機の中で読みました。
行きに上巻と下巻の半分、帰りに下巻の半分。簡単に感想をメモ。

愛とは何か、悪とは何か、怒りとは何か・・・本来曖昧で、
感覚的なものですが、それがどれだけ曖昧なものかがストレートに書かれている話だと思います。

松本清張のような「殺人犯にもそうせざるを得なかった社会的理由がある」、
という小説かと思ったら、そうではなかった!

清水祐一が石橋佳乃を殺した本当の理由も、馬込光代と祐一が本当に愛し合っていたのかも、
実はよくわからない。結局はっきりとは書かれていないのに、そこはかとない孤独感や
恐怖心のようなものが伝わってきます。
浮き彫りにされているひんやりとした得体の知れないこの感情は、一体なんだろう。

祐一が親に捨てられた幼少体験や、光代が進んで祐一と一緒に逃げ回ったことなどから、
幸の薄い青年と女性の純愛ストーリーのように受け取ることもできるけど、それより
興味を引かれたのは、登場人物の物事の捉え方です。

きちんと育てられたはずの佳乃が、男性をまるでアクセサリーのようにしか見ていない。
金持ちの増尾はとことん他人を見下している(たぶん自分自身も大事にしていない)。
佳乃の父親は、犯人を激しく憎むけれども、それはあまり長続きせずあきらめて立ち上がる(ように見える)。
祐一の祖母にとっては、孫のことよりも悪徳商法の取立人をどうするかの方が、一大事のようである。
・・・
それやこれやで、登場人物たちが意外とドライな印象を受けた。
祐一がいよいよ捕まるとなる頃には、読んでいる方も殺人事件自体が、本当に重大なことだったのだろうかと、などと思ってしまうくらい。
そのタイミングで、一番ウェットだったと思っていた光代のラストの独白が、どーんと心に響きました。
世の中はこんなものなのだろうか?それでいいのか?と憤りつつ、自分自身も「こんなもの」の
一員になっているかも(きっとそうだな)という恐ろしさを、じんわり感じさせられます。

映画のおかげで読む前に犯人が分かってしまっていたので、
上巻の半分ほどまでは少しダレたのが、残念でしたが、インパクト強い作品です。

悪人/吉田 修一

¥1,890
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『「ナリタ」の物語 1978成田開港から』by 大和田武士、鹿野幹男

 成田空港開港30周年にむけて、朝日新聞千葉版に掲載された「30年の物語」
(2008年2月~5月)に加筆しまとめられたもの。一読すれば、大雑把に、当時の
様子がわかる一冊。(ちょっと高いし、誤植があるのは残念。)
 
 空港の建設予定地が三里塚に閣議決定された66年以降の、新東京国際空港
公団(現成田国際空港公団NAA)と、農民や学生からなる空港反対同盟との
激しい攻防の歴史が書かれている。未買収地の強制代執行(行政が強制的に
家、土地、家畜を没収すること)を巡って死者を出すほどの争いが繰り広げ
られ、開港から30年経った今も空港は未完成である。
 
 国民の合意にもとづく国家事業として空港建設(土地の収用)を推し進める
側 v.s. 戦後苦労して開拓した土地を手放さない農民という構図だけれども、
この問題は単なる土地所有云々の問題ではないようだ。
 「戦争が起きたら爆弾が落とされる」
 「騒音で牛の牛乳が出なくなる」
と言って村は大騒動になったとのこと。戦後20年足らず、まだ飛行機に乗って
海外旅行にいくなんてことが程遠かった時代の農民達が、閣議決定にどれほど
の恐怖を覚えたか。それを思うと、胸がとても苦しくなった。


「ナリタ」の物語―1978年開港から (ふるさと文庫)/大和田 武士

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『差別と日本人』by 野中広務、辛淑玉

被差別部落出身の野中さんと、在日朝鮮人である辛さん
との対談集。
おふたりが指摘するように、直接関係のある人以外は
なかなかとっつきにくく、それゆえ根の深い差別問題。
そこに日本国政府がどのように取り組んできたのかが、
わかりやすく書かれている。

わたしは著者のおふたりに詳しくなく、ついでに差別問題
にも詳しくないのだけれど、導入としてはかなり良い本なの
ではないかと思った。

与党議員としての豊富な経験を踏まえた野中さんの発言は
実に淡々としていて好もしい。会話の合間に挿入されている
辛さんの解説は、日本における被差別階層(という言葉があ
るのかどうかわからないが、この本を読んでいるとそういう
のがあるように思えてくる)に関するダイジェスト版になっ
ている。

外交問題としてではなく、差別問題という観点から北朝鮮
拉致問題や戦後未処理問題を考える、という観点が印象的だった。


差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)/辛 淑玉

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