どうしたらえぇん? ―明るく楽しい認知症介護のために―
<第4回>
無表情が危険なサイン ―うつ病から認知症へ―
本人が「うつ病じゃないかね?」と言い出し始めたのは昨年秋辺りのこと、はじめは「本人が言うくらいならうつ病ではないのでは?」と周囲はみな思っていた。
それでも、本人は「とにかく連れて行って欲しい」とのことで弟が連れて行ってくれ、診察結果は軽いうつ病だということ。
そして、今年初めあたりから目に見えておばあさんにうつ症状が出てきた。普段の様子はあまり変わらないように見えたが、表情がなくなってきたのは気づいていた。
それでも、まだまだ普通に暮らせていたのだが、今年3月ごろにはなんとなく表情が暗くなり始め、その後は無表情になってきた。
時折、外出から帰った時に、部屋の前の廊下から「誰が来たのか?」とばかりに覗き込む姿には無表情だけに氷のような目でにらまれる感じがして「ぞっ」として怖さを感じると嫁さんが言うのだ。
そう感じたのは実は私も家族もそうだし、言わないがわが家を訪ねてくる人もおそらくそう感じていたはずだ。
症状が進むと笑う、楽しそうにする、泣く、怒るなどの表情が少なくなってくる。特に笑う、楽しむ方の表情は少なくなる傾向がうつ病もそうだが認知症にはあるらしい。
保護者から子どもへ ―猫好きが一変―
わが家ではおばあさんは昔から猫好きで、亡くなったおじいさんは犬派だと思っていた。近所に捨て猫があるとおばあさんがえさをやるのでつい居ついてしまう、知らぬ間にわが家の一員になっていたものだ。
それでも、数年もすると猫は当然年を取るのが早いので老いてくる、猫は死に際になるといつも姿を見せなくなる。そんな繰り返しでわが家に居ついた猫はこれまで10匹はくだらないだろう。ホントに猫好きなのだと思っていた。
しかし、娘・Eちゃんが懇願して「高校が決まったら飼ってもいい」という約束をして、昨年1月に友人から生まれたてのアメリカンショートヘアーのオス猫を譲り受けてきた。
わが家では久しぶりの猫との同居だったので、YUと名づけて家族は「YU、かわいい~!」と連発しては先を争ってかわいがったが、どういうわけかおばあさんは寄り付くこともしなかった。昔は猫をみるとやたらと猫かわいがりをしていたのに…??
今考えてみるとどうもこの頃からうつ傾向が出てきていたのかもしれない。自分がかわいがる、相手をするというのではなく、いつの間にか相手にしてもらいたい立場に変わったからなのだろうと思い当たったのだ。
昔は 猫かわいがり 今 かわいがられたい おばあさん