これは嵐君メンバーの名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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【終焉】


#2


にのあいコンビが田淵義哉の足取りを追いかけている頃、陵英光華大学の国文科教授櫻井は、講義の合間を縫い、ここの所研究助手として研究室に入り浸っている菊池の様子を見守りつつ、ある共同作業を行っていた。


菊池は自分が解析した小諸若希の映像が、智の控訴審で大きな効果をもたらせ、悪徳刑事の吉塩牛を摘発する手助けになった事が余程嬉しかったらしい。小諸の弔い合戦だとばかりに、出来る範囲で櫻井に協力し、『時計じかけのアンブレラ』事件についての独自の調査を懸命に行っている。


菊池が新しい情報を入手すれば、それを櫻井が精査して自分の得た情報と共に智に伝え、裏取りが必要なら智から私立探偵の潤へと調査依頼をする。この連携関係がにのあいコンビの捜査にも大いに役立っていた。


智の第1回控訴審を傍聴していた櫻井は、法廷での智の、美しく凛とした佇まいに見惚れながらも、ずっと考えていた事があった。吉塩牛刑事の事だ。


かなり特徴のある名前なので記憶に残っていたのだろう。ずっと以前、この珍しい名前を聞いた事があった筈だと、それがいつだったのかを思い出そうとしていたのである。


そしてつい数時間前の講義の際に急激に閃いた。『現代社会に於ける言語の変容と、マスメディアの発展と衰退』このテーマに沿った今回の内容で、消費者センターの電話相談室の事を取り上げた時に、吉塩牛と言う名前を思い出したのである。


櫻井が未だ陵英光華大学の准教授だった頃、文学や言語に関する様々なセミナーに参加していた時があった。


その中のひとつに消費者センターで働くテレフォンアドバイザーのセミナーがあり、理不尽なクレームや、消費者詐欺の被害者など、そんな多種多様な消費者の声に対応する話し方のテクニックを学んだ事があり、そこに参加していた若い女性が吉塩牛と言う名前だったのである。


櫻井は自分の学んだ事を全てファイルにしてパソコンのクラウドに保存してあった。きっとその時のセミナーの内容も残っている筈だと菊池の協力を得て過去のファイルを全て掘り起こしていたのだ。


「菊池君見つかった?」自分が准教授だった頃の過去のファイルに忙しく目を通しながら聞く櫻井に、菊池は「未だです♭て言うか教授♭どんだけセミナーに参加していたんですか♭」と、首をゴキゴキ鳴らした。


「そんな事言われたって、言葉に関する知識はなるだけ多く吸収しとかないとってあの時期は必死だったんだよ♭あっ!」「ありましたか?!」「違った♭これは通信販売の売り得セミナーだ♭」「何なんですかそのセミナー♭♭」


「これはすごいんだよ。通販の名人が物を売る為の話し方テクニックを教えてくれるセミナーでね。便利グッズいっぱい買っちゃって妹夫婦に怒られた」「それ学びに行ってぼられちゃってるじゃないですか~♭♭」「えっ?♭俺ぼられたの?♭♭」


軽く凹む櫻井を気の毒そうに眺めやった菊池は、気を取り直して再びパソコンの画面へと向かう。そして250個目のファイルを開いた時にやっと目的のセミナーのファイルを見つけたのである。「教授!ありました!『電話で繋ぐ区民の心~消費者センターアドバイザーの日常~』これじゃないですか?!」


菊池がクリックしたファイルには、そのセミナーの概要が端的に纏められており、講師と参加者の写真、櫻井らしい視点で丁寧な感想が記録されていた。


「そうそう、これこれ!いいセミナーだったんだよ。講師として来ていたアドバイザーの人がとても熱心な人でね。相談者の心に寄り添う話し方って言うのを教えてくれて…。ほら彼女が吉塩牛さんだ」


櫻井が指差した集合写真には、女性と言うよりも少女に近い様な、やや幼い顔立ちをした長い黒髪の女の子が写っていた。参加者の女性の中では最も若いと思われる彼女は、セミナーのカタログを大切そうに両手で抱き、穏やかな笑顔で小首を傾げている。


その隣には少年時代のチャラさを未だその面影に残した准教授期の櫻井が、ピースサインで笑顔を浮かべていた。「やっぱ若い頃の教授ってチャラいっすねぇ~♭思いっきり彼女の隣に居るじゃないですか♭」「これでもだいぶマシになった方だぞ♭中高はガングロでピアスだったんだから♭」


例のストーカー事件で発覚した少年時代の櫻井は仲間内ですっかり有名になっている。菊池はハハハ~♭と愛想笑いで応え、「それで?彼女がどうしたんですか?」と聞いた。


「いや、俺も少し話しただけでそんなに親しくなった訳じゃないんだけど、いい子だったよ。将来はこのセミナーの講師みたいに、地域の人達の役に立つ人間になりたいって言ってた。あと吉塩牛って苗字があんまり好きじゃないんだとも…。


それから彼女にはお兄さんがいて、考え方が真逆だとも言ってたよ。だから余り仲が良くないんだと…。もう何年もまともに話してないってね。だから自分はお兄さんを反面教師にして、人にちゃんと寄り添える人間になりたいんだって…」


「教授…♭まさかこの女の子…♭♭」「うん、もしかしたら吉塩牛刑事の妹さんなんじゃないか?だってこんな珍しい苗字の持ち主って都内に何人もいないだろう?」「彼女を探してみます!♭」


菊池は女性の写真と吉塩牛と言う苗字を参考に、ありとあらゆるSNS媒体の検索をし始めた。するとその女性が書いたと思われるブログが見つかったのだ。“moo” と言うハンドルネームで書かれていた『つなぐ』と言うブログは、彼女が役所の福祉センター職員として奮闘する日常のあれこれが、女性らしい優しい文体で綴られていた。


特に彼女が力を入れていたのが地域医療や認知症高齢者対策、ヤングケアラーや低所得者支援等の問題である。時には保健所と連携したり、時には法律事務所の力を借りたりして、相談者の悩みに真摯に取り組む姿勢には胸を打つ物があった。


ところが、第1回の控訴審直後からブログの更新は止まり、それ以降、ただの1文も書かれていなかったのである。「大変です教授♭彼女のブログ、大炎上してますよ♭吉塩牛刑事の犯罪が露見したせいです♭酷い誹謗中傷ですよ♭♭」


《悪徳刑事の妹が国民の税金でのうのうと暮らしてんじゃねぇよ!氏ね!》《この人犯罪者の妹で~す!みんなで袋叩きにしませんか~!》《兄が兄なら妹も妹だ!税金ドロボー!日本から出ていけブス!》《氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね氏ね!》


ブログのコメント欄に並ぶのは、どれもこれも無責任で無神経な、見るに耐えない誹謗中傷である。ものすごく嫌な予感がした。「菊池君!彼女のブログ記事から居住地が特定出来ないか?!♭智君に…♭いや駄目だ智君は今日法律相談で出張中だった!♭松本君にすぐ知らせないと!♭♭」


櫻井がスマホを取り上げると同時に菊池がブログの写真や文章を解析し、女性の居住地を探る。櫻井からの電話に潤はちょっと嫌そうな声を出したが、吉塩牛に妹が居たと知り、またその彼女が吉塩牛の犯罪で誹謗中傷の被害を受けていると分かった途端、すぐに行動を開始した様子であった。


「彼女の自宅スナップから多分渋谷のちびっ子公園周辺だと思います! “メゾン” と言う文字が見えます!」「ちびっ子公園周辺の “メゾン” が付く独身者用ワンルームだ!♭多分メディア関係者がうろついている筈!♭」菊池の声を受けて櫻井が潤に伝える。


〖ちびっ子公園なら渋谷西署の管轄だぜ!分かった!ニノや相葉にも伝えとく!!〗通話が切れた。「手遅れにならなければいいんだけど…♭♭」櫻井はセミナーで会ったあの少女の様な優しげな女性の風貌を思い浮かべ、ひたすらに祈るのだった。


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櫻井から聞いたちびっ子公園付近に到着した私立探偵の潤は、スマホのナビを頼りに周辺にあるワンルームマンションを探し始めた。この辺りのワンルームマンションで “メゾン” が付く場所は2つある。『シャルル・メゾン』と『サンメゾン碧玉』だ。


潤は先ず『サンメゾン碧玉』へと向かう事にしてその道のりを駆け出した。青い宝石の意味がある “碧玉” が何となく智を連想させたからだ。頼むぜ…♭間に合ってくれよ…♭誹謗中傷の被害がどれほど過酷な物なのか、潤には良く分かっていた。


昔潤の兄の淳平が依頼人女性のストーカーによって殺害された時、マスコミにまるで淳平が依頼人とデキていたかのような捏造記事を量産され、被害者でありながら淳平への誹謗中傷の矢面に立たされた経験があるからだ。


『グッドラック探偵社』が一時期休業に追いやられたのも、そんなマスコミの捏造記事で嫌がらせが相次ぎ、暫く仕事にならなかったからである。だからこそ櫻井からの連絡を受けてソッコーでヤバいと感じたのだ。


吉塩牛に妹が存在したのも驚きだが、何よりその妹らしき女性の精神状態が心配であった。潤の場合は捏造だったが今回は彼女の兄が実際に犯した犯罪である。聞けば役所の福祉センターで彼女は懸命に働いていたそうだ。


兄の吉塩牛が犯した罪は許せないが、だからと言ってその妹である彼女には何の関係もないのだ。理不尽な誹謗中傷に晒される事など絶対にあってはならない。


急いで『サンメゾン碧玉』に駆けつけた潤の目に入って来たのは、たくさんのマスコミ関係者とそれに対応して声を荒らげる1人の青年だった。


「やめて下さい!♭彼女とお兄さんはずっと疎遠だったんです!♭お兄さんの事なんか彼女は何も知りません!♭あなた方マスコミは彼女をあの頃の僕と同じ目に遭わせるつもりなのか?!♭いい加減にしてくれ!♭」


マスコミの1人が青年に向かって無遠慮にマイクを突き出す。「ですが前原さん!吉塩牛有紗(よししおうしゆさ)さんはあなたのお兄さんに冤罪の罪を着せて自殺に追いやった当事者の妹なんですよ?!許せるんですか?!」


「許すも許さないも兄の冤罪と彼女に何の関係があるんですか?!♭第一兄を自殺に追い込んだのは無実の兄を人殺しと書き立てたあなた方マスコミの報道じゃないか!♭いいからもう帰ってくれ!♭警察を呼びますよ!♭」


報道陣を押し退け、マンションの中に入って行く青年に、ジャーナリスト達が執拗に追いすがる。そこで潤は「すみません。ご近所から苦情が出ていますのでお帰り下さい。もうじき警察が到着しますよ」と、まるで住民のような振りをして青年に続いた。


さすがにマンションの敷地内に足を踏み入れる報道陣はおらず、潤は青年と共にエレベーターに乗り込み、ここで初めて自己紹介をする。ブラックジーンズにロック柄の白Tシャツ、シルバーのペンダントと指輪、緩く上げた前髪に黒いティアドロップのサングラス。


いつもの如くご機嫌なロックバンドみたいな出で立ちの潤に、青年は胡散臭そうに眉を顰めたが、大野弁護士を手伝っている私立探偵だと聞いて態度を軟化させた。


「大野弁護士の…。この間の裁判で昔の兄の冤罪を晴らして下さった若い弁護士さんですね?兄が刑務所で自殺してから13年も掛かりましたが、それでも無実だと証明して頂けた事でようやく兄の墓に報告が出来ました。ありがとうとお伝え下さい」


礼儀正しく一礼する青年に潤はサングラスを外し、それを頭の上に移動させると、訪問の理由をかいつまんで説明した。「実は有紗さんが心配でお訪ねしたんです。彼女のブログを拝見しましてね、更新が止まっていたので何かあったのかと…」


青年は頷き、自分の名前は前原廣人(まえはらひろと)だと名乗った。田淵実余子の愛人を殺害した罪で吉塩牛に誤認逮捕され、無実を訴えながら刑務所で自殺した冤罪被害者、前原勝廣の弟で、当時は高校生だったそうだ。


「僕と有紗が出会ったきっかけは福祉センターの電話相談でした。兄が殺人の罪で逮捕されてから、僕の家族は世間からの冷たい目に晒されて生きて来ました。兄は無実を訴え続けていましたが、スナックの女なんかにうつつを抜かし、貯金を全て使い果たして借金までしていた兄を家族は信用しませんでした。


頼むから早く罪を認めて黙って刑に服してくれと、面会に行く度に僕ら家族は兄を説得していました。マスコミに叩かれ、世間に白い目で見られ、僕達家族の精神も限界だったんです。そんな中、兄の勝廣は刑務所で自殺しました。


もしかしたら兄を追い込んだのは僕達家族だったのかも知れません。だけど、あの時は兄の無罪をどうしても信じられなかったんです。だから兄が自殺したと聞いた時は、僕達家族もこれで騒ぎが治まるだろうと少し安心しました。


でもマスコミは逃げ得だ、自分の犯した罪に責任も取らずに死ぬなんて卑怯だとまた書き立てて、死んでも尚兄を責め続けました。父は会社をクビになり、家族の為にどうにか頑張ろうと必死で家計を支えていた父の精神の糸はそこで切れてしまったのです。


ある日、僕が高校から帰ると、父が母を道連れに首を吊っていました。僕だって殺人犯の弟だと学校で酷いイジメに遭っていたのに、両親は勝手に死んでしまった…。1人残された僕は高校を退学し、田舎の祖父と祖母に引き取られて、暫くは両親の保険金で生活していました。


だけどずっと祖父や祖母に迷惑は掛けられないから、またこっちに出て来て1人で暮らし始めました。福祉センターに電話を掛けたのはそんな時です。高校中退の犯罪者家族でも働ける様な職場を探して貰おうと相談しました。


そんな僕に寄り添い、親身になってくれたのが有紗です。だけど有紗が珍しい苗字だった事で、僕は兄を逮捕した刑事の妹だったと知り、始めは反発していたんです。酷い言葉で八つ当たりした事もあります。


それでも有紗は諦めませんでした。あなたは何も悪くないといつも僕を励まし、いい職場も、紹介してくれて、僕の荒んだ気持ちは段々と変わって行きました。だから今度は僕が有紗を助けないと…」


エレベーターの中で自分の身の上を潤に話した前原廣人は、吉塩牛有紗の住む部屋のドアに駆け寄ると、インターフォンを鳴らし、「有紗!有紗!」と、声を掛けた。ドアには『犯罪者家族!』『出て行け!』などと貼り紙がされており、彼女の置かれた悲惨な状況を物語っている。


ドアを叩き、何度も名前を呼ぶ廣人の声に吉塩牛有紗の応答はなく、遠くで水の流れる音が聞こえていた。すると前原廣人はポケットから合鍵を取り出し、玄関の鍵を開けて夢中で部屋に飛び込んで行く。どうやら合鍵を持つ程の仲らしいと理解した潤は、廣人の後を追う様に部屋へ侵入し、廣人と共にバスルームへと駆け込んだ。


蛇口から細く流れる水滴。湯船には今にも溢れてしまいそうな程の、真っ赤に染まった水が溜まっている。質素な部屋着のままで、湯船にもたれ掛かる様に目を閉じた吉塩牛有紗の顔は紙の様に白くなり、水に浸ったその手首からは鮮血が流れ出ていた。


「廣人君!♭救急車だ!♭早く!♭」素早く有紗を抱き起こし、タオルハンガーに掛かったタオルをその手首にきつく巻き付けた潤は、有紗の首筋に指先を当て、未だ鼓動を打っていた事に、大きな安堵の溜め息をついたのだった。


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何と!ヨシギュウに妹が居ました!びっくりしかもかつて冤罪で自殺した冤罪被害者遺族の彼氏がおります!ポーン彼女の自殺を未遂に出来たのは櫻井教授と菊池君のお手柄でございますね~👏🏻👏🏻👏🏻👏🏻


察しのいい方はもうお気づきだと思いますが、彼女の存在がきっとヨシギュウ完黙の理由なんでしょうねキョロキョロ?


今回のお話では現在も大きな社会問題となっているSNSの誹謗中傷にスポットを当ててみました☝️真顔


被害者遺族は勿論、時には加害者家族も社会的制裁を受けて苦しんでいる場合があるんですよね。実に考えさせられる問題でございます🤔


どんな展開にしようかと色んなパターンを模索していたのですが、犯罪の被害者と加害者が過去と現在で上手くリンクする今回の展開が一番しっくり来ましたのでこうなりましたウインク潤君の過去ともリンク出来ますしね💜


次回はいよいよヨシギュウ完落ち?ラスボス黒塚に迫りますグッ!