いつものことながら、とりとめない話です。
絵本を手にしたら、
ささやかな発見がありました。







『空とぶ船とゆかいななかま』
バレリー・ゴルバチョフ 再話/絵



昔、王さまが


空とぶ船に乗ってきた者と
王女を結婚させよう


とお触れをだします。


「世界一のまぬけ」が
老人の教えで空とぶ船を手に入れ



七人のなかまの助けをかりて
知恵をつけ
難題を解いて
王女とむすばれます。







これね、
ウクライナの昔話なのだけど


読んだことあるなぁ。


ごそごそ書棚を探したら
古い本からでてきました。




『6人のけらい』 グリム兄弟



グリム兄弟が採集した
ドイツの伝承にありました。

人数はちょっと違いますが


ウクライナの昔話とグリム童話、

驚くほど

仲間の摩訶不思議な力が似通っているのです。


その①


この世のあらゆる音を聞く地獄耳と「聞き耳」


その②

手足をのばすと世界一高い山より高いのっぽと

ぴょんと跳ねると遠くまで「ひとっ飛び」



その③

飲み食いして千倍の大きさにふくれる山のような男と

たらふく食べる男と湖も一口で飲み干す男


その④

世界の果てのアリまではっきり見える男と

千キロ先の獲物をねらえるお見通しの男


その⑤

眼力が強くてみたものを木っ端微塵にする男と

一本一本が兵隊になる薪をもつ男


その⑥

熱さを寒さに感じる男と

撒くと雪を降らせる藁を持つ男。

主人公を炎の試練から救います。






この不思議な力を持つ仲間達が

魔法使いや王の難題を解き

二人の仲をとりもち
王位を継承させます。



ドイツとウクライナ、
違う国だけれど
人の往来があった証拠ですね。

これほど似通った昔話が
今も語り継がれていることに驚かされました。





飯豊道男教授によると、

『6人のけらい』は遡ること14世紀のアーサー王伝説にも千里眼や耳がいい男、大食漢がでてくるそう。


『アーサー王その伝説』より


一番古い文献資料は、なんとギリシャ神話のアルゴ号の遠征。

舞台は黒海周辺、ジョージアの西とのことで、そう、ウクライナに近いのです。


画像はお借りしました。



昔はアルゴ号座という大きな星座にもなっていたそう。
今は同時には見えないので3つの星座に分けたとか。


画像はお借りしました。






漫画『ヒストリエ』岩明均




この歴史漫画、『寄生獣』の作者だけあって描写が血なまぐさい迫力があり、想像力を抑えて読んでいますが、読みごたえがあります。
ご紹介ありがとうございます!




スキタイ人の少年が登場し、ギリシャで学んだ歴史や神話を黒海近くに住む人々に語り伝えます。
聴衆も、自らの経験にてらしながら食い入るように聞きます。







紀元前に周囲に恐れられるほど強かった騎馬民族スキタイ人が住んでいた地域は、今のウクライナにも重なります。


この漫画が資料に基づいた想像の産物とはいえ、ある物語がその地の闘いの歴史や伝説的な活躍をした人物を織り込みながら千年以上の長い時を経て語り継がれる。


そこには語り継ぐ人々のその時々のさまざまな願いや祈りも込められていたのでしょう。




















もう一冊。






『ペンギンの憂鬱』アンドレイ・クルコフ




かわいらしい表紙絵にだまされましたが、
ソ連崩壊後のウクライナを舞台にしたブラックユーモアのきいた犯罪小説です。





主人公の売れない作家ヴィクトルは
キエフ動物園で飼えなくなった
皇帝ペンギンのミーシャを引き取り
一緒に暮しています。


ミーシャは孤独で、
馴染んだ南極で暮らせないゆえに
憂鬱症になっています。

生きる目的がみつけられない
ヴィクトルの姿に重なります。





生活の糧のために書き始めた
まだ生きている有名人の死亡記事。

なぜか書かれた人が次々に死んでいき、 
あれよあれよと
きな臭い事態に巻き込まれていきます。




どういう状態を「正常」と呼ぶかは、
時代が変われば違ってくる。
以前は恐ろしいと思われていたことが、
今では普通になっている。





ミーシャの体が弱り
心臓移植の手術が必要になったとき、

ヴィクトルは
いつしか大好きになっていた
ミーシャのため、
代わりの小さな心臓を得るか、
ミーシャの生命を諦めるか決断を迫られます。



この小さな世界はあまりに脆くて、
何かあっても、
とてもじゃないが守りきれないように思う。


それは武器を持っていないからでも、
カラテの技を知らないからでもない。
ぜんぜんそうじゃない。


ただ俺たちの世界自体が
あまりにも壊れやすいせいなんだ。



クリマスマスなのに逃避した先のダーチャ(別荘の農園)で、ミーシャと男二人と少女で慎ましい食事を囲む描写が心に残りました。


赤々と燃える暖炉に新しい薪をくべる。
あたりは静かで、
ごくたまに薪がはぜる音が聞こえる。


他愛ない場面だからこそ
幸せの儚さを感じさせました。



さいごに
ヴィクトルが
周囲の思惑に翻弄されながらも
瀬戸際で意地をみせていく姿が
たくましく思えました。




だれにとっても、そう、自分にとっても、
大事なのは生き残るということ。
どんなことがあっても
生きていくということだ。







1996年に出版され、20カ国で翻訳されるベストセラーです。