行き場のない瞳を僕に向ける
何も見ていないの?
何かを 見ているの?
“気狂いサラ”
人は彼女をそう呼ぶ

冷たい雨がそぼ降る中
金切り声を上げて走り出す君は
腐ったあいつ等にはわかるはずもない
あの、ばかばかしいほどぞっとする
この世の不条理を見つけたからなんだね
そうなんだろう? 君はうそなんてつかない

頬を伝う滴に体温を任せながら
雨の中を走って行く彼女
サラ
疾る君を止めやしないさ
僕もゆく
一緒に堕ちよう あの深みへ

壊れた瞳を僕に向ける
ありがとう 君は
自分も見失う程に僕を愛してくれた

(真島誠『蝉丸』新風舎、1995年、41頁)