これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ。下差し


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拾八之巻


蔭形草(えいけいそう)の扇で姿を隠し、地下牢の場所を突き止めた相葉緑龍之守雅紀が無事に蔵に戻って来てから、五人はすぐさま嘉子姫救出に向けての作戦を開始した。


雅紀がどんな工程で地下牢に行き着いたのかは、翠眼玉(すいがんぎょく)で雅紀の行動を注視しつつ、共に行動していた白澤からも各々の心眼を通じて逐一報告が成されており、五人は道に迷う事無く地下牢に向かう事が出来た。


その際大いに役立ったのが三首人の村長から櫻井朱雀之守翔が貰った狩猟杖(しゅりょうづえ)だ。短い鞭の様な形状の、この草の杖はそれで指し示すだけで相手の動きを止める事が可能なのである。


雅紀の探索で、妖狐魔殿の周囲を巡回している警備の妖狐達は未だほんの下っ端で、さほど強い妖力を持っていない事は分かっていた。ならば狩猟杖で動きを封じてしまえば本殿に居る大将の金妖帝飛に報告に行く事も出来ないだろうと、翔を先頭にしての進軍である。


無論動けなくなっている警備の妖狐を後に別の妖狐が発見し、異変に気づかれる危険性はあったが、五人が優先するのはあくまでも嘉子姫救出と、姫を連れ出してくれる予定の元稲荷神達の逃亡を手助けする事であり、それまでの時間稼ぎが出来れば良かったのだ。


作戦は順調に進んで行った。そもそも地下牢までの工程で行き交う妖狐の数が圧倒的に少ないのである。それは前もって偵察に赴いた雅紀が巡回する妖狐の数がなるだけ少ない手薄な道筋を選択していたからだ。


その少ない警備も、五人の先頭で狩猟杖を振るう翔に悉く動きを封じられ、固まった所を残った四人が協力して素早く物陰に縛り付けてしまうので、誰にも見つかる事無く相当の余裕を以て地下牢まで到達する事が出来た。


だが、さすがに地下牢の周辺には警備の妖狐も多く、無謀に近づけば大きな騒ぎになりそうな気配が、地下牢から三間(約5.4メートル)先の大柱に身を潜める五人にも容易に見て取れる。


{約束の巳の刻まで未だ半時(約30分)はある…。ここで巳の刻まで待つか?みんな、どうする?} 大柱の影でちんまりと固まる一同に、例の如くヒソヒソ声で翔が問い掛けた。 {少し早く着き過ぎたな…。だがここにこうして待機している間にも我らが見つかる危険性は高くなる。このまま進んだ方がいいんじゃないか?} 翔の言葉に同じくヒソヒソ声で雅紀が答える。


{でも土黄狐(どおうこ)さんでしたっけ?元お稲荷さんが地下牢の門を開けるのは巳の刻って連絡して来てたじゃないですか?白澤先生のご説明では、その時間しか地下牢の門が開けられないからだって事でしょ?だとすればこのまま待ってた方が良くないですか?} 

 

二宮麒麟之守和也はあくまでも慎重派だ。白澤が補足する。〖それは金妖帝飛が手下共を集めて宴会を始める時刻が巳の刻だからだ。彼奴は毎晩同じ時間に酒宴を行う。牢番達がある程度自由に動けるのは宴会が行われている一刻から一刻半(2時間から2時間半)の間だけなのだ。


酒宴が終われば金妖帝飛は数人の女狐共と寝所へと向かうのが通例でな。夜警の妖狐達が昼番と交代して見張りや巡回を行う。だが、今の所お前達の到着が金妖帝飛に気取られている可能性は果てしなく無に等しい。恐らく警戒もしておらぬであろう。


出来れば約束の巳の刻までに姫や元稲荷神達を逃す段取りを整えてから、手薄になった酒宴の時間の間に全員を妖狐魔殿から逃がした方が得策であろうが…。そうなると今地下牢の周辺にいる妖狐達をどうするかだな〗


どうやら白澤にも進むか待つかの判断がつきかねているらしい。すると誰よりも低い密やかな声音で松本白虎之守潤が言った。 {なら誰か一人が蔭形草の扇と狩猟杖を持って地下牢の門前まで行けばいいじゃないか。


姿を隠してあそこにたむろす見張り連中を全部動けなくしてから元稲荷神達と合流し、皆で協力して妖狐共を全員地下牢の中に閉じ込めてやればいい。そして酒宴が始まった頃を見計らって宮殿の外へ嘉子姫と元稲荷神達を逃がす段取りを整えるってのはどうだ?}


〖それは良い考えだ白虎潤。だが、半時の間であの見張りの妖狐共を全員封じるとなれば、虎の如く素早さが必要だな〗白澤の声に皆の視線が潤へと集中する。 {成程~。そうなるとこの役目に最適なのは誰なのか自ずと答えが見えますね~、白澤先生♪}


何処と無く嬉しそうに言う和也に、潤が {麒麟之守殿は他人事だとやけに唆してくれるな♭} と、悪態をつく。だが白澤の言う通り、半時で事を終わらせるなら、誰よりも武道に長けた潤がそれを担うのが一番だ。


{儂がついておるぞ潤。くれぐれも気をつけてゆくのだぞ} そう励ましてくれる大野玄武之守智を愛しげにムギュッと抱き締めた潤は、 {見ていてくれよ智。俺頑張って来るからな♪} と、翔から狩猟杖を、雅紀から蔭形草の扇を預かり、顔の前で広げて {隠せ} と、呟いた。


見る見る内にその姿が透明化する。即断即決の剣士らしく、潤は即行動を開始したらしい。大柱の影から見守る仲間の視線の先では、地下牢の周辺を見張る警備の妖狐らが面白い程に動きを止め、まるで将棋倒しの如くパタパタと地面に倒れて行くのだ。


{蔭形草って透明化しても使えるんですねぇ…} 和也が小さく感嘆する。〖早いのぅ~。さすがは白虎潤。まさに虎の如く俊敏さだ〗白澤が感心した。だが急に倒れ始めた警備の妖狐達に仰天したのか、甲冑を身につけた三人の牢番が慌てふためいて地下牢から飛び出し、キョロキョロと周囲を見回して、今にも叫び出しそうな様子である。


〖あれが元稲荷神達だ。行け〗白澤の声が響く。大柱の影から飛び出した四人は両手を大きく振りながら三人の牢番に駆け寄り、翔が「嘉子姫の打ち掛けを見て参りました。どなたが土黄狐様でしょうか?」と、声を掛ける。


四人の着物を見て大和からだと気づいたのであろう。年配の男を中心とした三人の牢番が腰を抜かして地面へとへたり込んだ。「た、助かった…♭見張りが急にバタバタと倒れたので流行病(はやりやまい)かと思いました…♭私が土黄狐です♭♭」


中心の老人が名乗った。続けて向かって左の、長身痩躯のどじょう髭をした牢番が「私は木緑狐(もくりょくこ)です」と名乗り、向かって右に居た一番若い、逞しそうな体つきの二枚目牢番が「私は炎赤狐(えんせきこ)です」と名乗る。


そんな彼らの背後から蔭形草の扇を畳み、姿を現した潤が「さぁ、自己紹介は後だ。みんな協力してこいつらを地下牢の中へ閉じ込めるぞ」と微笑った。


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見張りの妖狐らが全員木偶人形の様に固まった事で、地下牢の門は予定よりも早く開けられた。五人は元稲荷神達と共に倒れた見張りの妖狐らを地下牢へと運び入れると、それぞれ数名に分けて空の牢屋に閉じ込め、外からしっかりと閂を掛けて行く。これで嘉子姫救出の準備が整った。


この地下牢は本殿から少し離れた西離宮の地下道に設けられており、上階は階級の低い妖狐らの住処となっている。


上階は本殿と廊下で繋がり、宴会が行われる大広間にはその廊下を使って赴くのが通例だが、地下牢と繋がる廊下は無く、地下牢に向かうには一旦西離宮内部の石階段を使って階下へと下り、外周をグルリと回って地下牢の門前に行かなくてはならず、かなり不便な造りだ。


下級妖狐達はその殆どが同じ意匠の地味な唐服に身を包んだ、顔が狐で体が人間の中途半端な外見なのだが、上の階級になると、姿形は紛うことなき人間の姿であり、その容姿も様々である。


身に纏う唐服も階級に応じて上質で凝った意匠の物に代わり、武人や宦官、女官に側室等、その役目に応じた姿となって、まるで唐国の宮中そのものであった。そしてこの妖狐魔殿では皆一様に皇帝、詰まり金妖帝飛の為に各々の役目を務め、その恩恵に預かっているのである。


嘉子姫の囚われている最奥の座敷牢へと五人を案内しながら、最年長の土黄狐は妖狐魔殿の内部構造や妖狐達の役割等、その詳細を話して聞かせてくれた。


特に土黄の国の守り神である和也には、まるで王子に仕えるお目付け役の様な恭しい態度である。そしてそんな様子は、炎赤の国の守り神である翔に対する炎赤狐や、木緑の国の守り神である雅紀に対する木緑狐の態度にも見て取れた。


だが何より三人の牢番らが恐縮しきりだったのは潤と智の天門の両名と会話する時だ。潤が守り神を務める銀白紫の国、そして智が守り神を務める水黒青の国。この両国にまたがる拠点で稲荷神を務めていた銀水紫青狐(ぎんすいしせいこ)をむざむざ金妖帝飛に殺害されてしまったからである。


「元はと言えば荒んだ社を見限って金妖帝飛の甘言に踊らされた我らの不徳の致すところ。銀水紫青狐殿には誠に申し訳ない事を致しました」折れ曲がらんばかりの勢いで頭を垂れる三人の元稲荷神達に、智が腰を低くして優しく声を掛けた。


「皆様頭をお上げ下され。未だ未だ未熟な我らと違い、皆様は悠久の歴史の中で長らく民を守って来られた、言うなれば我らの大先輩ではござらぬか。此度のご英断はきっと皆様の功績として稲荷大明神様にも覚え良き事になりましょうぞ」


智に続いて潤も「その通りだ」と声を掛ける。「寂れた社は修復すれば良いのです。ここにいる全員がそれぞれの国の社跡に結界を張って皆様がお戻りになられるのをお待ちしておりますぞ」


「ありがとうございます。天門のお二人の暖かいお言葉で私達も幾分か気持ちが楽になりました」元稲荷神達は再び深々と頭を下げると、地下牢の一番奥まった場所にある座敷牢へと五人を連れて行った。


そこでは未だ幼い娘があどけない寝顔を見せて横たわっている。嘉子姫だ。嘉子姫は柔らかそうな敷物の上で綺麗な掛け布団を掛けられて、すやすやと眠っていた。ちゃんと食事も与えられていたのか、窶れた様子も無く、中着だけの簡素な着物姿であるものの、まるで昼間のうたた寝でもしているかの如く安らかな様子である。


「元気な姫君でございます。未だ幼いのに妖狐に怯える様子もなく、我らを振り回してばかりでした。ですが明日の辰の刻が姫の命の期限。それ故に今は眠ってばかりおられます」土黄狐は孫娘を見つめる様な顔つきで呟き、「本当に皆様に来て頂けて良かった…」と、その皺しぼんだ双眸を潤ませた。


きっと姫の我儘に付き合わされている内にいつしか情が沸いたのであろう。炎赤狐も穏やかに微笑み、木緑狐は感極まって良かった良かったと涙を拭っている。時刻は約束の巳の刻を僅かばかり過ぎた頃であった。


三人の牢番は一旦地下牢の外へ出て、本殿の大広間で宴会が始まった事を確認すると、座敷牢まで立ち戻り、「これより我らは術を使い、嘉子姫と共に妖狐魔殿より逃亡致します。若き守り神の皆様。嘉子姫を何処にお連れ致せば宜しいですか?」と五人に聞いた。


「ならばこれより遠く北にある尸解道院寺にお連れ下さい。そこはこの魔道唯一の聖域であり、尸解仙人様が幾重にも結界を張ってお待ちしております。嘉子姫は尸解仙人様が我らが君主である葛葉貴妃様の手助けを受けて無事に都へとお送り下さいます」


翔の説明に三人の牢番が仰天して思わず両手を合わす。「葛葉貴妃様ですと?!♭我ら地方の稲荷神にはご尊顔を拝する事も叶わぬ高貴なお方!♭都におわす陰陽師の最高峰でいらっしゃる安倍晴明様の御母堂様でもあらせられる!♭何と有難い事じゃ!♭」


葛葉貴妃の名前を聞き、俄然元気が出たのであろう。三人の元稲荷神達はその場で甲冑を脱ぎ捨て、眠ったままの嘉子姫を座敷牢から出してやると、その身柄を大事そうに三人で抱き抱えながら地下牢の外へ運び出した。遠く本殿の辺りでどんちゃん騒ぎの喧噪が聞こえて来る。


「炎赤狐殿。木緑狐殿。参りますぞ」「はい、土黄狐殿」三人がたちまち神主の様な姿をした、純白の大きな狐に姿を変えた。神聖な浄気の風が、立ち込める煙と共に嘉子姫と三人の稲荷神を取り囲み、その煙幕は次第に分厚い雲の形をした乗り物へと変化する。


「ご武運を祈っております!」「若き守り神の皆様!どうかご無事で!」「尸解道院寺でお会いいたしましょうぞ!」そう口々に言い残した三人の稲荷神達は、嘉子姫を連れて自ら作り出した白雲に乗り込むと、つむじ風の様に飛び去って行った。



座敷牢と元稲荷神の皆さんですニコニコ木緑狐さんにはちゃんとどじょう髭もつけましたてへぺろ土黄狐さんは最年長なので、少しお爺さん的な雰囲気ですよ~ウインク炎赤狐さんはちょっとガッチリ系の二枚目でございますグラサンキラキラ


神主風の着物は同じフリーイラストを使ったのでパソコンで中着の色や、幅や高さを変えてみましたにっこり三者三様のお稲荷様のお顔を着物のフリーイラストと合成しておりますニコニコなので皆さん小ちゃい鳥居を持っているんですよ~😄背景の座敷牢も別画像との合成ですニコニコ



「見事な術だ。一度魔道に堕ちたとは言え流石は稲荷神、これで先ずは安心だな」直ぐに小さくなる白雲を見送りつつ、翔がやれやれと安堵する。「さて、これからどうする?一応ここの当主に挨拶しとくか?」白雲に手を振りながら雅紀が言った。


「えぇ~?♭嫌ですよ~♭嘉子姫の救出も完了したし、今回は一旦引き上げません?♭」和也はあくまでも撤退派である。「待て麒麟之守殿。一度も戦わずして撤退は問題が先延ばしになるだけだ。俺達の最終目的は金妖帝飛を倒す事だぞ。いずれ戦わなくてはならぬ敵ならば、今出来る事で少しでも彼奴に打撃を与えて置こうじゃないか」


残魔刀の柄に手を置き、潤は何時でもやってやるぞと闘志満々だ。「うむ、いずれ来る本戦に向けて敵を知る事は必要じゃ。金妖帝飛が我らの能力を巻物で試した様に、我らも彼奴の能力をある程度把握しなくてはならぬ」どうやら智も潤と同意見の様子である。


「でも智さんは金妖帝飛の獲物として狙われているかも知れないんですよ?♭いいんですか?♭」智の身を案じる和也に当の本人は「だからこそ尚更じゃ」と、実に頼もしい。


「得体の知れぬ相手に狙われるよりも見知った相手に狙われる方が儂も戦い易い。朱雀之守殿とてそうであろう?金妖帝飛が何者なのか分かった方が戦略の立てようがあると言うものじゃ」智にそう言われてしまうと弱い。思わず「智殿の言う通りだ」と、同意してしまう翔だった。


「良し決まり!皆で金妖帝飛に宣戦布告だ!!」雅紀の声に和也が「あなたが一番心配なんですよ~♭♭」と、唇を尖らせてぼやく。こうして五人の若き妖術師達は酒宴のさなかにある妖狐魔殿の本殿へと歩みを進めるのであった。


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金妖帝飛との第一戦まで書けませんでした~えーん7月の後半は私事が忙しく、ただでさえ進むの遅くなっていたのにすみません😥とは言え、嘉子姫救出のくだりはどうにか完了致しましたので、どうぞお許し下さいまし~お願いアセアセ


元稲荷神の皆様も今回は大活躍でございましたね~ニコニコ稲荷神のフリーイラスト等を拝見すると、以外と多いのが雲に乗っかっている図だったり致しますので、姫君救出の術は稲荷神達が雲に乗っかる形と致しましたウインク


さて次回はいよいよ金妖帝飛との直接対決となりますにっこり派手な妖術バトルを予定しておりますが、そろそろお山の日記念作品にも着手しなくては😅またぞろ亀さん更新になるかもですが、お付き合い下さいましたら幸いです🙇⤵︎