イライラは他人に伝染する


「まわりのことがピリピリしていて、生きた心地がしない」などというセリフをよく耳にするものです。

 たしかに、相手がイライラしていると、こっちまでイライラで伝染してきます。



 しかしそれは本当に相手がイライラしているからだけなのでしょうか。相手がイライラする理由をこっちもつくってはいないでしょうか。


 人間は波長である、といわれます。人はその人その人それぞれに、ハーモニーを持っています。


 元気な人は元気なハーモニー、悲しい人は悲しいハーモニー。イライラしている人はイライラした雑音混じりのハーモニーを奏でています。人は相手のハーモニーを聞いて、それに同調する性質を持っています。



 人生をひとつの交響曲にたとえると、あなたはその曲を演奏する指揮者の役割を担っています。あなたの指揮が乱れると、ハーモニーは美しさを失い、観客に不快な思いをさせてしまいます。



 あなたは自分の心の状態にいつも気を配り、音が乱れていないかを監督する必要が有ります。これを仏教では「調心」と呼び、「調身」(姿勢を正すこと)、「調息」(呼吸を整えること)と並び、坐禅の三大要素としています。


 まず背筋をすっと伸ばし、おだやかに呼吸を整え、心の総監督となりましょう。


 たとえば、不機嫌な人をまえにしたとき、「ああ、この人はハーモニーが乱れているなあ」と冷静に受けとめ、自分は自分のことに専念しましょう。



 こちらのハーモニーが相手の不協和音を超えて美しければ、こちらに同調して、自分のハーモニーも整えにかかります。あなたは雑音に左右されることなく、気持ちよく指揮棒を振ればよいのです。


これが人生を制する要ともいえる技術です。