これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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【冤罪】

#3

スリは現行犯逮捕が原則である。なのでベテランになればなるほど、警察が訪ねても、ビビったりコソコソしたりせず、やけに堂々と応対して思わず捜査官を苦笑させる。逮捕されないと分かっているからだ。

この “特急トメさん” と2つ名を持つ才原登米子(さいばらとめこ)はまさにそんなベテラン中のベテランスリであった。「おやま?久しぶりだねぇ~コロちゃん♪ノッポのマサぼんも一緒かい?♪相変わらず犬っころみたいな顔して、何か用かい?」

港区郊外の寂れたアパート。才原登米子はここの大家として、表向きは家賃収入で生活している。仕事と言っても他人様の懐を狙う犯罪者なので、決して褒められたものではないが、腕は一流で、スリの世界では殆どレジェンド扱いされている婆さんだ。

にのあいコンビの顔を見て開口1番悪態をつくトメさんに、二宮は「婆ちゃんさぁ~♭死んだペットの名前で呼ぶのやめてくんない?♭」と、嫌そうに言った。生活安全課の刑事に取ってスリは割と身近な犯罪である。特にこのトメさんは活動範囲が広いので、にのあいコンビ管轄の渋谷管内でもトメさんによる物だと思われる窃盗事件は時々報告されていた。

「何言ってんだい、ウチのコロはそりゃあ賢い可愛い犬っころだったんだからこれは愛情だよ。あんたの顔がコロそっくりなんだからしょうがないだろ?♪」

トメさんはニヤッと笑って湯呑みのお茶を啜ると、「それにしても気の利かないデカコンビだねぇ~。人を訪ねるのに手土産のひとつも持って来やしない。デカじゃなくてバカだバカ。昔のデカは挨拶代わりの菓子折りくらい持って来たもんだよ全く」などと更に悪態をついてにのあいコンビをからかった。

今年で80にはなるだろう婆さんだが、口は減らないし、頭も良く働き、未だ未だ赫灼としている。仕事中に乳母車を押していかにも年寄りと言う風を装うのがトメさんのスタイルなのだ。まさかこんな腰の曲がった婆さんが凄腕のスリだなどとは誰も思わないから油断するのである。

「分かった分かった♭婆ちゃんが俺達の欲しいネタを素直に話してくれたら文明堂のカステラ持って来てやるからさ~♭ちょっとその可愛いお口を閉じて俺達の話を聞いてくんない?♭」普段は毒舌の二宮もトメさんには敵わない。そんな二宮の様子が新鮮に映るのか、傍らの相葉がさも愉快そうにアヒャヒャ♪と笑った。

「しょうがないねぇ~。ほら、そんな玄関口に突っ立っていられちゃ迷惑だよ。茶くらい淹れてやるからあがりな」カールした白銀のショートヘアに小粋な和装。背筋もピンとして普段のトメさんは口を開かなければ、まるでお花かお茶の先生みたいに上品な雰囲気がある。

そんなトメさんが何でスリを生業にしているのか謎ではあるが、聞いた所で教えちゃくれないであろう。こじんまりと質素な座敷に上がったにのあいコンビは、部屋が綺麗に片付けられているのを見て少し懐かしい気持ちになった。

「見ての通りの貧乏所帯だけど、お茶だけはいい茶葉を使ってるから有難く頂戴するんだね。それで?あたしに何を聞かせようってのかね?つまらない話だったら追ん出すよ」丁寧な所作でお茶を淹れながら口だけは悪いトメさんが段々と面白くなって来る。

どうやら嫌がられてはなさそうだと判断したにのあいコンビは、3年前にトメさんが行った鶴岡荘司のスカーフの一件と西麻布署の吉塩牛について尋ねた。「さぁてねぇ~。3年も前の事なんか覚えちゃいないよ。こちとら昨日の晩飯だって忘れちまうんだから」

始めはそんな事を言って話をはぐらかしていたトメさんだったが、そのスカーフが殺人の凶器に使用され、第1審で有罪が確定した犯人の男が、もしかしたら冤罪かも知れないと聞かされて、大きく態度を変化させる。

「まさかあのスカーフが…?♭それは本当なのかい?♭」どうやら覚えていたらしい。にのあいコンビは頷き合い、弁護士の智に連絡をすると、スマホを使ったテレビ電話でトメさんと面会させた。

〖才原さんこんにちは。僕が控訴審を担当する弁護士の大野です。いきなりで申し訳ございません。控訴審は第1審の判決を覆すだけのしっかりとした証明が出来ないと、最高裁から中々許可されない難しい裁判です。

どうかこの青二才に力を貸して下さらないでしょうか?勿論あなたにお話し頂く事がどれほどあなたに取ってご迷惑になるのかは承知しております。ですがあなたの証言で無実の男性を冤罪から救い出す事が出来るのです〗

スマートに着こなした紺のサマースーツの襟に金の弁護士バッジを輝かせ、真摯な様子でスマホ画面からトメさんに話し掛ける智を見て、トメさんは「こんな可愛らしい弁護士さんが…」と小さく呟き、ホッコリと微笑んだ。

「しょうがないねぇ。あたしみたいな裏道ババァに取っちゃあんたらは言うなれば天敵だ。だけど一寸の虫にも五分の魂って言ってね。何より許せないのはそんな一寸の虫を無慈悲に踏みつけにして平気で悪さをする権力者共さ。

少なくともここに居るコロちゃんやノッポのマサぼん。そしてスマホの向こうの坊ちゃん弁護士先生は一寸の虫にも手を差し伸べる綺麗な心を持っている。その真心に応えられないようじゃあたしゃ五分の魂すら無くしちまうよ」

さばさばとした口調で言い切ったトメさんは、湯呑みに残ったお茶をすっかり飲み干してから大きく息を吐き出した。「コロちゃん。文明堂のカステラは戻ってからだね。暫く檻に入る事にするよ」と、実に明るく笑ったのである。

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トメさんが3年前のスリを告白すると言う事は、自分が盗みを働きましたと刑事であるにのあいコンビに自白する事だ。窃盗の時効は7年。詰まり3年前のスリの事をトメさんが話せば、それは逮捕の対象となるのである。

だからこそトメさんの証言には信ぴょう性があるのだ。これは長い裏稼業の中で1度も逮捕されていなかったスリのレジェンド “特急トメさん” の初の黒星であり、伝説の終わりを示していた。

「3年前のあれはねぇ。あたしも初めっからちょいと胡散臭いとは思っていたんだ。それでもやったのは報酬がべらぼうに高かったからさ。しかもその話を持ち掛けて来たのが西麻布署のお偉いさんでね。逮捕される心配も無い簡単な仕事だと上手いこと唆(そそのか)されたのさ。

9月19日の午後2時までにこの男の持ち物をスってくれってね。何だって良かったんだよ。財布でもカバンでも携帯電話でも何でもね。男の写真を見せられてさ。警察が目をつけているくらいだからどんな悪党面かと思えば、洒落た感じの男前でね。やけに妙な気がしたもんさ。

仕事は驚く程簡単だった。通りすがりに男のカバンからはみ出していた高級そうなスカーフをスルッとね。後はそのスカーフをお使いのデカに渡して礼金が150万だ。

あの時はちょうど物要りでね、金に困ってたから有難かったけど、まさか人殺しの濡れ衣を着せる為の悪巧みだなんてね。それが本当なら西麻布署は腐ってるよ。でもね、さっきコロちゃんが言った刑事は小物だよ。

その、吉何とかってのは若ハゲの貧相なデカだろう?あれはあたしにスカーフと交換に150万を渡したただのお使いさ。あたしに連絡を取って来たのはあいつじゃない。西麻布署の署長だよ。黒塚磐男だ。

あたしもこの稼業は長くやってるけど、昔はあの黒塚も未だまともなデカでね、「姐さんあんまり無茶すんなよ」なんていっちょ前にあたしに説教なんかしたりして、結構世話になってたんだよ。

それがいつの間にか偉くなっちまって、札束で人の頬っぺた叩く様な真似するんだから、あの男もすっかり変わっちまった。まぁ、昔のよしみでそんな話に乗ったあたしもヤキが回ったって事だろうからそろそろ潮時なんだろうね」

すっかり話し終えたトメさんは、ここに来て突如登場した黒塚磐男の名前に、思わず顔を見合わせるにのあいコンビに、サッと両手を差し出した。「さぁ、コロちゃん。ノッポのマサぼん。ワッパ掛けとくれ。坊ちゃん弁護士先生。裁判でも何でもさっきとおんなじ事証言してやるからきっと冤罪を晴らしとくれよ」

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にのあいコンビは才原登米子を自首扱いにして、渋谷西署に連れて行った。同じ頃、鶴岡荘司の『ピクト・ビューティー』に向かった智は、そこで第1審では取り上げられなかった別の証拠を見つけたのである。

「小瀧君。これはいいね。直ぐにドイツのヘッケル社に連絡して鶴岡さんの購買記録を取り寄せてくれ」「了解です!♪若先生!♪」両手の親指を立てて喜ぶ小瀧に強く頷いた智は、鶴岡の無実を信じて帰りを待つ、アルバイト店員の女の子に視線を向けた。彼女が店を開けてくれたのだ。

八名朋美(やなともみ)と言う名のその女の子は、化粧っけの無いふくふくとした頬っぺをピンク色に染めて「先生。鶴岡店長、無事に帰って来られますか?」と聞いた。

「勿論。必ず帰って来るよ。君にもこのハサミについて証言して貰いたいんだけどいいかい?」「ハイ!♪店長の為なら!♪」「ありがとう。助かるよ」この時、私立探偵の潤から智のスマホに音声ファイルのクラブを突き止めたと言う連絡が入ったのである。

〖見つけたぜ智♪渋谷の『フラッシュビート』だ。田淵義哉を良く知ってるって連中からも話を聞いといた。いよいよ大詰めだぜ♪〗「見つかったか?さすがだな♪」〖ったり前ぇだろ?♪俺様を誰だと思ってんだ♪親切、丁寧、迅速がモットーのお前のイケてる相方だぜ♡〗

これで第1審の判決をひっくり返せるだけの充分な証拠は揃った。後は小諸若希が残した音声ファイルや映像を完全コピーするだけだ。智は確実な手応えを感じながら、頼れる恋人の明るい声を何処か心地よく聞いていた。

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智が作成した控訴趣意書は見事に最高裁に認められた。前の弁護人が作成した控訴趣意書は第1審を覆すだけの理由が弱く、中々認められなかったのだ。控訴審が許可されるまで3年もの年月が掛かったのはそのせいである。

だが今回は状況が違う。智の揃えた、判決を不服とするあらゆる事由は、裁判官の心を動かすのに充分過ぎる程の効力を発揮した。そして判決が決定するまでの約4ヶ月間。智の初めての控訴審が幕を開けたのである。

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さぁ、駆け足で書き飛ばしました第3話でございましたが、やっと弁護士智君の大一番、控訴審が始まりましたよ~グッウインク

次回は怒涛の法廷シーンに突入でございます👨‍⚖️👩‍⚖️予定では次回で終わらせなくてはならないのですが、法廷シーンが長くなるようでしたら、もう1話書き足したいと考えております(いつものMARKIEあるあるですアセアセ

それにつけてもスリの特急トメさんは中々にカッコイイお婆ちゃんでございましたね~🧓キラキラ口が達者でちょっと小憎らしいけれど、昔気質の一本気は、スリとは言え、何処か潔さを感じて頂けたかと思いますニコニコ

CONFUSIONの彫辰爺ちゃんと言い、ここの所我が『深蒼鮮紫』では老人力たっぷりの元気なお年寄りキャラクター達が大活躍でございます☆

さぁ大ちゃんお誕生日までもう少し、エンジン全開でラストスパート頑張りまっす💪😤