さて、前回は、三代続いたクリーニング屋を
相続でもめて泣く泣く手放した浩さんの
お話でした

それでは、どうすれば良かったのでしょうか

個人商店や中小企業の場合、事業に使用している
土地建物等が、社長や店長の個人名義になって
いることがよくあります。

勿論、事業を続けている間は、何も問題はありませんが、
いざ相続となったら、個人の相続財産として、遺産分割の
対象になってしまうのです

そういうことに気が付かずに、遺言等を準備しない方が
とても多いのです。

相続人全員が、その会社や事業に関わっている場合は、
まだ事業を何とか残していこうという同じ思いがありますから
大丈夫な場合が多いです。

ただ、相続人の中に、嫁いでいる娘や、全く事業に
関わっていない兄弟などがいる場合は大変です

相続が発生した時の経済状況によっては、浩さんの
弟のように、強硬に遺産分割を迫ってくる可能性があります。

とは言え、もし遺言で「全ての財産をクリーニング屋を
継いでくれた浩に相続させる」と書いたとしても、以前
お話したように、弟の遺留分がありますよね

もちろん、遺留分は法定相続分より少ない
(子どもの場合は法定相続分の2分の1)ので、
それだけの現金などが準備できれば問題ありません。

でも、経営の苦しい中小企業や個人商店に、
そんな余裕が有る場合は少ないですよね。

そこで、「遺産分割の禁止」が重要になってきます。
遺言では、最高5年まで遺産分割の禁止をすることが
出来ます。

その間に事業継続の方策や、遺産分割の方法を
じっくり準備することができます

事業を承継している者が全ての財産を相続するのは
当たり前、と考えるのは親の勝手な思い込みです

事業の円滑な継続のためにも、相続人同士の争いを防ぐ
ためにも、ぜひ遺言の事を真剣に考えてみてください