その代わり彼は心眼を開いて、大きな悟りを得ました。



そのアーヌルダが、ある日修行道場の中でただ独り、衣のほころびを繕うとしていました。



盲目ですから針に糸を通すことができません。


そこで彼はつぶやくように言いました。


「世間の福を求める者よ、わたしのためにこの糸を通して、功徳を積むがよい」



「さあ、その針と糸をよこしなさい。功徳を積ませてもらいましょう」そう言って近寄ってくる人がいました。



その声からすぐ釈尊であると知れました。



恐縮したアーヌルダは平にお断りしましたが、釈尊がアーヌルだから針と糸とを取り上げられたので、「お釈迦さまはすっかり福を積んでいらっしゃるではありませんか」と申し上げました。



「アーヌルダよ、世間の人は残らず幸福を求めているが、私ほど真剣にそれを求めている者はないのだよ」と釈尊がお答えになりました。




 悟りを開かれ仏陀となられた後も、精進を怠らない釈尊のお姿に私たちは多々学ばせられます。