さて、今回は父親が亡くなった時に、母親が
認知症で施設に入っている場合のお話です

最近は、認知症の高齢者も多くいらっしゃいますから、
相続人の中に、認知症の人がいる可能性は高いですよね。

そんな時に、遺産分割協議はきちんと出来るのか

さあ、ドラマの始まりです。



由美  亜紀。お父様お亡くなりになって大変だったわね。

亜紀  急なことだったから、私も兄もびっくりしちゃって・・・

由美  それで、お葬式の時、お母様はどうしたの。

亜紀  知らせないでおいたの。だって面会に行っても、
     父や私達に「どちら様でした?」って言うぐらいだったから。
     施設の皆さんにも相談したんだけど、そんな状態で親戚の
     前に出すのは、かえって可哀想だろうってことで。

由美  そうか・・・。お母様、施設に入って何年になるの

亜紀  もう、二年かなあ。確か・・うちの次男の大学受験の時期で、
     私もうパニックになりそうだったから。
 
由美  そうそう、そうだったわね。お父様と二人暮らしで、
     だんだん症状がひどくなって、亜紀が、もう少し早く、
     気が付いていればって、泣いてたもんね

亜紀  でも、父ったら一人暮らしになった途端に、急に老け込んじゃって。
     母の面倒を自分が見なきゃあって気を張ってたのが
     ゆるんじゃったからなのね、きっと。

由美  夫婦って、そんなものかもしれないわね。
     それで、お父さんたちが住んでた家と土地。
     亜紀がもらえるんでしょう?お兄さんは広島だし。

亜紀  それが大変なのよ。遺産分割協議書を作ろうと思ったら、
     作れませんて言われちゃったの
    
由美  あら、どうして?お兄さんが反対でもしたの

亜紀  そうじゃないのよ。兄はあっさりとしたもんで、
     いつでも実印押してやるから早く書類を
     送ってくれって言ってるの。問題は母なの。
     
由美  ええっ、だってお母様は認知症で施設に
     入っているんでしょう。

亜紀  その認知症が問題なのよ。
     弁護士さんが言うには、遺産分割協議には、
     判断能力の無い人は参加できないから、
     今のままでは遺産分割協議が出来ませんって言うのよ。

由美  えっ、そうなの?じゃあ、どうすればいいの。
     まさかそのままなの?

亜紀  認知症とかで判断能力の無い人が遺産分割協議を
     する時は、成年後見人をたてないといけないんですって。
     要するに、母の代理人ってことらしいわ。

由美  だったら、亜紀がその成年後見人とやらになれば
     良いってことなの?
     今までずっと面倒見てきたのは亜紀なんだから。

亜紀  そう、私もそう思ったの。そうしたら私はダメなんですって。
     相続人同士だと利益が相反するから、代理人に
     なれないんですって

由美  あっ、そうかお母様の相続分を多くすれば亜紀が
     不利になって、亜紀の相続分を多くすればお母様が
     不利になるから、両方の立場には、なれませんてことね。

亜紀  そう言う事らしいわ。法定後見人っていうのを
     家庭裁判所で選んでもらわないといけないらしくて、
     それだけでも最低3ヶ月ぐらいかかるって言われて、
     私またパニックになりそう・・・
     父が元気なうちに、遺言で「お母さんの面倒を見てもらう代わりに、
     全ての財産を亜紀に相続させる」って書いておいてもらえば
     良かったのにって、弁護士さんに言われちゃった。
     そうすれば、遺産分割協議はいらないから、
     法定後見人も必要ないんですって。

由美  まあ、そういう方法もあったのね。
     それにしても、相続ってつくづく大変ね。


さて、いかがでしたか?あっさり遺産分割協議とは
いきませんでしたね。

認知症などで判断能力が無いとされる人が相続人に
いると、色々手続きが面倒なようですね。

「法定後見人」という新しい言葉も出て来ました

詳しい話は、次回からゆっくりお話しましょう