これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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七之巻


【東之国 , 九ツ之刻ニテ五行之賢者双頭之蛇之岬ニ集エハ , 此レ地底ニ向カヒシ孟極ト三度呼フ也。頭ニ玟 , 身体白キ霊獣迎へタルハ魔道へ至ル道筋也】


銀白紫の国と水黒青の国に跨る双蛇岬。先頃潤と智が委蛇(いい)を成敗したその場所に、五行の守護神達が集まっている。嘉子姫を攫った妖狐が残して行った巻物の文言がこの場所を指し示していたからだ。


委蛇を退治し、今は静寂を取り戻した涸れ井戸の周辺は清浄な気を纏う気持ちの良い風が吹いていたが、そこにあったとされる稲荷神社は未だ復旧がされておらず、雑草を刈り、瓦礫を撤去した後の荒涼とした地に、宮代や鳥居の残骸が僅かばかり残っているだけであった。


「本当にここでいいんですか?見た所何にもありませんけど」黄水晶(シトリン)の心眼を額に輝かせた麒麟之守和也が月明かりに照らされたその場所に「何だか寒々としてますねぇ~♭」とぼやいている。


緑龍之守雅紀は翠玉(エメラルド)の心眼を与えられた額を撫でて「それにつけても葛葉貴妃様は美しかったなぁ~♪凄まじい色香だった♪」と空を見上げ、「まるであの星の如く輝いておられたわ」と、嬉しそうだ。


「おいおい雅紀殿。あのお方は神獣界の女王で晴明様の御母堂であらせられるぞ。滅多な事を言うものではない」朱雀之守翔が窘めた。その額には紅玉(ルビー)の心眼が輝いている。


「嘉子様を連れ去った妖狐の化身の置き土産には “九つの刻に五行の賢者達が双頭の蛇の岬に集え” と言う様な事が書いてあった。五行の賢者が我らだとすれば双頭の蛇の岬はここ双蛇岬であろう。見るだけで死ぬと言う恐ろしい委蛇の巣食っていた場所だ。


今は社の痕跡が残っているだけの寂しき様子であるが、雑草も刈られ、空気も清浄でちゃんと整地はされている。お二方がこの地をここまでまともな状態に戻したんだな?」


翔の言葉に白虎之守潤が「まあな」と、得意気にニッと微笑う。「俺の従者達と智の従者達も手伝ってくれたけどな。雑草や瓦礫を片付けたら結構広い土地になった。建物は未だ建ててないが、例の涸れ井戸には結界を張ってあるぞ」


潤の説明に智が続けた。「うむ。ここを守っていた稲荷神がもう居らぬ様になってしもぅているからなぁ。建物だけ復旧した所でまた荒れるだけじゃ。事が片付いてから女皇帝様に新しい稲荷神を招致して頂かねばならぬだろうのぅ。


御三方の守護されておる国の稲荷跡もそうであろう?時に朱雀之守殿。妖狐が残した巻物には地底に向かって孟極(もうきょく)と三度呼べと書いてあったが孟極と言うのはやはり唐国の魔物であろうか?」智の質問に翔が頷き、既に暗記し終わった巻物の文言を解説し始める。


「恐らく。巻物には “頭に玟がある白い身体の霊獣が迎えに来る” と書いてあるからそれが孟極と呼ばれる魔物であろう。地底に向かって名を呼ぶ…。詰まり九つの刻に御両人が結界を張った涸れ井戸の底に向かって孟極と3回呼べば良いのだと解釈したが如何かな?」


「良い見立てじゃ。流石は朱雀之守殿だのぅ」智は称える様に翔の背中をポンと叩くと、潤と共に結界を張った涸れ井戸へ向かって歩き始めた。この中では1番小柄な智だが、黒い僧衣をはためかせて歩を進める様はやけに頼もしい。智の持つ持つ錫杖の輪がシャランシャランと澄んだ音を鳴らす。


「これは天晴れな結界だ!」それを一目見た途端、雅紀が感嘆して涸れ井戸に駆け寄った。そこにあったのは朽ちた涸れ井戸を石の土台の如く見立て、金属の骨組みと銀盤を組み合わせた噴水状の結界である。


月光に照らされて輝く噴水は滔々と下る水流も美しく、元々そんな意匠の物がこの場に存在していたかの如く、実に見事な出来栄えであった。「これは銀と真鍮を組み合わせて俺が作った噴水だ。銀にも真鍮にも毒気を判別する性質があるからな。水は智の術で流れる様にして、魔物がここから出て来ない様に封じているんだ」


潤の言葉に和也が「それなら私に一つ太刀でも作って頂けませんかね~?♭智さんの持っている棒みたいのでもいいですから♭丸腰で魔道に入るのは嫌ですよ~♭♭」と、泣き言を言う。


「棒みたいのとは何じゃ♭これは大僧正様から賜れた霊験あらたかな錫杖だぞ♭罰当たりな奴じゃのぅ~♭♭」口の達者な和也が智の文句に屁理屈で返す。「そうは言いますけど智さん。お坊さんぶってる割には剃髪もしていないじゃないですか~。お坊さんは仏門に入る前に頭を剃るのが通常でしょ?」


「儂の髪は母の異形の力の源だから腰より短くするなと大僧正様が申したのじゃ♭儂だとて剃れるものならさっぱりしたいわ♭せめて皆の様に髷でも結って烏帽子を被れるならば良いのじゃがそれも出来ぬ♭」どうやら智が剃髪しないのにもれっきとした事情があるらしい。


智同様烏帽子を被っていない潤も、「俺だって髪型は天竺風だぞ。向こうではこれが粋なんだ」と、適当な事を言って威張った。「どのみちここから魔道へと入るならこの結界は一度解体しなくてはならんし、太刀くらい作ってやるぞ。俺の斬魔刀程ではないにしてもそれなりの魔除けにはなるだろうしな」


これを聞いた和也が早速食いついて来る。「あっそうですか?♪それじゃあ私に軽くて粋なやつをお願いしますよ♪」「和也殿あまり無理を言うもんじゃない♭九つには孟極を呼ばなくてはならないんだぞ♭」勢い混む和也を翔が窘めた。


その間にも智は袖の一振りで結界の水流を消し、潤は虚空に呪文を描いて、一瞬で噴水を金属の瓦礫に変える。「和也殿。簡単な石臼をこの場に作れるか?」「お易い御用♪」和也は地面に手を付き、気合い一発「はっ!」と、地中から岩の塊を出現させ、その中央を掌で押した。


たちまち岩の中心に深い窪みが現れる。「雅紀殿。この窪みの中に樫の木片を入れてくれ」「了解!♪」雅紀は上空に右手を上げ、そのまま岩の窪みに向かって勢い良く振り下ろす。すると和也の作った岩の窪みの中に樫の木片がぎっしりと詰まっていた。


「いいね♪」潤は和也と雅紀の鮮やかな手並みに親指を立てて片目を瞑り、次に翔へと視線を向ける。「分かった♭あと半時程で九つだ。それまでに作ってくれよ♭」翔は樫の木片に息を吹き掛け、たちどころに真っ赤に燃える木炭を作ると、潤の作業をじっと見守った。


「おんあぼきゃべいろしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやうん………」噴水の金属片を次々と炉に投げ入れながら、呪文を唱える潤の眼前で、炉に投げ入れられた金属片が有り得ない速さで溶け、やがて一振りの太刀がまるで生きているかの如く炉の中からスルスルと浮き上がる。


未だ赤々と燃えるそれに智が冷水を放出し、瞬時に冷え固めると、剃刀の如く薄い片刃の刃先を持った黄金色の太刀が出来上がった。次に炉から上がったのは天竺風の透かし彫りが施された黄金色の鞘である。


飾太刀と見紛うばかりのその繊細な意匠は、金属製でありながら軽量で扱い易く、まさに和也の注文通りの逸品であった。「これは洒落てますねぇ~♪流石は潤さん♪非力な私でもこれなら使い易いですよ~♪」


大岩を自由に操れる妖術師の何処が非力なのか、和也は嬉しそうに出来上がったばかりの金太刀を腰に差すと、スルリと抜刀して空を斬って見せた。扱いは思いの外堂に入っており、中々の太刀さばきである。


簡易的に作られた炉はいつの間にやら火が消され、炭は土に、石臼はただの岩に変わって地面に馴染んでいた。だが、結界を失った涸れ井戸は再び地底から僅かばかりの瘴気が立ち昇る様になり、この涸れ井戸が確かに魔道と繋がっている事を示している。


「一応魔除の札を貼っておこうかのぅ。三日程度であればどうにか保(も)つじゃろう」智は袂から呪文を書いた魔除けの札を取り出して、それを涸れ井戸の縁にペタペタと貼り付けると、月の位置を確認して「そろそろ九つじゃ」と、涸れ井戸の底を見下ろした。


「それでは御一同。嘉子姫奪還に魔道へ参るとしよう」五人は涸れ井戸の周囲を取り囲み、声を揃えて「孟極(もうきょく)、孟極、孟極」と、三度繰り返して呼んだ。が、しかし涸れ井戸からは何の反応も無い。「何も出て来ないじゃないですか~♭」「朱雀翔殿の読み違いじゃないのか?」和也と雅紀が巻物の文言を解読した翔に文句を言った。


「妙だな?♭そんな筈はないと思うのだが…♭」翔は少し考えてから、「そうか、孟極は唐国の魔物だから唐の言葉で名を呼ばなくてはならないのかも…」と、進言する。それに意を唱えたのは潤だ。「だが心眼を持っていれば大和の言葉で通じるのでは無いのか?」


「まぁここで議論するのは置いといて、取り敢えず試してみようではないか。“もうきょく” は唐の言葉で何と発音する?朱雀之守殿は唐の書物にも明るいと見たが、どうじゃ?」智の助太刀に何とも嬉しそうな笑顔を見せた翔は至極得意げに説明した。


「無論だ♪自分の能力に悩んでいた頃に昔唐で執筆された『山海経』なる奇書を読んだ♪孟極はその書物にも書かれている妖(あやかし)だ。孟極の事は “もんちぃ” と発音する筈。とは言え私も唐語の全てを理解している訳では無いがな♪」


翔の言葉を信じた一同はそこで試しに「“モンチー” “モンチー” “モンチー” 」と、三度呼び掛けてみる。すると涸れ井戸の底からその呼び掛けに呼応する様に「モンチーーーー!」と言う、思いの外可愛らしい声が聞こえて来た。


「おおっ!♭返事しましたよ!♭」和也が思わず後退る。「可愛い声ではないか♪斬るなよ麒麟和也殿♪」ビビる和也とは逆に前のめりで涸れ井戸を覗き込んだのは雅紀だ。「大丈夫だぞ♪いじめやしないから出ておいで♪」


モンチーモンチーと連呼する雅紀に智が「緑龍之守殿は獣が好きなんじゃな♪」と、ほっこりしている。「戦う相手は狐ですから♭獣好きじゃ困るんですけどね~♭♭」すかさず和也が物申した。そうこうしている内に涸れ井戸の底からモクモクと白煙が上がり、それは次第に大きくなって、辺り一面に広がって行く。


「モンチーーーー!」煙が晴れ、甲高い鳴き声と共にそこに現れたのは、真っ白い体毛に覆われた、驚く程に巨大な獣であった。巻物の文言通り、額には斑紋があり、背中の方にもうっすらと斑紋が伺える。


尖った耳に長い尻尾。体長は十六尺(約5メートル)はありそうなそいつは、先程まで炉として使っていた大岩に身体を丸めて伏せており、呑気そうに五人をじっと見詰めていた。


孟極を描いたイラスト(拾い画)に、パソコンで夜空の背景をつけましたニコニコ一説では孟極はユキヒョウだったのではないかと言われておりますにっこり体長は5mも無かったと思いますけどアセアセ私の中では映画『ネバーエンディングストーリー』に登場するファルコンにユキヒョウを足して2で割った様なイメージで思い描いていますウインク

「何だか虎に似ているなぁ~♪白虎潤殿とは親戚みたいなもんじゃないのか?♪」雅紀はそんな冗談を言って孟極に歩み寄ると、恐れる事無くその首元を掌で撫で回す。孟極はそんな雅紀を威嚇する事も無く、大きな顔を傾けてグルグルと喉を鳴らした。

「こんな図体のでかい親戚を持った覚えはないが…♭こいつは思ったよりもずっと人馴れしているらしい♭」おっかなびっくり孟極に近寄った潤はおずおずと手を伸ばすと、その背中をそっと撫でる。孟極は嬉しそうに尻尾を振るが、何せ巨大なので尻尾の一振りでつむじ風が起きそうな勢いだ。

「山海経でも孟極はよく人に馴れると記してあったが…。魔物の割には悪しき気配は感じないな…」潤に続いて翔も孟極に近づいて行き、そのフサフサとした毛並みを興味深そうに眺めている。

「魔物が全て瘴気を発していると言う訳ではないからのぅ。どうやらこの獣は単に我らを魔道へ導く為だけに遣わされた人畜無害な妖獣らしい。潤の斬魔刀が鍔鳴りせぬのもその為じゃ。しかし嘉子姫は乱暴に拐(かどわ)かしたくせに何故妲己は我らにこの獣を寄越したのかのぅ」

智に眉間を撫でられるのが気持ちいいのか、孟極は目を細めて盛んに喉を鳴らしていた。唯一和也だけは腰が引けており、遠巻きに孟極を見やっては「こいついきなり噛みつかないでしょうねぇ~♭♭」と疑心暗鬼である。

孟極はそんな和也に向かって長い尻尾を伸ばし、その身体を絡め取ると、あれよあれよという間に自分の背中に乗せた。ひぃ~~~~~っと言う悲鳴と共に背に乗せられた和也は、半ば放心状態で孟極の背中にしがみついている。

「そうかそうか♪お前は俺達に背中に乗って欲しいんだな?♪」草木と会話出来る雅紀にはどうやら孟極の気持ちが分かるらしい。自ら進んで背中に乗り、一番前を陣取って孟極の首元を両腕で抱いた。「お前はふかふかだなぁ~♪」続いて翔が乗り、和也を間に挟んで智が、最後尾に潤が孟極の背中に乗った。

「それじゃあモンチー♪俺達を魔道へ連れて行ってくれ♪」雅紀が孟極の首をポンポンと叩く。それを合図に立ち上がった孟極は、「モンチーーーー!」と、一声鳴いてからフワリと浮き上がった。五人の周りを再びモクモクと白煙が取り囲む。

その途端、一体どんな作用が働いたのか、皆の全身を吸い込まれる様な感覚が襲い、五人の妖術師達は白煙諸共涸れ井戸の中へと消えて行ったのである。

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さぁ、五人はいよいよ魔道へと馳せ参じます!チョキウインク今回は噴水の結界だったり、潤君の錬金術だったり、ニノみぃ~や相葉ちゃん、翔君の術も登場して、霊獣孟極まで登場すると言う、何とも盛り沢山な内容になりましたウインク

今回のお話の冒頭にありました様に、5人の魔道での活躍は、巻物に記された謎の文言と共に展開して行く事になりますニコニコ今回の孟極の様に、出来れば妖怪辞典的な挿絵も挿入して行きたいと思っておりますので、そちらの方もお楽しみ頂けたら幸いでございます照れ