一日一止。ちょっとでも動きを止めてみる

 怒りやイライラが生じているとき、私たちの脳は膨大な情報量を処理することで、てんやわんやです。そんな状態になると、肩こりや食欲不振、不眠など、身体にまで不調があらわれます。そんなとき、脳のてんやわんやを止めることで、イライラが解消されるときがあります。

 一日一止。

「いちにちいっし」と読みます。一日一回止まれば、正しい生き方ができるという、中国の言い伝えです。「一」に「止」を合わせれば、「正しい」となるなどとおっしゃる方もいます。うまいこと言いますね。

 脳の動きを止める技法の代表選手が坐禅などの瞑想です。

「動いている状態では、道を求める心は破られる」と『天台小止観』という書物にも書いてあります。

 現代社会では、動かないと何も解決しない、という考え方が一般的ですが、動きを止めるということは、実はたいへん意味があることなのです。

 みなさんは坐禅の体験は少ないと思います。

 しかし、一度、ご自宅で五分間、静かに坐ってみてください。

 たった五分間の間にも、人間がどれほどの情報が駆け巡っているか実感として得ることができるでしょう。

 「あれが食べたい」「あの人はいま何をしているだろう」「明日、会社に行くのが憂鬱だ」など、とりとめのない記憶の断片と妄想が、ものすごいスピードで回流しています。

 放ったらかしにしておくと、脳はどんどん暴走して、私たちを苦しめます。ですから、どうぞ「無」になれる時間を強制的につくってみてください。

 植木の水やり、犬の散歩、写経、ストレッチ、なんでもかまいません。

 たった五分でもすべてを頭から放念すると、次の五分間がとてもリラックスした時となることに気がつくでしょう。