これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕


【終焉】


#3


救急車の到着に騒然とする現場に、渋谷西署のにのあいコンビが駆けつけて来る。にのあいコンビは警察手帳を出し、ザワつく報道陣を追い払うと、そのまま病院へと運ばれて行く吉塩牛有紗と前原廣人を見送った。


吉塩牛に妹が居るらしい事は当然警察も掴んではいたのだが、吉塩牛が妹に連絡を取った様子はまるで無く、また事情聴取などでも妹の話は全く出て来なかったことから、彼女の事はノーマークだったのだ。


当然の事ながら、ニュースやワイドショーでも吉塩牛の妹の存在をほのめかす様な報道は成されておらず、恐らくはSNSなどからの所謂 “晒し” での露呈だったのであろうが、もし彼女が吉塩牛などと言う特徴的な苗字で無かったのなら、こんな事にはならなかったんじゃないかと思うと、忸怩たる思いのするにのあいコンビであった。


「…相葉君。俺久々に超絶ムカついてんだけど、この気持ちどうすりゃいいんだろうね…」未だチラホラと現場に残り、遠巻きにマンションを見上げている報道陣達を静かに睨みつけ、二宮が沈んだ声で呟く。


いつもは毒舌で茶化してばかりの二宮がこんな様子を見せるのは本気で怒っているからだと、長い付き合いの相葉にはよく分かっていた。だから何も応えず、ただ小さく「分かってる…」とだけ言った。


マンションの中に入ると、吉塩牛有紗の部屋の前で二宮以上に怒りのオーラを燃え立たせている潤の姿がある。潤は暗い目をして「まさか妹がいたとはな…」と、にのあいコンビに視線を向けた。


潤はコンコンと貼り紙の上でノックをしてから「こんなクソみてぇな嫌がらせやった奴ら全員逮捕しろ。今じゃ誹謗中傷は立派な刑事罰の対象なんだからよ」と、捨て台詞を吐いて歩き始めた。


「知ってたか?吉塩牛有紗は冤罪被害者の前原勝廣の弟と付き合ってるぜ。吉塩牛がダンマリ決め込んでんのもその辺の事が関係してんじゃねぇのか?」通りすがりに囁かれたその情報に、にのあいコンビがハッとして振り返る。潤は背中越しに「病院へ行って来る」と、2人に告げてからそのまま歩き去って行った。


**


にのあいコンビからの連絡で駆けつけてくれた西麻布署のベテラン鑑識官である貝原は、にのあいコンビとの再会に感慨深い表情で一礼し、西麻布署では全員一丸となって渋谷西署に協力したいと申し出てくれた。


「まさか吉塩牛刑事に妹さんがいたとは我々鑑識はおろか、捜一の同僚も殆ど知らなかったんですよ。吉塩牛刑事本人からも妹さんの話は一度も出た事が無いそうでしてね。だから我々も腹立たしいんです。


吉塩牛刑事にはあんな大きな犯罪を犯す前に妹さんの事を少しでも考えた事があるのかと怒鳴りつけてやりたい気分ですよ」貝原はドアに貼られた誹謗中傷の貼り紙を回収し、「これは持ち帰ってニンヒドリン検査をします。紙からも指紋は取れますので」と、吉塩牛有紗の部屋に入って行った。


良く片付いた清潔な部屋である。年頃の女子の部屋にしてはいささかシンプル過ぎる感じではあるが、彼女が無駄遣いなどせず、毎日懸命に福祉センターの仕事と向き合っていた様子がこの部屋の中だけでも容易に見て取れた。


「いいお部屋ですね。長い間鑑識やっていますと、その部屋の住人が普段どんな生活をしていたのかある程度分かるんですが、吉塩牛有紗さんは本当に真面目でちゃんとしたお嬢さんだった様です。


キッチンや水周りも良く片付いている。ですがコンビニやスーパーで出来合いのおかずを買っている様な形跡はありません。毎日ちゃんとお料理をして質素に健気に頑張っていらっしゃったんでしょう。こんなにいい妹さんがいるのに何で吉塩牛刑事は…」


貝原は言葉に詰まり、「本当に情けない…」と、憎々しげに呟いてから、突然険しい顔つきになった。「二宮さん、相葉さん、どうやらこの部屋盗聴されているようですよ」貝原は部屋を検分するにのあいコンビに手招きをして、炊飯器付近にあるコンセントを指差すと、ドライバーを使ってコンセントカバーを外す。中には黒くて小さな盗聴器が仕込まれていた。


「他にもあるかも知れません。探してみます」するとリビングからも寝室からも同じ型の盗聴器が見つかったのである。「ニノちゃん…♭これって…♭」「うん♭どうやらこれを仕掛けた奴が悪評拡散の元ネタっぽいな…♭」


二宮がそう呟いた時、隣の部屋から何やらバタバタとした騒々しい物音と、慌てて玄関を開ける物音が聞こえて来た。「相葉君隣!」「任せろ!!」物凄いスピードで玄関を飛び出して行った相葉を見送り、二宮は本棚の中を調べてみる。


コミックの類いなどは殆ど見当たらず、仕事に関係する参考書ばかりが並んだ本棚だったが、その中に分厚いファイルケースが混じっており、吉塩牛有紗がこれまでに手掛けて来た様々なイベントや行政活動等の資料が綺麗に纏められていた。


「いいコだなぁ~…兄貴と全然似てねぇじゃん♭」資料には彼女がこの仕事をするきっかけになった消費者センターのセミナーに参加した物も含まれており、彼女の隣で嬉しそうにピースしている准教授時代の櫻井の写真も入っている。


「ったく♭こんなチャラいのがあの名門大学の教授になるとはねぇ~♭」微毒を吐いて薄笑いを浮かべつつ、資料をめくる二宮の目にいきなり飛び込んで来た名前があった。


「黒塚磐男…♭♭」それは吉塩牛有紗がかなりの長期間に渡り手掛けて来た社会福祉法人施設の設立についての資料だったのだが、それを積極的に推進していた筆頭が黒塚磐男だったのである。だが、その計画は最近になって立ち消えになっており、吉塩牛有紗には役所から解雇通知が届いていた。「…成る程ね…♭読めて来た…♭」


どうやらその施設の設立について始めに計画していたのは前原廣人だったらしい。その話を吉塩牛有紗が聞いて共感し、2人で協力してどうにか形になりそうな所にまで到達した矢先の立ち消えだったらしく、ファイルの最後には『ごめんなさい、廣人さん…』と言う彼女の言葉が滲んだペン文字で書かれていた。


そこに先程隣人を追いかけて行った相葉が帰って来る。玄関を開けた二宮の目の前に押し出された男は両手に手錠を嵌められてガックリと項垂れていた。「ニノちゃん。このクズを紹介するよ。平良ビョーキ君だ」「…いえ…♭凌輝(りょうき)です…♭平良凌輝…♭」


消え入りそうな声で訂正する男に被せる様に相葉が言った。「お前なんかビョーキで充分だろーが!」相葉に小突かれ、泣きそうな顔で二宮を見上げた男は、バツが悪そうに眉尻を下げる。髪はボサボサだが、その鼻ピアスには二宮にもはっきりと覚えがあった。


「これはこれは平良君。犬山から聞いたお前のヤサを訪ねたら、だいぶ前から留守だってんで何処に姿をくらませたのかと思ったら…。まさかいたいけな女子をいたぶるゴミに成り下がっていたとはな…。おめでとう。これで執行猶予は取り消しだねぇ…」


平良の胸ぐらを掴み、顔を寄せた二宮は「今からゆっくり取り調べてやるから覚悟しとけ…」と、実に凶悪な顔つきで脅しをかけたのであった。


**


「俺ストーカーじゃありません♭そりゃあ有紗ちゃんの事は好きでしたよ♭俺みたいのにも顔を合わせたらちゃんと挨拶してくれる様な可愛いコだったし、本当はあんな事したくなかったんですよ♭♭」


渋谷西署の取り調べ室では連行された平良凌輝が二宮に詰め寄られ、懸命に弁明していた。「はぁ?彼女の部屋中に盗聴器仕掛けてやがった変態が、ストーカーじゃねぇってか?お前さぁ~。俺の親戚の幼稚園児の方がもっと上手な言い訳すんだけど?


エロ動画関連でとっ捕まった前科がある癖に、今更マトモぶってんじゃないよ。かつてお前の仲間だったあの犬山ですら狂犬から可愛い飼い犬みたく変わったってのに、お前は狂犬のままか?


いや狂犬だってちゃんと躾りゃ賢くなるんだからお前はそれ以下だよな?彼氏が居たのが気に入らなかったのか?だから何の罪もない女の子に噛み付いてビョーキ移したのか?平良ビョーキ君よ~。


お前なんぞ世界中のどんな病原体よりも最低最悪な病原菌だよ。ただのバイ菌が偉そうにインフルエンサー気取ってんじゃねぇ。ほらここに炎上の火元になったアカウントがあるんだよ。優秀な鑑識官が調べてくれたよ。


ブログもTwitterも、ネットニュースのコメ欄も、玄関の貼り紙まで全部が全部お前が発信元だよな?平良。自分の拡散しまくった情報で段々と追い詰められてく彼女を見て楽しかったか?


役所をクビになって、情熱燃やしてた社会福祉事業が出来なくなって、世間からボコボコに叩かれて、絶望してリストカットして救急車で運ばれた瀕死の彼女にざまぁとでも思ったか?


それで好きだったとか笑わせんじゃないよ。お前のやった事はなぁ、完っ全にストーカーなんだよ。今度は平良。お前が社会的制裁を受ける番だよ。彼女がどんな気持ちだったのか、これから檻の中でじっくりと味わうこったな」


二宮の取り調べはとことん辛辣だ。二宮に取り調べを受けた犯人は二宮が次々と吐き出す猛毒にすっかりやられて抜け殻の様になってしまう。平良凌輝も二宮の言葉のカウンターパンチで叩きのめされ、俯いたままメソメソと泣いていた。


だが二宮が吉塩牛有紗の自殺未遂の話を持ち出し、ざまぁなどと言う酷い言い方をするのは、いかに平良を責める為とは言え、あまり彼らしくない物言いである。犯罪者には毒舌だが、被害者には優しい男なのだ。なのに二宮がこんな言い草をしたのには大きな理由があった。


取り調べ室には鏡に見せ掛けたマジックミラーが張ってあり、隣の部屋から見られる様になっている。二宮は捜査一課長の風間に頼み、取り調べ中の吉塩牛にこの光景を見学させたかったのだ。この取り調べを見れば吉塩牛は落ちる。そう確信していた。


「本当に違うんです…。俺…まさか有紗ちゃんが自殺しようとするなんて思ってもみなかった…。俺… “ヨシ” って奴に頼まれただけなんですよ…。『ストレイドックス』が解散になって…。俺…行き詰まってたんです…。


中々働き口も決まんなくてそれで犬山と時々会って相談に乗って貰ってた…。でも犬山も彼女が妊娠してからあんま会えなくなって…。そんな時見つけたのが『ラッシュワーク』の闇バイトだったんです…。


“ヨシ” って奴がヤバいってのは知ってたし、あいつはガチだからあんま関わるなって犬山にも言われてたんだけど…。バイトの内容は在宅のネット業務だったし、月収50万だったから、美味しいと思っちゃって…。


それで応募したら直ぐに “ヨシ” から連絡があって…。手付けで30万俺の口座に振り込まれてて…。有紗ちゃんの隣の部屋が借りられてた…。それで溜まってたアパートの家賃払って直ぐあの部屋に移りました…。


“ヨシ” から頼まれたのは有紗ちゃんの部屋に盗聴器を仕掛けて2ヶ月くらい彼女の生活を監視する事です…。何の為にそんな事をするのか全然分からなかったんだけど、先月にもちゃんと口座に50万振り込まれてたんでまぁいいかと思ってて…。


その内に吉塩牛って名前の刑事さんが逮捕されたってニュースが出て、タイミングを見計らったみたいに “ヨシ” から連絡があったんです…。有紗ちゃんは逮捕された刑事の妹で、兄の不正の恩恵を受けていると…。


だから有紗ちゃんが犯罪者の妹だと世間に広めて兄妹の不正の温床を潰さなきゃいけないと言われて…。あの有紗ちゃんがまさかとは思ったんですが…。金も貰ってるし、匿名で拡散するだけなら大した事じゃないと思ったんです…。


だけど有紗ちゃんがあんな事になっちゃって…。俺怖くなって “ヨシ” に連絡入れてみたんですけど…。“ヨシ” の電話番号もメルアドも使われなくなってて…。盗聴器が見つかった時、もうヤバいと思って…」


どうやら平良の前歴を知った “ヨシ” に上手く利用されたらしい。「ごめんなさい♭ごめんなさい♭♭」そう繰り返して泣く平良を冷めた目で見やり、二宮は「また “ヨシ” か…♭あの野郎、やりたい放題だな♭」と、忌々しげに呟いて、マジックミラーの方角に首を傾(かたむ)けた。


「これからも吉塩牛有紗さんはお前のせいで苦しめられるんだよ!デジタルタトゥーってのは1度刻まれたら一生消せない傷になるんだ!事ある毎に誰かが書くよ!犯罪者の妹だってな!お前は吉塩牛有紗さんの真っ白で真っ当な経歴を滅茶苦茶に汚したんだよ!


おい平良!お前みたいなクズがどうやって彼女の人生の責任を取るんだ?!お前の拡散した死ぬ程低脳な誹謗中傷が!有紗さんが救える筈だった大勢の弱い人々を殺してくんだよ!まぁいいかだと?!大した事じゃないってか?!


確かに今の法律じゃお前のやった事なんてさほど重罪にならないだろうが、それでもな!平良!少なくとも俺は!世間は!絶対にお前を許さねぇよ!それを噛み締めてムショに行きやがれ!」


取り調べ室のテーブルを両手で叩いて立ち上がった二宮は「相葉君あとは頼む!こいつ見てると吐き気がして来るわ!♭」と、取り調べ室を退出した。うわぁぁぁぁ!!テーブルに伏せて号泣する平良を、二宮と交代した相葉が気の毒そうに見つめる。


後は相葉が優しい言葉で傷心の平良から田淵義哉の情報を上手く引き出してくれるだろう。二宮はそれを期待しつつ隣室に赴いた。隣室では手錠姿の吉塩牛が床に蹲り、わなわなと震えながら「…話が違う…♭まさか有紗がそんな…♭♭」と、両手に顔を埋め、呻く様な声で慟哭している。


それを哀れみの籠った瞳で見下ろしながら、捜査一課長の風間が言った「…これで分かっただろう吉塩牛…お前はあの人に切り捨てられたんだ…。何を吹き込まれたのかは知らないが、お前がどんなに庇い立てした所で有紗さんの境遇はちっとも変わっちゃいない…」


風間の言葉に続き、二宮がトドメに吐き捨てる。「何の罪もない有紗さんがあんたのせいで一生消えない心の傷を負わされたんだヨシギュウ。有紗さんが恋人と共に懸命に実現化しようとしていた社会福祉法人施設はなぁ、筆頭の黒塚磐男先生が手を引いたせいで計画そのものが無くなっちまったんだよ。


何でか分かるか?犯罪者の妹が計画に関わっていたからってな、黒塚先生はあくまでも自分は無関係だと清廉潔白を主張する為に、計画を叩き潰したんだよ。あんたの妹を槍玉にあげて悪評を垂れ流し、計画から手を引くための大義名分を、自分の保身の為だけに世間に拡散したのさ。


さすがは黒塚先生だ、少しの不正も許さない区民の鑑だと巷じゃ絶賛されてるよ。これで参院選は当選したも同然だよな?あんたはそんな男を有紗さんを犠牲にしてまで守ってやってるんだよ。あの男にそんな値打ちがあんのか?」


黒塚が巷で絶賛されていると言うのは二宮が大袈裟に話を盛った作り話である。だが、吉塩牛が黙秘を貫いている限り、いずれはそうなるであろう。明らかにクロにも関わらず、黒塚磐男が『時計じかけのアンブレラ』事件に関与している証拠が未だ出ていないからだ。


だが、ここで吉塩牛の証言が取れれば活路は見い出せそうな気がした。「…なぁヨシギュウ…。あんた、もしかしたら知ってたんじゃねぇの…?有紗さんが前原勝廣の弟と付き合ってた事…。だから2人の悲願を叶えてやりたかったんだろう…?


ずっと後悔していたんじゃないのか?前原勝廣を誤認逮捕して死に追いやった事…。地域に新しい社会福祉法人施設が完成すれば地元の大勢の困った人達が救われる。その中には犯罪者家族のケアも含まれてんだろ…?


犯罪者の家族ってだけで世間の誹謗中傷の被害に遭い、たまりかねて命を絶つ様な人達を…刑務所で自殺した前原勝廣や前原廣人の両親みたいな悲劇を二度と起こしたりしない様に…。ずっと疎遠だった妹とは言え、あんたは有紗さんを影で見守ってやってたんじゃねぇのか…?


彼女が恋人の前原廣人と共に心血注いで努力していた施設の設立を、あんたはどうにかして叶えてやりたかったんだろう?黒塚先生に何て言われたんだ?妹の事は心配するなとでも言われていたか?そうなんだろう?」


二宮の声を呆然と聞き、吉塩牛はポロポロと涙を零して「…有紗…本当に済まなかった…」と、搾り出すように呟いた。そしてついに口を開いたのである。


🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕🕕


ヨシギュウがやっと事件の真相を語り始めましたニコニコこれで漸くラスボス黒塚磐男逮捕に1歩前進でございますグッウインク次回はいよいよ連続殺人鬼 “ヨシ” に最強タッグで挑みます💪😤😤😤