ある日、兄のリハタが様子を見にやってきて、驚きました。


弟の顔つきが尊げに見えるのです。


「お前は悟りを開いたな」兄の問いに、シュリハンドクは黙って輝く眼差しで兄を見詰めました。



 シュリハンドクが悟ったという噂は、教団の内外に衝撃を与えました。


釈尊の教団以外の人たにはあのような愚者が悟れるような法なら、仏法も知れたものだと謗り、教団内の人でさえ半信半疑でした。


そこで釈尊は外出のときはシュリハンドクをお伴にするようにし、尼僧に対し説法をさせたりして、その悟りを内外に示しておやりになりました。


こうしてシュリハンドクは教団内でも重きをなす僧になったのです。


シュリハンドクは、世の中に於ける知恵と才覚と、宗教上の悟りの違いを如実に示してくれた人といえるでしょう。