これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
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拾四之巻
猩々達が住む洞窟を、思わぬ短時間で脱出した五人の妖術師達は、枯れかけた草木とゴツゴツした岩や砂利ばかりの、広陵とした乾燥地帯をひたすら南に向かって歩んでいた。
「この辺り一帯は随分と乾いているな~。以前は緑の生い茂った美しい山道だっただろうに、どの樹木も死にかけていて可哀想だ。玄武之守殿、そなたの力でここの樹木に水を与えてやれないか?」緑龍之守雅紀がそんな頼み事をする。
「そうじゃのぅ~。一時的に降雨を起こす事は術で可能だが、これほど空気と土壌が乾いておる場所だとまたすぐに乾燥して枯れてしまうであろう。先ずは乾燥の元を絶たねば元には戻らぬぞ」
周囲を見渡し、枯れた木の葉を摘んで眺めつつ返答する玄武之守智に続き、白虎之守潤が「おぬしがここの樹木を術で植え変えればいいじゃないか」と、智を庇って文句を言った。
「それこそ土壌が乾燥していたら樹木を植え替えても根付かないし、意味無いじゃないか♭そうなると土壌そのものを変えるしか方法は無さそうだなぁ~♭」隣を歩く麒麟之守和也に視線を向ける雅紀に、和也が「この広い土地の土壌を全部入れ替えるとなると流石の私でも一晩中掛かりますけど?♭」と、嫌そうに眉根を寄せる。
「もしかしたらこの辺り一帯の乾燥も妖狐魔殿と関わりがあるのかも知れぬなぁ~」手首にある時読みの腕飾りに視線を落とし、朱雀之守翔が言う。すると白澤の声が〖どうであろうのぅ?私の記憶だとこの辺りの土地には羽民(うみん)達が住んでいたと思うが、今は姿が見えん〗と教えてくれた。
「羽民?確か南山の東南辺りに住む全身を羽毛に覆われた種族でしたね?翼を持っていて天狗の祖先に類するとか…。言われてみればこの辺りは東南の方角になりますが、何処かへ飛んで行ってしまったのでしょうか?」
白澤の声にはっきりと答える翔に、和也がややビクッとして「翔さん、お爺さんと話す時はもっと普通に話して下さいよ~♭急に大声になるとびっくりしますから」と、胸を抑える。
本来なら木々のさざめきや生き物の気配など、静かなりに音がするものだが、ここはあまりにもしんと静まり返っており、そこはかとない不気味さを感じているのだろう。その時、潤の持つ斬魔刀がチャリーーーンと鳴動した。
「瘴気!!」言うが早いか斬魔刀を抜刀した潤は、風の如く速さで荒れた砂地へと飛び込んで行く。心眼が開き、その双眸は紫色に輝いて、さながら獲物を狩る虎の様にふわりと空へと舞い上がった。白銀の包衣がはためいている。
「待て潤!深入りするな!!」何かを感じ取ったのか、智が錫杖を空に翳しつつ、片手で印を描き潤の後に続く。「玄武水妖術!円柱落滝(えんちゅうらくりょう)!!」智の額の心眼と双眸が瑠璃色に光り、天に向けた掌から眩い光線が放出された。
砂地に降り立った潤の両脚が砂の渦に飲み込まれそうになる。「しまった!!♭♭」蟻地獄だ。だが、潤の脚を捉えた砂の渦は、天からたちまち円柱状に落ちて来た滝の如く落水に湿り、渦巻く動きを止めた。
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」甲高い悲鳴を上げ、砂の渦の中心からすぶ濡れになった異形の化け物が飛び出して来る。全身を赤茶色の毛で覆われ、一本の腕と脚を持ち、頭に大きな一つ目を光らせた、三尺(約60センチ)程の小さな化け物だ。そいつは身体中から湯気を立ち昇らせながら「寒い!寒い!」と喚いていた。
砂の渦から脱した潤が素早く駆け込み、「バザラダン・センダ!!」と斬魔刀を一閃。その化け物を胴体から脳天に向かって斬り上げる。「ぎぇえええええ!!」化け物は黒い霞の様に消滅し、その痕跡には件の巻物が残されていた。
「さっきの化け物が乾きの原因だったか…♭♭」ふうと大きく息を吐いた潤は、斬魔刀をパチンと鞘に収めると、残った巻物を拾い上げ、そのまま智に歩み寄る。「助かったぞ智♭危うく蟻地獄に呑まれる所だ♭」「無鉄砲な奴じゃのぅ~♭あまり心配させるな♭♭」
すると、先程まで蟻地獄だった砂の渦巻きが、まるで呪いが解けたかの如くに澄んだ水をたっぷりと湛えた大きな池へと変わって行く。「天晴れ!♪さすがは天門のご両人だ!♪」
嬉しそうに二人へと歩み寄って来た雅紀が、「乾燥が治まれば俺の出番だ!♪」と心眼を開き、両の瞳を翠色に輝かせて、その全身に鱗粉の様な光を纏いながら池の周辺を飛ぶ様に駆け回る。たちまち枯れ木は蘇り、草花が萌えて、自然の息吹が薫る風景へと変化して行った。
「緑龍之守殿の術は相変わらず圧巻じゃのぅ~♪」錫杖を振って残りの二名を呼び寄せる智に、和也が「それじゃあ羽民とか言う人達がいつでも戻れる様に私は畑でも耕すと致しましょうか」と、池の目と鼻の先の土壌に両手を何度も翳し、ぼんぼんと空気泡の様な音を響かせる。すると良く耕された田畑が現れ、池へと続く水路が土壌に刻まれた。
雅紀と和也は次に木と土壁でいくつかの山小屋を建てて回り、枯れ果てた乾燥地帯はまるで農村の様な長閑(のどか)な場所へと出来上がって行ったのである。
「此度は私の出る幕が無かったなぁ~」すっかり様変わりした乾燥地帯を眺めやり、苦笑いを浮かべる翔に、潤が巻物を手渡してその肩をポンと叩く。
「出る幕ならほら、こいつの説明を頼む。どうやらさっきの一つ目も金妖帝飛の謀(はかりごと)だった様だしな。そもそもあれは何なんだ?蟻地獄にはヒヤリとしたが、瘴気の割には大した事なかったぞ」
「あれは跋(ばつ)だ。住む場所を干ばつさせる大層迷惑な魔物でな、人語を解すが身体も小さく、水に弱い下等妖怪だからあまり賢くないのだ。九尾程の妖力があれば容易く操れるだろうが、あの跋も金妖帝飛の仕掛けだとしたら、彼奴はどうでも嘉子姫を鬼にさせたいらしい」
巻物を開いた翔はそこに書かれてあった内容を読み、「成る程。金妖帝飛の奴大分予想が外れたな」と、口元で薄く微笑った。
潤智のお2人にあっちゅう間に成敗されてしまいましたが、金妖帝飛に利用されたある意味哀れな妖怪でございます因みに跋さんは干ばつさせる妖怪ですが蟻地獄に潜んでいると言う記述はありません😅ゞ
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【刻知ラヌ魔道ナレバ , ケダシ是迄ニ一夜過ギタル也。嘉子姫鬼ニ成レタレバ効既ニ手遅レ也。ソレデモ我ガ神殿ニ及バレバ謎之弐 , 渓谷ニテ橋架ケ向カヘドモ架ケル事叶ワ無クバ地之底マデ堕チ , 何者之力モ及バジ】
跋を倒した後の乾燥地を全て修復した五人は、彼(か)の魔物が腹に飲み込んでいた巻物の文言を読み上げる翔の声に耳を傾けていた。
「時間の分からぬ魔道であるから恐らくこれまでに一夜過ぎているだろう。嘉子姫は鬼になったから効果も無く手遅れだとこの巻物は言っている。それでも自分の神殿を目指すなら二の謎である渓谷に橋を架けろとな。橋を架ける事が出来ないなら地の底まで堕ちてしまい、どんな力も及ばないのだそうだ。
恐らく金妖帝飛の目算ではこの場に参った時点で私達が遅れを取っているに違いないと予想し、前もって巻物を跋に飲み込ませていたのであろう。だが実際は未だ酉の刻だ。約束の巳の刻までにはかなりの時間が残っている。
金妖帝飛には私達が時を読める事も、洞窟で猩々に出会い、近道を伝授して貰った事も分かっておらぬのだ。たかが人である私達がよもやこんな速さでこの場に辿り着いていようとは思ってもおらぬのであろう」
翔は両手をパンと打ち鳴らし、巻物を一瞬で灰にしてから「恐らく二の謎となっている渓谷と言うのも何か姑息な仕掛けが成されているであろう。ご油断めさるな」と注意を促した。そんな時、バサバサと大型と思われる鳥らしき複数の羽音が上空から聞こえて来たのである。
「うわぁ~!凄い凄い!我々の住処が前より美しく変わっているぞ!!」そんな弾んだ声で次々と地面に降り立ったのは、全身を白い羽毛で覆われ、赤い瞳と黄色い嘴をした人型の生き物だった。羽民である。
先程翔は天狗の祖先と言ったが、天狗の様な赤い顔も大きな鼻もしておらず、人面に近い穏やかな顔をしており、男も女も、大人も子供も居て、約二十名程の群れになっていた。
羽民達は池や山林や田畑や小屋など、全ての生活環境が整えられたこの土地を見ては大層感激して、五人に向かって口々に感謝の言葉を述べる。どうやら羽民達は二日程前、この地にふらりとやって来て住み着いた跋のせいで暮らしが立ち行かなくなり、桃源珠水泉(とうげんしゅすいせん)の近辺にある森の樹上へと避難していたらしい。
彼らは唐人とは異なる衣服を纏った五人が獅子馬を駆って山道を走り抜けて行く様子を樹上から眺め、何者かとこっそりと後をつけて来たのだそうだ。妖狐魔殿については本当に迷惑をしており、あれが出来たせいで羽民達の主食である鸞鳥(らんちょう)の卵が取れなくなったのだと怒っていた。
猩々(しょうじょう)達の言葉にもあったが、金妖帝飛や手下の妖狐達はこの羽民達に取っても招かれざる客であったらしい。「皆さんのおかげで再びこの地に住める様になりました。池も元通りになり、魚(うお)釣りもする事が出来ますし、野菜や米も植えられます。その内鸞鳥も戻って来るでしょう。本当にありがとうございました」
羽民の中でも取り分け年長だと思われる村長らしい痩せた老人が、恭しい包拳の挨拶をする。同じ様に包拳で返した五人を代表し、緑龍之守雅紀が先程猩々から貰った赤い縒り糸付きの釣り針を袂から取り出した。
「これは先程猩々の頭領から貰った釣り針だ。この釣り針を使うと沢山魚が釣れるそうだから、俺達よりもお前達の方が余程これを役立てる事が出来るだろう。見れば未だ幼子も居るようだしな、その鸞鳥なる鳥が戻るまで、これを使ってたくさん魚を釣り、皆にたらふく食わせてやるがいい」
雅紀は掌で空気を掻いて竹で出来た立派な釣竿を出現させると、それに猩々の釣り針を付けて村長らしき羽民へと手渡してやる。両手で掲げる様にそれを受け取った羽民の村長は、感激に瞳を潤ませながら、自らの翼から五枚の羽を抜き取り、五人それぞれに一枚づつ与えた。
「私達は妖力も何も無い平凡な種族です。遠い大和からおいでになり、我々の様なものにこれほどまでに力を尽くして下さった皆さんにお返し出来るのはこんな事位しかありませんが、百年生きた羽民の羽を持つと一時だけ空を飛べる様になるのです。
この先にはとても深くて広い危険な渓谷がございます。以前は吊り橋が架かっていたのですが、金妖帝飛が破壊してしまい、今では渓谷を渡る事が出来なくなっています。新たに橋を架けるにはかなりの日数を費やさなくてはならないでしょう。
私は唯一生き残った、ここでは一番の長老で、齢百五十歳になります。私の羽をお持ちになればあの渓谷を飛んで渡る事が出来、きっとお約束の時間に間に合うでしょう」
すると村長の娘だと思われる女の羽民が、「お父様。皆さんに羅漢薬仙茶(らかんやくせんちゃ)をお持ちしました」と、小さな茶器と急須を持って来て五人に振舞ってくれる。
それは馨(かぐわ)しい香りのする美味しいお茶で、南山の頂上にある特別な羅漢果(らかんか)からしか作れない茶葉を使っているらしい。南山を訪れた仙人達が挙ってそこの羅漢果を持ち帰り、茶葉にして飲むのだそうだ。
これを飲むと数日食事をしなくても元気でいられ、強い力を保てるのだそうで、羽民達に取ってはかなり貴重な茶葉だと言う。跋のせいで住処を追われ、まともに食事も取れずに不自由な樹上生活を強いられていた羽民達にはこのお茶だけが飢えを凌ぎ、元気を保つ唯一の手段だったのである。
そんな貴重な茶葉の、最後の五杯を羽民達は惜しげも無く振舞ってくれたのだ。そんな彼らの心遣いに、五人に対する精一杯の感謝の気持ちが込められている様であった。
「これは凄い!♪確かに力が漲って来るな!♪」元気な雅紀の声に、和也も続けて「たった一口で飲み干せてしまうのに効果覿面ですねぇ」と、掌にあるお猪口みたいな小さい茶器をマジマジと見詰める。
「南山の頂上にしか自生せぬ羅漢果とは珍しい。貴重なものを飲ませて頂き、かたじけなく思います」翔が丁寧に感謝を述べると、潤と智もそれに続いて笑顔で一礼した。
こうして五人の妖術師達は、猩々に続き羽民達にも難関突破の思わぬ手助けを受け、次の謎解きに向かって進み始めたのである。
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はい、と言う事で、今回は跋と羽民の皆様にご登場頂きました跋を華麗に退治する潤智タッグの妖術場面もバッチリ決まり、他のメンバー達にもそれぞれの特技を活かした人助けならぬ妖怪助けに一役買って頂きました
こうして罪なき妖怪達を救う毎に、仕掛けられた罠を回避する手段を手に入れて行くところなどはちょっとRPGゲームの様なノリでしょうか?今回五人が入手したアイテムは長老羽民の羽と羅漢薬仙茶でございましたね
さて、そろそろニノみぃ~のお誕生日企画も始めなくてはならないのですが、未だどう言った方向のお話にするのか未定でございます😅←(大丈夫なのか私)と、兎に角頑張りますね~💦💪💦