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『もっ、もっ、もっ・・・。』



望月さん、と言おうとしたが、
驚きで言葉にならない。



『・・・俺はウシか?』



望月さんは椅子に座り、

机に頬づえをつきながら、

慌てているあたしを面白そうに眺めていた。


『電気もつけないで何やってるんですか?』


ようやく言葉になった疑問を投げかけると、

望月さんはフっと笑って



『たまにね。』



と、一呼吸おいてまた言葉を続けた。


『暗い中で、考え事したい時もあるのよ。 
 お子様には分からないだろうけどね。』



『・・・・・・・。』



確かに、望月さんの言葉は理解出来なかったが、
あたしのことを

子供扱いしている事だけは理解出来た。


『はぁ・・・。』


微妙に距離を感じながら、

手に持っていたオレンジジュースを机の上に置く。


すると望月さんが、

思い出したように口を開いた。


『今日一人なんだ。』


『え?』


『初めてじゃない?一人でお店はいるの。』


うわー。


わー。

わー。

わー。



あたしの中の100人くらいが、

心の中で大騒ぎ。

そんなところに

気がついてくれているとは思わなくて、

さっきの子供扱いに対しての怒りはどこへやら、

思わずちょっと嬉しくなった。


『よ、よく知ってますね。』


望月さんは頬づえをついていた手を頭に乗せながら、


『他の子の事は分からないけどね。
 由香は、特別だから。』



マジで鼻血出そうになった。


続く

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