さて、今回は「行方不明の相続人がいる場合」の
お話です


そんな事、めったに無いから・・・って思っていませんか


でも、事実は小説より奇なりと言います


借金取りに追われたり、リストラに会って
職場を転々としたり、ホームレスになっていたり


ちょっとだけ人生の歯車が狂っただけで、音信不通に
なってしまうことは、今の世の中結構あるのです


アナタの身近にもひょっとしたら、こんな話が
あるかもしれませんよ。



由美  ちょっとちょっと、亜紀。香織の話、聞いた

亜紀  聞いた聞いた。お兄さんのことでしょう。

由美  そうそう、私も初めて聞いてびっくりしちゃった

亜紀  私もよ。香織のお兄さん、東京でお店始めて、
     随分羽振りがいいって聞いてたじゃない。
     それが、行方不明なんですってね。

由美  そうなのよ。私も、香織のお兄さんには、
     小さい頃一緒によく遊んでもらった覚えが
     あるから、ええっ、あのお兄さんがって・・・

亜紀  それも、もう行き先がわからなくなって
     3年になるんですって。
 
由美  あら、だってお兄さん、確か結婚して
     お子さんもいたでしょう。

亜紀  香織たちに内緒で離婚していたみたいよ。
     しばらく里帰りしていなかったらしいんだけど、
     男のことだし、お店が忙しいから仕方ないよね、
     ぐらいに思ってたんですって

由美  それで、今回お父様が亡くなって、
     連絡してみたらいなかったってこと

亜紀  そうそう。東京の家に電話したらお嫁さんが出て、
     もう離婚して3年になりますから行き先は
     わかりませんて。
     事業に失敗して借金取りに追われて、家
     取られそうになる前にお嫁さんの名義に変えて、
     なんとか残したらしいって言ってたわ。
    
由美  ええっ、それじゃあ、お父様のお葬式にも
     来なかったの?お兄さん。

亜紀  そうだって。急なことだったから、親戚に
     連絡するのが精一杯で、探すことも
     出来なかったんですって。
     香織、お葬式とか全部一人で取り仕切って、
     大変だったみたい
     
由美  そりゃあ、そうよね。二人っきりの兄妹で、
     ずっと頼りにしていたお兄さんだものね。

亜紀  でも、これからが大変なんですって。
     相続の手続きで・・・。

由美  お兄さん、行方がわからないんじゃ、
     連絡のしようがないわよね。

亜紀  弁護士さんに相談に行ったら、まずは、
     友人などの心当たりに連絡して、それから
     新聞に尋ね人の広告出したり、警察に
     捜索願い出したりするんですって。

由美  わあ、大変ね。でも、それでも見つからなかったら
     どうするの?ずっとお兄さんが見つかるまで、
     そのままにしておくってこと

亜紀  香織のお父さん、遺言書がなかったから、
     遺産分割協議をしないといけないんですって。
     でも、相続人が一人でも欠けたら話し合いが
     出来ないでしょう。
     それで、行方不明のお兄さんの代わりに
     協議に参加できる「不在者財産管理人」とかいう人を
     たてないといけないらしいわ。

由美  その「不在者財産管理人」ていう人が、
     お兄さんの代理をするってことなの?

亜紀  そう、お兄さんの代わりに、遺産分割協議に参加して、
     お兄さんの相続分を請求して、相続した財産をずっと
     管理してくれるんですって。

由美  へえ、でも、もしお兄さんがずっと見つからなかったら
     どうするの?その財産。

亜紀  7年以上行方不明だと、失踪宣告をして、戸籍上は
     死亡者扱いになるから、その財産は、お兄さんの
     子供たちが相続するんじゃないかなあって。

由美  でも、東京に出てから、香織のお兄さん、ほとんど
     ご両親の面倒見てなくて、香織がずっとお世話して
     きたわけでしょう。
     それなのに、お兄さんならまだしも、お兄さんの
     子供たちに遺産が行ってしまうのは、ちょっとね。
     なんだか香織が可哀想・・・

亜紀  私もそう思うわ。香織のお母さんがね。こんなことなら、
     お父さんが元気なうちに遺言書いておいてもらえば
     良かったって。

由美  本当ね。それにしても、相続ってつくづく大変ね。



さて、いかがでしたか?こんな話なら有りそう・・・って
思いませんでしたか。

「不在者財産管理人」という新しい言葉が出て来ましたね。
詳しい説明については、またゆっくりお話しましょう