これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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【冤罪】

#2

鶴岡荘司の冤罪を晴らすべく調査を始めた弁護士の智は、実余子殺害の凶器となった鶴岡愛用のスカーフが、どういう経緯で真犯人の手に渡ったのか、その痕跡を辿る事にした。

だが、田淵実余子の殺害は今から3年も前に起こった事件である。智はパラリーガルの小瀧と共に、鶴岡がスカーフを紛失したと記憶するカフェとファミリーレストランに聞き込みに行ってみたが、中々これと言った成果はあげられなかった。

「あきませんねぇ~♭若先生。やっぱり時間が経ち過ぎとるんですわ♭防犯カメラも常にアップデートされてますし、3年も前の映像を保存しとる店舗なんかほぼありませんって♭」

拘置所の鶴岡に面会に行ってからずっと西麻布界隈を歩き回っていてさすがに疲れたのか、小瀧は「一休みしませんか若先生♭俺腹減りましたわ~♭」と通りすがりの洋食屋を指さした。「そうだね、小瀧君。少し休憩しようか」

表の通りに面した席に腰掛け、ボリュームたっぷりの定食をパクつく小瀧を穏やかに眺めた智は、自分の注文したサンドイッチとコーヒーをゆっくりと食べながら、人の行き交う通りに視線を向け、「先程『ホワイト・アリス』の社長夫人に連絡をしてみたよ」と言った。

「『ホワイト・アリス』って鶴岡さんがスカーフを無くす前に接客したアパレル企業の社長夫人ですか?3年も前の事奥さん覚えてはりました?」小瀧の問いに小さく頷き、智は社長夫人から聞いた話しを説明する。

「うん、覚えていたよ。鶴岡さんの事はだいぶショックだったらしい。あの日は『ホワイト・アリス』の5周年記念イベントがあったらしくてね。鶴岡さんに髪をやってもらったそうだ。

鶴岡さんがエルメスのスカーフを着けていた事も間違いないってさ。さすがはファッションブランドの社長夫人だね。鶴岡さんのエルメスは国内でもあまり手に入らないかなりレアな柄の物だったみたいで、何処で買ったのかと聞いた事もあったそうだ。

鶴岡さんのヘアサロンを出た夫人はジュエリーショップでイヤリングを購入している。その時ジュエリーショップのショーウィンドウ越しに通りを歩く鶴岡さんを目撃しているんだ。

スカーフは着けてなくて彼のバッグから少し端っこがはみ出していたらしい。落としやしないかと心配したそうだよ。僕が弁護をすると聞いて、とても喜んでいた。鶴岡さんが人殺しなんかする訳ないって言っていたよ。

実はね小瀧君。『ホワイト・アリス』は父さんが企業法務絡みで弁護した事があるアパレル会社なんだよ。鶴岡さんのヘアサロンは現在閉店休業状態だけど、もし戻って来るなら援助してもいいってさ。

因みに夫人がイヤリングを購入したのはあの店だ。『VENUS JEWELRY(ビーナスジュエリー)』店内だけじゃなく、ショーウィンドウが割られたりしない様に、通りに向けて監視カメラが仕掛けられている。あの店の監視カメラ映像は開店時期から全部保管されているそうだ」

智が指さした先の、この洋食屋から見える通りを挟んだ真向かいに、いかにも高級そうなジュエリーショップがあり、入り口のガラスドアには金文字で “VENUS JEWELRY” と筆記体の英文字で描かれている。

それを確認した小瀧は目を丸くして「さすがですねぇ~♪若先生♪」と、人懐っこそうな笑顔を見せた。「鶴岡さんを犯人に仕立てあげた吉塩牛刑事が、まともな裏取り捜査をしたとは、とても思えないからね。ちゃんと調べれば絶対に何か出る筈だ」

初めは司法試験に中々合格せず、悶々と燻っていた気弱な若者だったのだ。そんな智が今では警察内に巣食う巨悪に立ち向かうべく、静かな闘志を燃やしている。そこに智の弁護士としての成長が垣間見える様であった。

だが、智自身もこの『VENUS JEWELRY』が鶴岡の無実を証明する、思いがけないヒントを齎すきっかけになろうとは未だ想像もしていなかったのである。

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「『ホワイト・アリス』の神白夫人ですか?ええ、良く覚えております。確かティファニーの秋の新作イヤリングでした。未だ日本では発売されていないイヤリングでしたので『ホワイト・アリス』創立5周年記念のイベントに間に合わせる為に私がフランスまで仕入れに行ったんですよ。」

見るからに紳士的な『VENUS JEWELRY』の店長は、夫人が来店した3年前の監視カメラ映像を探しながら、当時の事を詳しく智に話してくれた。

「実はあの日ちょっとしたハプニングがありましてね。それで良く覚えているんですよ。いえ、大した事では無いのですが、翌日の9月20日が私の結婚記念日でしてね。神白夫人と『ホワイト・アリス』の5周年記念イベントのお話をするまでその事をすっかり忘れていたんです。

すると夫人がエルメスのスカーフの話をして下さいまして…。何でもいつも行くヘアサロンの店長さんが素敵なエルメスのスカーフを着けているんだけど、珍しい柄で、東京でも販売している店舗が少ないんだと…。

それで早速店の合間を縫ってエルメスのスカーフを四丁目の百貨店に買いに行ったんですが…ああ、ありました。これが3年前の9月19日の監視カメラ映像です」

ここは『VENUS JEWELRY』の支配人室である。重厚な高級インテリアが揃った店長専用の特別室で、VIP客が高額な宝石を購入する際等に面談し、取り引きをする部屋であり、監視カメラ映像もこの部屋のパソコンと接続して、全てこの店長が管理しているのだ。

几帳面な店長は監視カメラ映像を全部日付分けしてUSBメモリに保存していた。「見せて頂いてもよろしいでしょうか?」「ええ勿論」店長はデスクのパソコンにUSBメモリをセットすると、『ホワイト・アリス』の社長夫人が来店した前後の監視カメラ映像を画面に映し出す。

「この人が『ホワイト・アリス』の社長夫人です。そしてこれがショーウィンドウに設置している監視カメラ映像になります」店長は2画面構成にした映像を智に示し、親切に説明してくれる。

そこにはおや?と言う顔つきをしてショーウィンドウの方を見た神白夫人とほぼ同時刻に、通りを歩く鶴岡荘司の姿がはっきりと映り込んでいた。

録画された時間を見る限り、鶴岡荘司はランチから帰る所だったのか、腕時計を確認しながらやや早足で通りを歩いている。肩から掛けたショルダーバッグのジッパーの隙間から何やら白っぽい布の切れ端が覗いていた。

「ああ、これだね小瀧君。社長夫人が言っていたエルメスのスカーフだ。確かに端っこがはみ出しているね」画面を指差し聞く智に小瀧がすかさず「ここ、拡大出来ませんか?」と店長に尋ねる。「あ、ハイ。少し映像が荒くなりますが…」

店長はキーボードを操作して画面をショーウィンドウの監視カメラのみに絞り、鶴岡荘司の映像を拡大した。確かにやや鮮明さは無くなったが、それでも充分にバッグからはみ出すスカーフの様子が確認出来る。白地にゴールドの柄が入ったその布端は確かにエルメスっぽい雰囲気があった。

「この曲がり角の向こうが死角になりますので、もうひとつ監視カメラを設置しているんですよ。それがこの映像です」店長の操作で映像が切り替わり、今度は鶴岡荘司の正面を捉えた画角になる。

鶴岡荘司は右肩にショルダーバッグを掛けており、そこを乳母車を押した老婆らしき人物が通り過ぎて行った。老婆はすれ違いざま、チラリと鶴岡を確認する様子を見せたが、鶴岡の方は全く気付いた様子もなく、スタスタと歩き去って行く。だが…。

「ちょっと待って下さい。店長さん。先程のところ、戻して頂けますか?」智の声に店長はすぐに映像を巻き戻し、再び乳母車の老婆の辺りから映像が再開される。するとどうだろう。老婆とすれ違った後、歩き去る鶴岡荘司の背中が映された映像には、あのはみ出していた布端が映されていなかったのだ。

「スカーフが無いよ小瀧君。これってまさかあの乳母車のお婆さんが…?」「えぇ~♭この婆ちゃん一体誰ですのん?♭」まるで昔の推理小説にでも登場しそうな、腰が曲がったお婆さんである。

地味な上着とズボンに、グレーのカーディガンを羽織り、頭にはベージュのストールで頬かむりをして顔の造作は殆ど分からない。だが前後の映像と合わせても、鶴岡のスカーフがこの乳母車を押すお婆さんによってスリ取られた事はほぼ間違いない様に見えた。

「おや?このお婆ちゃん…。高丸百貨店にも居たなぁ…」店長の呟きに智がハッとして視線を向ける。「どう言う事ですか?」「いえね、先程も申しましたが、神白夫人からスカーフの話を聞いて結婚記念日の贈り物を四丁目の高丸百貨店に買いに行ったんですよ。

あの時婦人服売り場でこのお婆ちゃんを見かけたんです。私が妻に贈るエルメスのスカーフを売り場の女性店員さんと相談していましたら、財布を盗まれたと騒いでいるご婦人がいらっしゃいまして、私も思わず自分の胸ポケットを触ってみたんですよ。

幸い私の財布は胸ポケットにありましたが、あの騒ぎの時、ちょうどあのお婆ちゃんが洒落たニットのワンピースを手に取って見ていましてね。お孫さんにでもプレゼントするのかなと思ったんです」

これは聞き捨てならなかった。鶴岡荘司のスカーフと言い、高丸百貨店の盗難騒ぎと言い、あの乳母車の老婆に何らかの関係があるに違いない。「小瀧君…。どうやらこれは生活安全課の出番らしいね…」

智は『VENUS JEWELRY』の店長にこの監視カメラ映像のUSBメモリを証拠として借り受けると、その足で閉店休業中の鶴岡のヘアサロン『ピクト・ビューティ』へと向かった。その時渋谷西署の二宮から智のスマホに連絡が入ったのだ。

〖大野先生。例のヨシとヨシギュウの映像が何処で撮られたか分かったよ。今から合流しない?〗「ちょうど良かった。合流する前に君達にのあいコンビに調べて貰いたい人物がいるんだ。スリの常習犯でね。乳母車の…」

智が全部話し終わる前に二宮が〖あぁ、そりゃ多分 “特急トメさん” だわ。あの婆ちゃん何かやったの?〗と、食い気味に聞いた。『特急トメさん』この2つ名を持つスリの常習犯こそが鶴岡荘司の冤罪を晴らす最重要人物となり、後に事件を大きく覆す役割を果たす存在となるのである。

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さぁ、いよいよ巨悪を暴く色んな証拠が出始めましたよ~グッド!😎✨次回は証拠固めと、控訴審請求でございますニコニコこのお話では法廷シーンを導入しようと考えておりますので、控訴審について付け焼刃的にググッたりしておるのですが、何せわたくし裁判に関する知識はど素人の極みでございますので滝汗アセアセ

お話のあちらこちらに “じゃない感” が出て来るとは思いますが、そこは生温い目で見逃して下さいましたら幸いでございます😅ゞ