よく考えると怖い話 vol.21 | Let's easily go!気楽に☆行こう!

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映画、写真、B級グルメ、格闘技、そして少しばかり日常を語る雑記帳です。

俺はその日も残業だった。

疲れた体を引きずり帰路に着く。

地下鉄のホームのベンチに鞄とともに崩れるように座る俺。 

終電の案内がホームに流れる。

ふと見渡すと、ホームには俺一人。 

そりゃあ連休中日に深夜まで働いてるやつなんか

そうそういるもんじゃない。

フッと自嘲の笑いも漏れるというもんだ。

が、そのとき、ホームへのエスカレーターを

小さな子供が駆け下りてきた。 

えっ?とよく見るとそのすぐ後ろから母親らしき人が下りてきた。
 
「○○ちゃん、ダメ!母さんと手をつなぐのよ!」
 
3才ぐらいか。まだ少ない髪を頭の天辺で

リボンみたいなので結っている。

俺の目の前で母親は女の子に追い付き、しっかりと手を握った。

到着案内板が点滅し、電車の近付く音が聞こえてきたので

俺は立ち上がろうと…

そのとき、その母親が女の子の手をぐいと引っ張りホームから消えたんだ。
 
いや、あまりに一瞬のことで訳も解らず俺はホームを見回す。

確か、非常停止ボタンがどこかに…ダメだ、間に合うわけない!

こうなったら俺が飛び降り、親子をホーム下に押し退けるんだ、

うん、それしかないっ!
 
「あんた、何してる!」

背後から声が。駅員だった。

「お、女の人とこ、子供が今飛び込んだんですっ」

焦って噛みまくる俺。

そこへ電車が入ってきた。あぁ、遅かった。 

涙が溢れる俺。身体の震えが止まらない。

俺の顔を黙って見ていた駅員が言った、

「私も初めはびっくりしたもんでしたよ。」








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