ある山寺でA、B、C、Dの四人の僧侶が集まって、無言の修行を修めることになりました。


所が、夜がふけて来て、座禅をしている四人の前にあった燈火(ともしび)の油がきれて、火がだんだん消えかけてきました。


そこでAの僧侶が、大声で給仕の小僧を呼んで、


早く燈火の油をつぎ足しなさい、火が消えます。


と言いました。それを聞いたBの僧侶が、大声で、


今は無言の修行をしているのだ。声を出すとは誠にけしからん。


と、咎めました。するとCの僧侶が、


そう言うお前も言葉を出しているのではないか。


と言いました。そこで最後のDの僧侶が、


みんなしゃべったではないか。黙っているのは、おれ一人だけだ。


と言ったといいます。


これで四人とも、その無言の修行が破れてしまった、という話です。


つづく