どうしたらえぇん?

    ―明るく楽しい認知症介護のために―


<第8回>



dou25
「だれ?」友人が分からない ―入院中のこと―

生まれた時から瀬戸内の温暖な広島の海べりの同じ町にずっと住んでいるので、元々学校時代の昔からの友人が近くに多く、しょっちゅう訪ねあったり定期的に食事会を開いたりしていたのだが、最近は段々と出ることを億劫がった。

その矢先に入院、友人の方がお見舞いにもたびたび来てくれた。妹から友人がお見舞いに訪ねて来てくれたと聞いていたのに、こちらには何も言わないので、「今日は誰も来られなかったの?」と尋ねても「分からん」と言うだけ。

dou10 Kさん

こちらから「今日はKさんとUさん、Tさんが来てくれたんでしょ」と言うと、「あー、そうじゃった。KさんとUさん、Tさんがお見舞いに来てくれちゃった」と言う始末。

dou27 Uさん

折角見舞いに来てくれても、誰だか分からないのでは来てくれた人に悪いなとは思うのだが病気だから致し方ないことではある

Tさんdou30

広島弁では疲れたとか疲労した時に「たいぎぃー」と言う。日ごろからよく「たいぎぃー、たいぎぃー」と言っていたおばあさんだが、入院初期にはベッドに横たわりながら「たいぎぃー、たいぎぃー」と、この言葉を連発して叫ぶのには見舞いに来る誰もが閉口した。

この他にも「イタタッ、…」「目が回る」と含めてこの3つの言葉を使い分けて連呼して叫ぶのが入院初期の顕著な特徴だった。今振り返ってみると、思いもよらぬ環境変化と体調不良を訴えるために自然に出たのがこの3つの言葉に集約されていたのかとも思う。



梨は好物の一つで、差し入れに持っていった好物の梨を「美味しい」と食べながら、「これは何かいねー」と尋ねてくるのである。

時間とか日にち、曜日などを尋ねてくるのだが、一度教えても何度も問い返すのだ。そしてそれは酷い時には数分おきに。どうも認識できないことが増えてくるのがこの病の一つの特徴ではないだろうか。


美味しいと 言いつつ食べし 梨の実を これ何とは あ~記憶なし 

mytty7 心の一声)dou13