身体の可能性を引き出すプロ:1万件以上のサポート経験が導くコンディショニングの真髄

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延べ1万件以上のサポート実績を持つ理学療法士・西本昌平が、10年以上の経験を踏まえて「選手が望む未来を実現」をモットーに、本ブログでは、プロアスリートのコンディショニング知識や成功事例を発信し、あなたの身体への気づきをサポートします。

〜Chaitow & DeLany理論を臨床にどう活かすか〜

はじめに

可動域が狭い…」「肩が上がらない…」「膝が曲がらない…」
臨床で毎日のように出会う、関節可動域(ROM)制限の問題。

その原因は「関節が硬いから」「筋が短縮しているから」だけではありません。
むしろ、“なぜ身体がその可動域を制限しているのか”という問いが大切です。

 

本記事では、
関節可動域制限の“関節包内”と“関節包外”という視点から、特にLeon Chaitow & Judith DeLanyの理論に着目し、臨床での考え方とアプローチのヒントを共有します。

 

 

可動域制限は「どこから来ているか」を見極めよう

可動域制限の原因は大きく以下に分類されます。

分類

原因

主な例

関節包内

(intra-articular)

関節包の短縮,滑液の減少

関節内癒着など

拘縮、関節炎、OAなど

関節包外

(extra-articular)

筋・筋膜の短縮,滑走障害,神経の滑走障害など

トリガーポイント、筋膜癒着、神経モビリティ低下

 

ポイント:

「関節そのものが悪いのか」
「周囲組織(筋・神経・筋膜)が原因なのか」
をしっかり評価し、優先順位をつけて介入することが重要です。

 

 

文献から見る関節包外アプローチの重要性

● Butler(2000)

末梢神経の滑走性の低下は、筋緊張やROM低下を引き起こします。
ULNT(Upper Limb Neurodynamic Test)などの神経系評価を通じて、
神経の“動きの悪さ”がROM制限に関与しているケースも少なくありません。

 

▶︎ 神経系の可動性回復もROM改善に必須!


● Steccoら(Fascial Manipulation)

筋膜は、筋と筋の間を滑走させる“潤滑ネットワーク”
この滑走性が失われると、正常な運動連鎖が乱れ、結果的に可動域制限を引き起こします。

 

▶︎ 筋膜の滑走改善(IASTMや筋膜リリース)は、ROM改善の有効な手段!


● Chaitow & DeLany(Clinical Application of Neuromuscular Techniques)

ROM制限には機能的な要因(筋過緊張・神経抑制・筋膜の緊張)が関与していることが多く、それらを評価・解除することで可動性が劇的に変わる可能性があると述べています。

 

ここからは、このChaitow & DeLanyの理論と手技を深掘りしていきましょう。

 

 

Chaitow & DeLanyの理論とは?

 理論的背景

理論名

  内容

神経筋機能の統合

  神経と筋の協調性の乱れがROMを制限する

筋膜の連続性

  滑走障害が全身に影響する可能性あり

防御反射

  痛み・不安により筋緊張が高まる(身体が“守っている”)

呼吸・姿勢との連動

  呼吸の浅さが体幹安定性や可動性を妨げることも

 

「構造」よりも「反応」に注目するのが、Chaitowの考え方です。

 

 

評価方法:どこに原因があるかを見極める

◎ Chaitow流 5つの評価ポイント

 

視診:姿勢・左右差・アライメント

触診:筋の硬結・滑走性・皮膚の状態

可動性テスト:終末感・自動 vs 他動の違い

機能テスト:筋収縮のタイミング・協調性

神経系チェック:ULNT、SLR、呼吸の質など

▶︎「どこが硬いか」よりも「なぜ硬いか」を探る評価が重要!

 

 

アプローチの実際

トリガーポイントセラピー

圧痛点や関連痛の解消

呼吸と組み合わせて過緊張の緩和

 

筋エネルギー法(MET)

軽度の等尺性収縮で、反射的弛緩を誘導

PNFとも親和性が高く、ROM改善に◎

 

筋膜リリース

滑走障害の解消

静的保持・深層筋膜への介入が有効

 

ポジショナルリリース

快適位で保持することで筋紡錘を抑制

慢性疼痛・頚部・仙腸関節などに活用しやすい

 

 

臨床応用:ROM制限のパターン別アプローチ

例:股関節屈曲制限の場合

原因

  評価所見

  Chaitowの介入

腸腰筋短縮

  骨盤前傾・胸式呼吸

  MET+腹式呼吸訓練

TFLの滑走障害

  立位での骨盤の左右非対称

  筋膜リリース(前外側部)

梨状筋TrP

  坐骨神経様の放散痛

  TrPアプローチ+MET

 

おわりに〜“ROMは構造ではなく反応”という視点〜

「硬いから動かない」のではなく、
身体が今、動かさない選択をしている」という見方を持つこと。

これこそが、Chaitow & DeLanyが提唱する“統合的な理学療法”の本質です。

若い理学療法士や学生の皆さんには、ぜひ構造だけでなく
神経・筋・筋膜・呼吸・心理的要因まで含めた“多角的視点”を身につけてほしいと思います。

ROM制限の裏にある“身体の声”を聴けるセラピストへ。
その第一歩が、今日の評価と介入だと考えています。