図書館の視聴覚室で観ました。

レーザーディスクなんて初めて使いました(笑)

 

 

○はじめに

 

1972年のイタリア映画です。

はっきり言うとかなりエロいです(笑)

借りるときも、視聴覚室のおばさんが気まずそうに表紙を裏返して渡してくれました。

ちなみに表紙はこんな感じです。

http://page21.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/j415297149 より

 

ベルトリッチ監督の作品はこれ以外には"The Dreamers"しか観たことがないですが、これもかなりエロいです。こちらはAmazon Primeでも観ることが出来るので加入している方は是非。

 

 

○あらすじ

 

心が通じ合っていると思っていた妻に自殺されてしまった中年の男やもめとパリに来たばかりの若い女がひょんなことから古いアパートで密会をするようになる。

この密会では、お互いの名前さえ明かさずにただ本能に任せるというルールがあった。次第に"若い女"は"中年の男"に惹かれていったところで、"若い女"は恋人と結婚することになる。

これを期に"若い女"は"中年の男"に別れを告げる。そこで、"中年の男"は豹変し、"若い女"を追いかけ回す。

中年の男ポールは、これまで決して名を名乗らなかったにも関わらず、突然、若い女ジャンヌに名前を告げ、自らの素性まで語る。

ポールから逃げ惑う中、ジャンヌはポールを撃ち殺してしまう。

ラストシーンでジャンヌは

「名前も知らない男に追いかけられた」

と言う。

 

 

○人とは結局分かり合えないものである

 

長年連れ添って理解し合えていると感じていた妻が突然自殺してしまう。

しかも、自殺後になって不倫をしていたことが判明する。

これってかなりショックですよね。

妻の葬儀用に化粧された亡骸に向かい合うシーンでポールは泣きながら

 

「君はそんな化粧はしなかったじゃないか」

 

と言います。

"分かり合っている"と思っていた妻と突然距離を感じたポールの心情をよく表していると思います。突然、他人のように感じてしまうのです。

ポールは、これだけ付き添っても人と分かり合えないのならばいっそ匿名化し本能のまま生きようと感じたのでしょう。自暴自棄ですがね。

一方ジャンヌはそんなスリリングな関係に次第にハマっていきます。

性欲に身を任せた密会での時間と、彼女の少女性が顕になっている映画撮影の時間がとても対比されています。

本能のままに生きる関係もジャンヌの結婚を期に終わりを迎えます。ポールは自らの素性を明かし、狂ったようにジャンヌを追いかけ、結局ジャンヌに殺されてしまいます。

ジャンヌは

 

「名前も知らない男に追いかけられた」

 

と言います。肉体関係が続き、体の隅々まで知り合っている関係なのに、突然距離を感じてしまうのです。再び、突然他人のように感じてしまうのです。

なんとも悲しい映画ですね。

 

 

○人のかぶる仮面

 

私がこの映画を観たときに思い出した曲は Billy Joel の The Stranger です。

 

 

Well, we all have a face

私たちは誰しも"顔"を持っている


That we hide away forever

私たちは、その"顔"を永遠に隠してしまう


And we take them out
And show ourselves when everyone has gone

その"顔"を取り出して、自らをさらけ出すのは、その人が死んだときだ

 

~~~~

 

Well, we all fall in love

私たちは誰しも恋に落ちる


But we disregard the danger

しかし、危険に対して無頓着だ


Though we share so many secrets

確かに(恋人と)多くの秘密を共有するけれど

 

There are some we never tell. 

絶対に言わないこともある

 

この部分ってポールとその妻の関係にそっくりですよね。

 

 

 

また、

 

Once I used to believe 
I was such a great romancer.

以前は僕はものすごいロマンチストだと思っていた


Then I came home to a woman 
that I could not recognize. 

誰かもわからないような女に惚れたりもした

 

When I pressed her for a reason

She refused to even answer

彼女にわけを迫ったら、答えることさえ拒否されてしまった


It was then I felt the stranger kick me right between the eyes. 

そのとき、その"他人"に眉間を蹴られたような衝撃を受けた

 

 

これってポールとジャンヌの関係にそっくりですよね。

 

この曲が発表されたのはラストタンゴ・イン・パリの発表から5年後の1977年です。

個人的には Billy Joel はこの映画を観たのではないかと思います。

 

 

最初の寂しげなピアノ・ソロから、賑やかな中間部を経て、再び寂しげなピアノ・ソロで終わっていて、

「人とのつながりをもつようになっても、結局人間は孤独である」

と言われているような気がしますね

 

 

○さいごに

 

このアルバムの次の曲とも絡めてお話したいこともたくさんあるのですが、今日はここまでにしておきます(笑)

この映画は、人によって捉え方が大きく違うので他のブロガーさんの感想も読んでみると面白いと思います。

長文を読んでくださりありがとうございました。