表紙がなんか純愛小説みたいですが、数学小説です。
お料理小説や書店・本の小説以外に好きなジャンルで数学小説が挙げられます。
青の数学は特に好きで何回か読み返しては静かに蒼い炎をたぎらせるみたいな感じ。
今回の小説は野生フロンティア文学賞受賞作です。
簡単に言うと、天才的な数学の目を持つ男と、そこまでではないけれどやはり才覚のある男と女の大学入学からのお話。
いわゆる特別推薦の数学の申し子の3人は入学初日から個性が際立ちます。
そして合間合間にはさまる十数年後。
私はこの美に惹きつけられるがごとく数学に魅せられた彼らの話の対極にみる、ある病のリアリティに目がいきました。
つながりがなかったり孤立感を深める人がかかり、処方箋は人薬と言われる病。
一見ほかに原因をみる人がほとんどなのだけれど。
天才という言葉で相手をくくり、自分の劣等感に蓋をする。
相手のもつ自分の欲しい特別な能力に目をうばわれるからこそ、相手を遠ざける。
そして天才はいつだって孤立する。
おなじ人間で、おなじように感情も人恋しさも持っているのに、
たったひとつの能力だけで、ときにまるでオモチャのように振り回される。
特別扱いなど求めていないのに、ただ普通にみんなの仲間でいたいだけのに。
人の世はどうしてこんなに生きづらいのでしょうか。
好きなものを手放せないまま死んでいく
それはほんとに幸せなことなのか
なんてことを考えた一冊でした。
親友の遺したノートには未解決問題の証明が――。数学の天才と青春の苦悩。
特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。
眩いばかりの数学的才能を持つ瞭司に惹きつけられるように三人は結びつき、共同研究で画期的な成果を上げる。
しかし瞭司の過剰な才能は周囲の人間を巻き込み、関係性を修復不可能なほどに引き裂いてしまう。
出会いから17年後、失意のなかで死んだ瞭司の研究ノートを手にした熊沢は、そこに未解決問題「コラッツ予想」の証明と思われる記述を発見する。
贖罪の気持ちを抱える熊沢は、ノートに挑むことで再び瞭司と向き合うことを決意するが――。
冲方丁、辻村深月、森見登美彦絶賛! 選考委員の圧倒的な評価を勝ち取った、フロンティア文学賞3年ぶりの受賞作!