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「仕事辞めていいかな」
彼が休職になるきっかけの日だった。
同じ職場の年下彼と同棲を始めて半年がすぎ、順風満帆な生活を送っていた。
そのころ私は仕事に没頭しており、メッセージに気づいたのは夕方だった。
突然の事だったが、営業職には良くある弱音かと思い、励ましの返信をした。
「私はいつも味方だよ」
「ある程度は貯金あるし、仕事辞めてのんびりやりたいこと考えてみたら?」
これで少しは気持ちが楽になれば、といった感覚で送ったメッセージだった。
私も営業職なので仕事が辞めたくなるような辛い日を経験している。うちの会社ではよくある事だ。
夜9:00だったと思う。
会社の外で待ち合わせをした。
いつもと様子がおかしい。
私と目を合わせてくれない。
どこか明後日の方を見ているような目。
明らかにおかしい。
「今日何かあったの?」
単刀直入に聞いたが彼は目を合わせようとしない。何があったのだろう。
「上司に何か言われた?」
「いや。去年の営業成績と比べて明らかに成績が落ちている営業向けの研修に参加したんだ」
「うん。」
「その後にGマネージャーから1時間半の説教があったんだけど、ボロカス言われてさ。」
※Gマネージャーとはグループマネージャーのことであり、部門長である。
「宇宙人から?」
性格が2面性で機嫌がいい時と悪い時の差が激しく、人によってテンションを変えるのでGマネージャーのことをこう呼んでいる。
「そう。マジでムカついたわ。もう無理だわ。」
どうやら、成績が上がらない理由を
雑用が多いことと、他の営業に協力した過去の案件がクレーム化したりと新規の活動に割く時間が取れず、オーバーワークだと説明したらしい。
営業経験者からいうとそんなの言い訳だとか、出来ない奴がよくいうセリフだとか厳しいご指摘を頂いてもしょうがないと思うが、彼の場合は、言い訳ではなく、本当のことだ。
最も彼のいる部門は、毎年オーバーワークで人が辞めていく部門だ。それも頼りになるはずの中堅の人達が続々と辞めており、今年は社会人5年目の彼が販売課の中では最年長で、残り3人は新人と2年目と3年目だ。
「本当に仕事やめてもいいかな?」
寝れば悪れるだろうと思い
「いいんじゃないかな!」
と返した。
今思えば私の対応も普通の人から見れば軽率な行動なのだろう。
続く。