これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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【戦慄】

#3

殺された小諸若希が友人の菊池に、文字通り命懸けで残していた真犯人、 “ヨシ” に纏わる証拠。音声ファイルが2つと画像5枚。智は先に画像ファイルを開いてその内容を確認した。

ファイル名、『CLUB 1』『CLUB 2』『CLUB 3』にあったのは昔で言うディスコの様な、所謂若者らが踊りに行くクラブの写真である。恐らく “ヨシ” と会う時に小諸若希が足を運んでいた場所なのであろう。

派手な内装、ガラス越しに映るDJ、踊る若者達。調べればこのクラブが何処にあるのかすぐに判明するであろうと思われた。そして3枚のクラブの写真にはいずれも同じ人物が写されている。

友人らしき男女と話す眼鏡の若者。どこにでも居る普通の学生みたいな雰囲気の青年だ。中丸が描いた似顔絵とも良く似ていた。まさかこんな大人しそうな風貌の若者が、あの残虐な殺人を犯した犯人だとはとても思えない程、 “ヨシ” は完璧なまでに普通だった。

「ん?これは…」次にファイル名『尾行1』『尾行2』の画像を見た智が思わず呟く。日付けは小諸若希が殺害された日の2日前である。とすると恐らく小諸若希は “ヨシ” を尾行してこの場面を目撃し、それが彼を警察に自首する決意をさせた決定打になったのだろうと考えられた。

何処かビルの屋上らしき場所である。物陰から隠し撮りしたと思われるこの2枚の写真には “ヨシ” ともう1人、智の見知っている人物が写っていたのだ。渋谷西署の取り調べ室で、中丸を釈放させようとした智に拳を振り上げた刑事である。

「吉塩牛刑事…。成る程、だから中丸さんを犯人にしようとしたのか…。誤認逮捕じゃない、初めから中丸さんありきで仕組まれた罠だったんだ……」「えぇっ♭♭犯人と刑事が繋がっとるんですか若先生♭♭それ、ヤバい案件ですよ♭♭」

パラリーガルの小瀧が関西訛り全開で慌て、徐(おもむろ)にドアの向こうを確認する。誰かに会話を聞かれやしないかとビビっているのだ。だが智はそんな小瀧のビビりなどお構い無しに、続けて音声ファイルの確認を始めた。

ファイル名『CLUB 音』。騒がしい音楽と人々の喧騒で聞き取りにくいが、この音声データには “ヨシ” だと思われる人物が小諸若希を説得する声が録音されている。

〖大丈夫だって小諸ちゃん。あんなに溜め込んでいたってあの世に金は持ってけないんだから。俺達みたいに将来のある若者が使ってあげた方が婆さんも喜ぶよ。そうだろう?君のお母さんの手術代や入院費用も婆さんのタンス預金があったから賄えた訳だしさ。

老い先短い婆さんと、小諸ちゃんのお母さんと、どっちの命の方が大事なんだって話でしょ?どう考えたって小諸ちゃんのお母さんじゃない?またいい儲け口があったら教えてあげるから、気を大きく持って構えてればいいさ〗

強盗殺人を犯しておきながら何という自分勝手な言い草だろうか。この時にはもう小諸若希は “ヨシ” の事を恐れていたのだろう。こうして “ヨシ” のデータを集め、自分の保険にしていた。それなのに…。智は少し悔しげに音声ファイルを閉じると、最後のファイルをクリックする。

次のファイルは音声ではなく映像だった。『尾行 』と言うファイル名から、先程の画像はこの映像ファイルからスクショした物だろう。恐らく小諸若希はそれぞれ別のファイルにして、映像と音声と画像で念入りに証拠を残そうとしたに違いない。ここに彼の正義感が垣間見える気がした。

この映像には遠目だが “ヨシ” と吉塩牛刑事が、画像と同じビルの屋上の様な場所で、真剣に会話をしている様子が撮影されている。先程のクラブの音声と違い、音は明瞭で、かなり決定的な証拠になり得る映像であろうと思われた。

 〖ホント使えないですねあなた。それでも捜査一課の刑事ですか?あんなにおあつらえ向きの犯人候補が居たと言うのに、どうしてもっと上手く活用出来なかったんです?〗

〖普通ならあれだけ物証が揃っていれば逮捕、起訴の流れになる筈だったんだ。それなのに渋谷西署の連中が難癖つけて来るから...。大体元はと言えばお前がマスターの懐深壮亮を殺したりしたから話がややこしくなったんだ。

もう少し待っていれば私が懐深からビニール傘の持ち主を割り出してやったのに何を焦ったんだか...。挙句の果てに傘を間違えて持って帰るなんて...。
 
お前がアポ電強盗で加賀屋のぶ江を殺害した時にあの傘の持ち主に目撃された。だからその目撃者を見つける為に、同じデザインだった加賀屋のぶ江の傘を持ち帰った。そこまでなら未だ分かる。

だから私はあのビニール傘が『タイムカプセル』の懐深壮亮が店の周年記念で常連客にプレゼントしたブツだったとお前に教えてやったんだ。待てと言った筈だ、誰に配られた物か調べてやるからと...。だのに何故待てなかった?〗少しの間が開き、答えた “ヨシ” の言葉は驚くべき物であった。

〖あの人がカラオケスナックのマスターだったからですよ。俺はカラオケスナックってのが嫌いなんです。あんたも良く知るあの女ですよ。男にだらしなく、臭い香水振りかけて大声でカラオケを熱唱していたあの女。

男を連れ込む時は息子に1000円札叩きつけて部屋を追い出すんですよ。挙句に男に捨てられて、その男殺して、勝手に逃げたんですから。息子の存在なんてあの女に取っちゃゴミ以下だったんでしょう。

まぁ、唯一あの女が俺の役に立ったのは俺の父親を特定してくれた事くらいですよ。鑑定書を大事にしまってましたからね。どうせ金に困った時は俺をダシにしてあの人から幾らか搾り取ろうとしていたんでしょう。あの女はそう言う女です。

10年ぶりに俺の前に姿を見せたあの女が何て言ったかご存知ですか? “あんたにこの鑑定書あげるから100万都合してくれ” って言ったんですよ。“外国に逃げるから” ってね…。あなたが預金下ろして用意したあの100万がそれですよ。あれで済ませておけば良かったのに…〗

クツクツと含み笑う “ヨシ” に、吉塩牛刑事が〖やめろ!♭〗と叫ぶ。〖私はただ刑事としての職務を全うしようとしただけだ!♭実余子さんが嵌められたんだと泣きついて来たから私は真犯人を探して実余子さんの無実を証明してあげようと…!♭〗

“ヨシ” の笑い声が響く。〖あなた、あの女に騙されたんですよ。あいつを殺したのはあの女です。俺が見つけた時は未だあいつ生きてたんですから。あいつに留めを刺すあの女を俺は見ているんですよ。

あの女、預金通帳から何から根こそぎ持って逃げて行ったんですから。未だ10歳だった俺を放置してね。振り返りもしなかったですよ。冷たい雨の日でねぇ…。飲んだくれの暴力男でしたから死んで良かったですけど。

なのにあなたと来たら、施設に預けられた俺にえらく威勢のいい事言いましたよね? “君のお母さんは犯人じゃない、必ず真犯人を見つけてやるから” って…。随分熱意のある新人刑事でしたけど、こっちはおかしくってたまらなかったですよ。

まさかあなたもあの女とデキていたとはねぇ。あの人といいあなたといい、どっちもいい面の皮だ。挙句に何の関係もない人を犯人にして逮捕した。確か無期懲役でしたっけ?その人刑務所で自殺したんでしょう?気の毒な人ですよねぇ~〗

吉塩牛の背中が遠目でも分かる程にワナワナと震えている。誤認逮捕の挙句その容疑者が刑務所で自殺した…。警察組織としてはこれ程不都合な真実は無いだろう。10年振りに息子の前に現れた母親…。

吉塩牛が預金を下ろして用意した100万円は殺人の果てに逃亡した “ヨシ” の母親に渡す口止め料だった。母親がその時 “ヨシ” に渡した鑑定書は一体誰との親子関係を示す物だったのだろう。ここでは “あの人” としか語られてはいないが、かなりの大物ではないかと思われた。だが、その後で語られた事実が更に智を驚愕させる。

〖どうして会ったりしたんです?未だあの女に未練があったんですか?それともあの人に頼まれたんですか?あの女を殺してくれと…。まぁ何でもいいですけどね。あの女は死んで新たな容疑者がでっち上げられたってだけですから…。今度は懲役何年でしたっけ?また自殺されなきゃいいですけどね…〗

“ヨシ” の様子はまるで現職の刑事を追い詰めるのが楽しくてたまらないかの様に見えた。〖あの人もあなたみたいな無能な刑事を庇うのは疲れるんじゃないですかね?2回成功したからと言って馬鹿の一つ覚えみたいにまたぞろ下手な小細工をして…。

だって俺だったら全員殺しますからね。その方が早いじゃないですか?折角カラオケスナックのマスター殺して傘の持ち主突き止めたんですから、全員殺せばあの時の目撃者の口も塞ぐ事が出来るんですよ。

何処かのサイコパスが無差別に連続殺人事件をやらかしていると世間に思わせた方が本来の動機を誤魔化せるじゃありませんか?だってアポ電強盗の目撃者1人を始末する為に無関係の9人を殺す人間が何処に居ます?〗

〖まさか…♭アポ電強盗で加賀屋のぶ江を殺してから味をしめたんじゃ無いだろうな…♭お前の話を聞いていると単に殺しを楽しんでいるみたいに聞こえるぞ…♭♭〗〖さぁ?それはどうでしょう?別にいいじゃないですか。誰だってその内死ぬんですから、早いか遅いかの違いでしょう?〗
 
呆然とする吉塩牛に、 “ヨシ” が ~♪ボートが川に浮かんでる~♪オレンジの木に、マーマレードの空~♪君を呼んだらゆっくり答える~♪万華鏡の少女~♪と、愉しげに歌い始める。映像はここで終わっていた。

「何やこいつ…♭」そう呟いたきり絶句するパラリーガルの小瀧に智も頷き、思わず言葉を失ってしまう。小諸若希が最後に友人の菊池に掛けた電話…。 “ヨシ” を『ヤバい奴』と評したのはきっとこの会話を見たからであろう。

このまま “ヨシ” と関係を続けているといつか引き返せない所にまで行ってしまう。それを恐れたが故の自首と言う選択だったのだ。もし小諸若希の説得に “ヨシ” が応じてくれたなら、これらの証拠は削除するつもりだったのかも知れない。

だが小諸若希が想像していた以上に “ヨシ” は化け物だった。そして、そんな化け物に追従して真実を捻じ曲げ、保身の為に無実の人を犯罪者に仕立て上げる警察組織もまた許し難い化け物だ。CD-ROMをパソコンから抜いた智は、それを元通り『世界遺産』のDVDケースに収めると、愛用のバッグに仕舞ってからネットカフェを出た。

そこに駆け付けて来たのは吉塩牛を筆頭とする西麻布署の刑事達である。恐らく小諸若希の線からこのネットカフェを探り当てたのだろう。吉塩牛は智を見ると、苦虫を噛み潰した様な表情をして、居丈高に言い放った。

「これはこれは弁護士の先生。やけにお忙しそうですな。中丸の釈放であんたの役目は終わったんじゃないかね?」「中丸さんの件はね。所が今朝になって別の依頼がありましてね。今日はそちらの一件ですよ。急いでいますので失礼します」

慇懃無礼に会釈をして立ち去ろうとする智の腕を、吉塩牛が強く掴んで引き止める。先程の映像に映っていた刑事の顔を見て、分かり易く狼狽した小瀧に勘が働いたらしい。ネットカフェを出た先のエレベーター前である。智によって一度煮え湯を飲まされた吉塩牛の顔は、まるで親の仇でも見る様に、怒りに赤く染まっていた。

「お前ここで何か見つけたんじゃないのか?もし現在捜査中の事件の証拠を故意に隠す様な真似をしたら公務執行妨害になるぞ」一体どの口が言うのか。智は険しく眉根を寄せ、冷淡に返答する。

「公務執行妨害?証拠が欲しいならまともな手続きを踏んで下さい。私の役目はあくまでも依頼人の利益を守る事です。何を見つけたとしても依頼人の許可無くしてあなた方にそれを提示する訳には行きません。ご存知でしょうが弁護士にも守秘義務はありますから」「何だと若造!」スーツの襟を掴み、拳を振り上げる吉塩牛に智の明瞭な声が響き渡った。

「あなたがその仕草をしたのはこれで2度目だ!いいですか吉塩牛刑事!刑法第208条暴行罪!他者の衣服の襟を掴んで脅してもこの罪状が成立するんですよ?!もしあなたがその拳を私に振り下ろせば刑法第204条の傷害罪だ!それでも私と戦うおつもりならあなたも覚悟する事です!」

オロオロする小瀧をよそに智は真っ向勝負である。小諸若希が命を賭して告発した大切な証拠だ。断じて渡す訳には行かなかった。吉塩牛と共に来た同僚の刑事が「ヨシさん♭これ以上はヤバいです♭」と吉塩牛を必死で止めようとする。

だが吉塩牛は一歩も引こうとせず、それどころか引き止める同僚を押し退け、力づくで智のバッグを奪い取ろうと手を伸ばすのだ。その時エレベーターのドアが開き、同時に誰かが飛び出して来たのだった。

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最後の1話で終われなかった~ガーン小諸若希君の証拠のくだりが長くなりすぎて全部入り切りませんでした~滝汗それにしてもヨシギュウ…タラーどんだけ飼い犬体質の悪徳刑事なんだ…驚き

殺人犯 “ヨシ” のママも大概だけど、そんなママにたぶらかされた刑事2人も大概じゃのう~アセアセ未だ書いておきたい事がありますので、今回は中後編として(無理やり過ぎる汗うさぎ)続きは【戦慄】#4としてまとめたいと思います😅急げや急げ~🏃‍♀️💨💨