人は他人の評価が気になります。


誉められれば気持ちが良いし、そしられればむくれます。



しかし、何かして誉められたとしても、大抵は自分独りだけで出来たことではありません。


一つの物事が成就するには多くの人の協力が必要です。



ところが、みんな『これは私がやった仕事だ、私が』と・・・


人間というのは、いつも私を認めてくれ、認めてくれと叫び続けている悲しい存在だといわれます。



人には物欲があります。


歳と共に物欲が枯れてきても、この『自分だ自分を認めてくれ』という欲からは、中々離れられないようです。





明治維新の時、江戸城を無血開城したのは勝海舟の歴史的な英断だとされています。


この事に対して、福沢諭吉が勝海舟に送った手紙があります。



『負けると判っていても戦わなくてはならぬ時があるのではないか。それが武士の伝統ではないか』というもので、無血開城は『武士の大切なやせ我慢の大義を害した』のではないかと、勝海舟の決断に疑問を呈しているのです。





勝海舟の返事が残っています。


『一戦やるか、江戸城を明け渡すかの決断は俺にあったさ。

それを良いとか悪いとかは、人のいうことさ。

俺の知ったことじゃないし、関係ないと思うが。』



江戸を戦禍から救った人の心は『一かかえほどの盤石』であり『そしりと、ほまれの中に、心動くことなし』です。